ヘルスケア特集 ヘルスケア

■ 2段構えで外敵をブロック!

体内に異物が入ると...
 自然免疫チーム が最初に攻撃

「自然免疫」とは生まれつき身体に備わっている免疫。外敵などの侵入者に先制攻撃し、情報を獲得免疫チームに伝えます。

1. 異物を食べる
見張り役として異物をいち早く認識し、食べて分解するのが「マクロファージ」と「好中球」。マクロファージは異物侵入を仲間に知らせる役割も。


2. 異物の情報を伝える

皮膚や粘膜など全身に存在する「樹状(じゅじょう)細胞」は、長距離を移動できるメッセンジャー。異物を食べて情報を読み取ったり、ほかの細胞へ知らせに行く。


3. 感染した細胞を攻撃

異物に感染して異常を起こした細胞を破壊するのが、「NK(ナチュラルキラー)細胞」。不審なものは容赦なく殺し、異物の増殖に歯止めを掛ける


4. 獲得免疫チームに情報を伝える

異物を取り込んだマクロファージと樹状細胞が、敵の情報を自らの細胞表面に提示し、獲得免疫チームの司令官であるヘルパーT細胞に伝える

自然免疫チームで対処できなかった場合には...
 獲得免疫チーム が技あり応戦

「獲得免疫」とは、感染した外敵の情報を記憶・学習する免疫機能。一度覚えた敵は忘れず、専用の武器(=抗体)をつくり強力な攻撃をします。

5. 各細胞に指令を出す
情報を受け取った「ヘルパーT細胞」が、異物の性質に合わせた攻撃の計画を立てて、キラーT細胞とB細胞に指令を出す。

6. 2つの方法で攻撃
<分解酵素を出して攻撃>
ヘルパーT細胞の指令を受けて、「キラーT細胞」が急増し分解酵素を分泌して敵を破壊。異物に感染した細胞に狙いを定めて殺す


<つくり出した抗体で攻撃>
指令を受けた「B細胞」は、異物の抗原にのみ攻撃能力のある飛び道具のような専用の武器(=抗体)を大量につくり、異物を無力化させる。



■ 小腸と大腸の連係プレーで腸内環境も免疫もバランス良し!

全身の免疫細胞の約70%が腸に集中!

免疫細胞は血液中の白血球に存在しますが、その約70%が腸に集中。腸は人体最大の免疫組織として「腸管免疫系」と呼ばれています。中でも免疫の主戦場となるのが小腸です。食べ物の栄養を吸収する小腸は、菌や異物の脅威にさらされやすい場所。そのため小腸の粘膜には、大量の免疫細胞が待機する「パイエル板」という基地が点在。外敵と戦う重要な最前線なのです。


小腸での戦いを大腸が強力バックアップ

大腸には膨大な腸内細菌が潜み、腸内フローラと呼ばれていますが、腸管免疫と密接にかかわっています。腸内環境は、善玉菌、日和見(ひよりみ)菌、悪玉菌のバランスによってつくられますが、この腸内細菌がバラエティに富んでいるほど調子を保ちやすく、小腸をはじめとする全身の免疫細胞の働きを高めてくれるのです。つまり腸内環境のバランスを整えることが、免疫力の維持には不可欠といえます。


免疫力もバランスが肝!

加齢や生活習慣、食事、ストレスなどが原因で、私たちの免疫力は知らない間に不安定になっています。免疫力が高くなれば、外敵への攻撃力も上がり身体を守ってくれますが、過剰に反応しすぎると、アレルギー反応などにつながってしまう恐れも。免疫力は上げれば良いというわけではなく、健康時の状態を維持していくことが重要なのです。


腸内環境は加齢とともに変化!
良い状態を維持するために意識することが大切

50~60代になると加齢や食生活の影響により、腸内環境も偏りがちに。バラエティ豊かな腸内細菌を維持するためには、食事や生活習慣の見直しも大切です。



■ 腸内のお手入れ&リラックスで免疫バランス良好!

