ヘルスケア特集 ヘルスケア


目覚めが悪い、イライラ、食欲不振etc. 夏の体調不良はなぜ起こる?

夏になると朝から調子が出ないことがありますよね。その原因は
①「室外の暑さ」
②「寒暖差(外気温と室温/冷房が効いた部屋の頭と足もと)による体温調節の負担」
③「紫外線からの防御対応」
これらによって自律神経が疲弊しやすくなるためです。それが毎日続くことで疲れが蓄積してしまうと、不調につながってしまいます。

<POINT>
「暑さ」「寒暖差」「紫外線」が
自律神経に負担を掛け、不調につながります


そもそも「自律神経」とは?

自律神経は生命維持に欠かせない司令塔です

自律神経とは、生命維持に必要な活動を調整するために、無意識に24時間休まずに働き続けている神経です。
全身をアクティブにする「交感神経」とリラックスさせる「副交感神経」をスイッチさせ、各器官の働きを繊細に調整しています。
例えば自律神経が働かなかったら、人間は立ち上がっただけで失神してしまいます。急に脳の位置が高くなり、血流が届かなくなるためです。自律神経が瞬時に交感神経を働かせて血圧を高め、脳への血流を維持するから立ち上がれるのです。そして用が済めば副交感神経にスイッチさせて血圧を戻してくれます。
また、日中は交感神経を優位に働かせて心身のパフォーマンスを高め、夕方以降は副交感神経にスイッチさせて、睡眠に向かって心身をリラックスさせる概日(がいじつ)リズム(サーカディアンリズム)に沿って働いています。


自律神経が酷使されると体の不調につながる

運動をするとき、実は筋肉以上に酷使するのが自律神経です。運動で高まる心拍と呼吸、体温を調節しているのは自律神経だからです。最新の研究によれば運動の疲れとは、運動による筋肉疲労ではなく、自律神経の酷使によるものとわかっており、脳の自律神経中枢の酷使を眼窩前頭野がキャッチすることで疲労感が生じます
夏の炎天下の外出は筋肉に負担がなくても疲れを感じますよね。それも自律神経の酷使によるものであり「もう負担を掛けないでほしい」という自律神経からのシグナルなのです。


<POINT>
夏の不調の正体は「自律神経の酷使」
負担を掛けない過ごし方がポイント!


自律神経の酷使を抑える方法とは?

自律神経を弱らせる「酸化」と「老化」

ところで、自律神経のダメージとは、どういう状態を指すのでしょうか? その答えは「自律神経中枢の細胞の酸化」です。細胞は活動によって大量の酸素を消費する際に活性酸素を生み出します。この活性酸素が細胞を酸化させ、細胞組織の機能が一時的に低下する現象が疲労なのです。
自律神経もまた、ストレスやハードな運動などで交感神経が優位のとき、フル稼働して活性酸素を発生させ、細胞を酸化させます。日頃から酷使されて乱れがちな自律神経に、さらに夏は暑さによるストレスが加わることで酸化はいっそう進み、不調やバテやすさの原因となります
さらに恐ろしいのは細胞の「老化」です。酸化は休息(睡眠)中によって回復できますが、過度に酸化して回復が追いつかなければ、細胞は回復不能なほど錆びつきます。これが細胞の「老化」です。

加齢による機能低下を生活習慣の改善で抑える

生物である以上、休みなく働く自律神経は加齢とともにパワーが落ちていきます。下のグラフのように、40代の自律神経機能は10〜20代の半分となり、働きが低下します。自律神経をV字回復することはできませんが、老化を遅らせることは可能です。
そのためには生活習慣を整え、無理をせず、休息をとり、自律神経を労ることです。また、疲労は睡眠でしか回復できませんから、睡眠の質を高める意識づけが欠かせません


食事でサポート!
毎日の鶏むね肉とコーヒーで自律神経の酸化を抑えられる!

食事から「抗酸化物質」を摂取することで、活性酸素を無力化し、自律神経の酸化を抑えることができます。おすすめは鶏むね肉に多く含まれるイミダゾールジペプチド。自律神経中枢に届き、長時間にわたって抗酸化作用を発揮します。一日100g程度の鶏むね肉を食べるといいでしょう。
また、コーヒーやお茶に含まれる抗酸化物質は作用時間が短いものの摂取しやすいため、2〜3時間おきに摂取すれば抗酸化作用を持続できます。いずれも脳に届く成分であることが大切です。


休息の質が自律神経の元気を保つ!

自律神経の大敵「睡眠負債」とは?

自律神経のダメージは休息(睡眠)中にしか回復しません。それにもかかわらず、30〜50代を中心に睡眠不足の蓄積「睡眠負債」に陥る方が増加傾向にあります。睡眠負債のある状態では自律神経の回復はあまりできず、正常な機能を妨げるばかりか、老化による機能低下を進めてしまいます。
睡眠が浅く短く、自律神経がダメージを残したまま朝を迎えれば熟睡感はなく、朝の目覚めも良くならず、交感神経が高まらないため日中のパフォーマンスは低下します。連動して夕方以降の副交感神経の働きも下がるため、睡眠に向けた心身の準備が整わず、再び睡眠の質が低下する負のスパイラルに陥るのです。
多忙な方ほど「横になると瞬時に寝られるから大丈夫!」とおっしゃるのですが、それは自律神経が疲弊していて覚醒を続けられないだけで、むしろ眠りは浅い傾向にあります。


睡眠の質を高める鉄則は一日のリズムを守ること

睡眠中の自律神経のリカバリーには、下のグラフのように深い眠りが3〜4回ある質の良い睡眠が理想です。そのためには、最低6時間の睡眠時間を確保し、就寝までの生活を整える必要があります。
人間には一日の睡眠と覚醒、ホルモン分泌、自律神経のリズムが備わっており、極力これを乱さないことが自律神経を整え、睡眠の質を高めるポイントです。


また、日中はストレスを長引かせず、リフレッシュを心がけましょう。ストレスを感じると「コルチゾール」という抗ストレスホルモンが分泌されますが、これは一日の覚醒と睡眠のリズムを形成する物質でもあります。ストレス状態が続けばコルチゾールが過剰に分泌され、睡眠のリズムが乱れる原因となります。
特に眠る2時間前はストレスや興奮の原因となる電子機器は手離しましょう。次の「今日からできる! 自律神経に良い過ごし方」を参考に就寝までの行動をルーティン化し、心を波立たせないことが肝心です。

<POINT>
睡眠の質が良いと日中の

パフォーマンスもアップ!


今日からできる! 自律神経に良い過ごし方

一日の生活スケジュールの中で自律神経を疲弊させず、体の調子を維持するためのポイントを紹介します。ぜひ、できるところから実践してみてください!

監修梶本 修身 先生 東京疲労・睡眠クリニック院長。元大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。『すべての疲労は脳が原因』(集英社刊)ほか多数の著書やメディアで疲労研究の成果を発信する。

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