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脂肪はどこに溜まって増えるとどうなるの?

私たちは、脂肪、たんぱく質、炭水化物などさまざまな栄養素を食事から摂っています。それらは体内で分解され、基礎代謝や運動をする際のエネルギーとして消費されます。しかし摂取量が消費量を上回ると、消費しきれなかったエネルギーは脂肪として体内に蓄積されていきます。これが脂肪太りの原因。年齢によって基礎代謝量は下がっていくので、食事量があまり変わらないまま運動をせずにいると、おなかがぽっこりと出てきてしまいます。
体内にある主な脂肪は下図の4つ。血液中にある中性脂肪と、よく耳にする内臓脂肪と皮下脂肪。異所性脂肪はその字のごとく、一定以上の脂肪が溜まったときに本来つかない部分につく脂肪のことを指します。

中性脂肪
血液中に存在する脂肪で、溜まると皮下脂肪になることが多い。

異所性脂肪
本来脂肪が溜まるべきではない場所に溜まった脂肪。皮下脂肪や内臓脂肪に収まりきらなかった脂肪が、肝臓、筋肉、気管の周囲などに運ばれ、蓄積される。

皮下脂肪
皮膚のすぐ下の皮下組織に溜まる脂肪で、飢餓に備えてエネルギーや栄養を蓄える役割がある。おなかやお尻などは指でつまむことができ、女性に蓄積しやすい。

内臓脂肪
胃や腸など内臓のまわりに溜まる脂肪。ウイルスなどの異物が体内に入るのを防ぐ役割がある。溜まりすぎるとメタボリックシンドロームの原因に。

■ どうして太るの? 今さら聞けない脂肪のギモン

エネルギーだけじゃない脂肪の重要な働き

脂肪=敵(太る要因)と思いがちですが、私たちが生きていくうえで脂肪は大切な働きをしています。まず、体の表面にある脂肪は外からのクッションになり、体温を維持してくれます。また、脳内の脳細胞ひとつひとつの細胞膜は、すべて脂肪でできています。摂取量を極端に抑えると細胞膜を作れなくなり、脳がうまく機能せず、物忘れが多くなってしまうこともあります。適量を知り、できるだけ溜め込まない方法を探っていきましょう。

「脂肪が燃える」とは?

体内に蓄積している脂肪は、運動などによってエネルギー源に変わります。運動をすると脳がエネルギー減少を察知して脂肪分解の指令を出し、体内の脂肪細胞が脂肪酸とグリセリンに分解され、筋肉に運ばれて運動エネルギーとして消費します。これが「脂肪が燃える」しくみです。

脂肪が溜まる原因は?

主な原因は食べすぎ、基礎代謝の低下、腸内環境の乱れ、運動不足によるものです。エネルギーが余ると、消化してしまうのはもったいないという指令が働き、脂肪組織に蓄積されて溜まっていきます。

夫婦で同じものを食べてなぜ自分だけ太るの?

残ったおかず、もったいないからと食べていませんか? 作った料理を夫婦で半分こと思っていても、実は自分の方が食べていることも。その場合は作る量を見直しましょう。2人分ではなく1.5人分作って自分は0.5人分にし、残ったらその分も食べるというスタンスもおすすめです。

ダイエットを繰り返すとやせにくくなるの?

食事を極端に減らすと確かに体重は減りますが、筋肉量が減り、基礎代謝も低下。基礎代謝が落ちた状態で食事をすると、前は太らなかった摂取エネルギー量でも消費されず太りやすくなります。これを繰り返すと、やせにくくなり不健康に。筋肉をつけながら食事を調整するのがきれいやせの秘訣です。

肥満を防ぐのが生活習慣病ケアの起点

肥満はさまざまな病気の誘因材料になります。太って体が大きくなると、腰やひざなど整形外科的な疾患を発症しやすくなり、それがひどくなると気管などにも脂肪がついて睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。
メタボリックシンドロームの指標である内臓脂肪は、過剰に溜まるとレプチンやTNF-αなど多くのホルモンを出し、高血糖、高血圧、脂質異常など内科的な合併症を引き起こす要因に。ボウリングのピン(病気)をなぎ倒すようにリスクは高まります。


賢い脂肪対策でこの夏はすっきり

目標を決めてやる気スイッチをON

夏に向け、いざダイエットをしようと思っても、おいしい誘惑に負け「明日から頑張ろう」と先延ばしにしてしまうことはありませんか? やり遂げたいのなら、始める前に目標をきちんと決めること。「○年前にはいていたジーンズをもう一度はきたい」「病気になりたくない」など、自分がどうありたいかを頭に描き、具体的に文字にするとさらに良いです。できればその目標を誰かに伝えて、少しでも目標に近づいたら褒めてもらいましょう。褒められるとやる気が起こり、継続の力になります。