日々の腸活のポイントは多様性のある食生活

腸内環境の改善と免疫の活性化には、たんぱく質やビタミン、ミネラルを含むバランスの良い食事を摂ることが基本です。動物性の食材中心など偏った食生活が続くと、悪玉菌が優位に働き、免疫力低下の原因や、血圧、血中脂質へ影響することも。日々の食生活で、善玉菌を含む「プロバイオティクス食材」と、善玉菌を育てる「プレバイオティクス食材」を意識して食べることがおすすめです。

腸に有益な善玉菌を届けて、育てる

「プロバイオティクス食材」とは、ヨーグルトに含まれる乳酸菌や、発酵食品に多いビフィズス菌などが代表的。ただ、どんなに善玉菌を摂り入れても、そのエサとなる「プレバイオティクス食材」が足りないと意味がありません。食物繊維やオリゴ糖がこれに該当し、善玉菌を増殖・活性化させるのに有効です。これらは継続して摂ることが肝心なので、サプリメントなどを活用するのも一考です。


ストレスは免疫の大敵。香りや笑いでリラックス

イライラや不安が続くと、自律神経のバランスがくずれて免疫力が低下。逆にリラックスすると副交感神経が優位に働き、免疫細胞も元気に。アロマテラピーで癒されたり、ぬるめのお風呂でくつろげば、心身ともにリラックスできておすすめです。また、笑ったり楽しいことに熱中すると、NK細胞の活性が大幅に高まるという研究結果もあります。毎日の生活で上手にストレスを発散してください。


重要な働きを担う司令塔「樹状細胞」に注目!

免疫細胞の中で最も重要なのが、司令塔の「樹状細胞」。枝のような突起で異物をキャッチし食べて分解しながらその特徴をとらえ、ヘルパーT細胞などに指令を出します。樹状細胞が活発に働ける秘訣は、良質なたんぱく質やビタミンなどバランスのとれた食事を摂ること。樹状細胞が元気でいることで、免疫細胞全体を活発化することができるのです。



Q. ハードな筋トレが日課。運動は身体にも良いし、免疫力も上がりますよね?
A. ハードな運動では下がります。汗ばむ程度に身体を動かすのがおすすめ。

運動不足では体力も免疫力も落ちてしまいますが、かといって激しい運動は逆効果。つらいトレーニングや過労でストレスフルになり、NK細胞が働かなくなります。免疫力を高めるには、ウォーキングなどの有酸素運動を週3日目安でやるのがおすすめ。楽しく継続することが大切ですよ。

Q. 休みの日も頑張って早起き! 免疫力のために規則正しい生活を守っています。
A. 生活サイクルを一定にするのは良いことですが、それに囚われすぎて睡眠不足になると免疫力が下がるので注意して。

規則正しい生活よりも大切なのが睡眠時間。睡眠中には、代謝や免疫にかかわるホルモンが多く分泌されて免疫系が活発に働き、外敵と戦ったり傷を癒しているのです。休日前に夜更かしをしたら翌日は無理に早起きせず、睡眠時間を十分に確保した方が良いですよ。

Q. 季節の変わり目になると体調をくずしやすくなります。気をつけた方が良いことはありますか?
A. 異物の侵入を防ぐ基本は、ここ数年で習慣化した手洗いの継続。こまめな水分補給も心がけましょう。

ここ数年のマスクと手洗い習慣により、体調をくずす人が激減しています。異物の多くは、異物の付いた手指が口や目、鼻の粘膜に触れることで侵入するので、こまめな手洗いは必須。また、咽頭の粘膜が乾くとバリア機能に障害が起こり侵入しやすくなるので、水分補給で喉を湿らせておくことも大事です。

監修村上 孝 先生 埼玉医科大学医学部微生物学教授。著書に『マンガ 免疫力が高まる27の生活習慣 ウィズコロナ緊急対策』(法研)。

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