いつも食べているごはんがこんなに!?
\身近な料理の脂肪量を知っておこう/

こってりしたイメージの焼肉やミックスフライは、やはり脂質が高め。丼ものやカレーなど、ごはんものも高い傾向にあります。意識していないとすぐに摂取推奨量の約40g(50〜64歳女性の場合)を超えてしまうので、注意しましょう。


飽和脂肪酸に気をつけて

脂肪酸は大きく分けると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つがあります。飽和脂肪酸は乳製品や肉、肉加工品などの動物性脂肪に多く含まれ、体に溜まりやすく、摂りすぎると血液中のコレステロール値が上がるので、控えめを心がけましょう。



 対策1 

たんぱく質脂質をバランス良く摂る

筋肉を維持して体脂肪を減らす
まず、体脂肪率が測れる体重計を準備します。目的は脂肪を落とすことですから、体重が減っても体脂肪が減らなければ成功とはいえません。毎日測定し、順調に落ちていれば励みになります。減った体重の6割分の脂肪が落ちるのが理想です。
第一の対策は、食事を見直すこと。ダイエットの失敗で多いのが脂肪ではなく筋肉が減る現象で、筋肉が減ると基礎代謝量も減るため、やせにくい体になります。そうならないよう筋肉を維持するたんぱく質はしっかり摂り、そのうえで脂肪量を抑えていきます。見落としがちなのが外食時のごはん。丼ものなどより定食ものの方が脂質量は抑えられ、急ぎ食べによる食べすぎも防げます。
※体重60㎏体脂肪率33%(20㎏)の人が10㎏減量し、体重50㎏体脂肪率28%(14㎏)になる、など。

一日当たりのたんぱく質と脂質の摂取推奨量
(身体活動レベルⅡ(ふつう)の場合)



スパゲッティカルボナーラの場合、1食で脂質28.1g(1日の摂取推奨量の約70%)、たんぱく質20.0g(1日の摂取推奨量の約28%)に相当します。

 対策2 

小分け運動で燃焼

できる時間にできる運動をして合算
脂肪燃焼には20分以上の有酸素運動が必要? そんなことはありません。5分でも10分でもできるときにやって、一日の合算で20分以上あればしっかりと効果が得られます。
運動といっても息が切れるほど張り切る必要はなく、体が温まる程度で十分です。おすすめは15〜30分のウォーキング。1日5千歩程度を目安にし、習慣化することで適正体重に落ち着きます。足が悪いときはいすに座って運動しても良いでしょう。テレビを観ながら動かせば5分はあっという間です。すき間時間に動くクセをつけてください。

いすに深く座り、クロールのように手を左右交互に5分間動かす。平泳ぎやバタフライでも。   腕を振り、ももを上げて5分以上足踏みする。血糖値を下げるなら食後すぐが効果的。
     

 対策3 

腸内環境を良好に

善玉菌を増やして脂肪がつきにくい体質へ
腸内細菌には、体に良い働きをする善玉菌、割合が増えると体に悪い働きをする悪玉菌、そのどちらか優勢な方へ導かれる日和見菌があります。これらはバランスが重要(善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7)で、日和見菌が善玉菌について腸内で発酵活動を行ってくれるよう、良いバランスを維持することが大切です。積極的に善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌)や、善玉菌の餌になる根菜類や海藻類の食物繊維などを摂り入れましょう。ただ善玉菌は、腸内に留まり続けるものではないため、習慣的に摂ることを心がけてください。

編集部が注目!
善玉菌を増やす短鎖脂肪酸

ビフィズス菌などの腸内細菌によって作られる酸の一種で、腸内を適度な酸性にし、酸性に弱い悪玉菌の繁殖を抑え、善玉菌の働きを高めてくれます。また、脂肪の燃焼を助けたり、脂肪をつきにくくしたりするなど、短鎖脂肪酸の働きに注目が集まっています。


■ 今の努力が健康寿命を伸ばす

脂質は人に欠かせない栄養素ですが、適量を過ぎると肥満まっしぐら。その先にはひざ痛や腰痛、生活習慣病が立ちはだかり、良いことはありません。人生100年時代。できるだけ長く健康で自分らしく暮らしていくために、過剰な脂肪とはサヨナラしましょう。同じお金を使うなら、病気になって治療に使うより、スタイルを維持して食やファッションを楽しみたいものです。


監修吉田 俊秀 先生 医学博士。医療法人令寿会 しまばら病院院長、兼、肥満・糖尿病センター長。京都府立医科大学客員教授。

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