ヘルスケア特集 ヘルスケア

「変化ストレス」の多い春は要注意の季節

少しずつあたたかくなり、植物も華やいでいく3月。春への期待が高まる一方、気温の変化が激しかったり、卒業・入学や人事異動など、社会的な環境変化も多かったりと、自律神経のバランスが乱れがちな時季でもあります。自分には変化がなかったとしても、子どもが独立したり、上司や同僚が代わるなど、周囲の変化が気づかぬうちにストレスになっていることも。また、入学や入社などのポジティブな変化であっても、私たちにとってはストレスとなることがあります。

さらに最近では、多くの会社で採用されていたリモートワークが解除されるなど、通勤状況の変化が負担になるケースも増えているようです。

このような「変化ストレス」は、心と体に様々な形で影響を与えるのです。もし今、だるさやイライラなどを感じていたら、春の不調のサインかもしれません。この時季は特に心と体のメンテナンスを意識し、自分をいたわることが大切です。



春の不調はこれで乗り切る!
5つのメンテナンス術

自律神経の乱れによる不調は、心と体の両面からメンテナンスする必要があります。ただ注意したいのが、まずは体の疲れを取ることを最優先してほしいということです。疲労が蓄積した状態では、他のどんな工夫もあまり効果的ではないからです。

そのため、まずは睡眠と食事をしっかりとり、体が元気を取り戻した状態で、気持ちのメンテナンス術を実践してみると良いでしょう

ここでご紹介するメンテナンス術は、不調を改善するだけでなく予防する効果も期待できます。ぜひ実践して、春をすこやかに楽しみましょう。

<メンテ術1>
プラス1時間睡眠でしっかり脳の疲れを取る

脳をきちんとメンテナンスするには最低6時間の連続睡眠が必要とされています。疲れやすい時季は、いつもより1時間多く眠ることを意識すると良いでしょう。また、睡眠中は自律神経系がリラックスの状態である副交感神経メインに変わるため、胃腸の動きを整えたり、筋肉の疲労を回復する他、免疫機能を強化して体のエネルギーもチャージしてくれます。


<メンテ術2>
たんぱく質多めの食事で疲労回復

疲労回復のためにいちばん必要なものは、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラル類です。中でもたんぱく質に含まれるアミノ酸は、体を修復したりホルモンをつくり出したりなど、効率良く体をメンテナンスしてくれる重要な栄養素。いつもの食事に卵を1つ加えるなどの工夫をしてみましょう。

また、食事のときにおすすめなのが、漫然と食べるのではなく食べる行為に集中し、ゆっくり味わうこと。細かな食感や香りも感じながら食べると、心が雑事から離れて落ち着きやすくなります。


<メンテ術3>
軽い有酸素運動で神経を落ち着かせる

疲れがひどく、運動する気が起きないときは、無理せずぼーっとすることが必要です。ただ、デスクワークが中心の方は血流が滞りやすいので、脳への血のめぐりも悪くなりがち。それがイライラや集中力低下につながるため、思いきって散歩に出てみるのもおすすめです。歩行によって全身に酸素がたっぷりいきわたるので、頭も体もすっきりするでしょう。散歩の際は、考え事をするよりも歩行の感覚に集中し、心を開放しましょう。


<メンテ術4>
「3つのありがとう習慣」で幸せな気分で眠りに入る

脳の疲れを回復するためには、睡眠の質も重要です。良い眠りのためには、不安や心配のない幸福な状態をつくるのがポイント。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、睡眠とも深いかかわりがあるためです。そこでおすすめなのが、「3つのありがとう習慣」です。

まず布団に入ったら、感謝したいことを3つ思い浮かべます。今の自分の状況や、家族もしくは過去にお世話になった人など、改めて考えると感謝したいことがたくさん出てくるのではないでしょうか。

春は新たな出会いや別れなど、まわりの人間関係も変化し、他の人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし改めて振り返ると、たくさんの小さな幸せに気づくはずです。その幸福を実感しながら眠りにつくことで、ぐっすりと深い眠りを得られることでしょう。

質の良い眠りにつくためのポイント


□ SNSで他の人と自分を比較しない
スマートフォンでSNSを見る習慣がある人は、他の人の投稿でネガティブになることも。寝る前に脳を興奮させるようなインターネット、ゲーム、メールなどは避けましょう。


□ 寝る直前に食事や入浴をしない
食事は睡眠予定時刻の2時間前まで、入浴は1時間前までにすませるのがベター。どうしても入浴したい場合は、ぬるめのお湯にするか、シャワーにするなど、あたたまりすぎないように。


□ 興奮するドラマやニュースを見ない
ドキドキするような映像を見たり、小説を読んだりすると、交感神経が緊張して目が覚めてしまいます。ゆったり音楽を聴いたり、雑誌を眺めるくらいがおすすめです。


□ アルコールは控える
アルコールは睡眠の質を下げ、熟睡を妨げる原因になります。なるべく避けたいですが、どうしても飲みたいときは寝る2時間前までに。


「ありがとう日記」のススメ

寝る前に、感謝したいことを3つ日記に書く「ありがとう日記」をつけてみてはいかがでしょうか。思い浮かべるよりも習慣として定着しやすく、過去に書いたものを読み返すだけでも幸福な気持ちになれるでしょう。

「ありがとう日記」のフォーマットをご用意しました。ご活用ください。


<メンテ術5>
「イメージング習慣」でしなやかな心へ

「イメージング習慣」とは、心理療法などでも用いられているイメージの力を活用したメンテナンス術です。人は文字情報より画像情報の方が印象に残りやすいため、ストレスを感じたときにイメージングの手法を使うことで、ネガティブな気持ちに効果的に対処できるようになります。

例えば、春は受験や就職・転職などが多い時季なので、「こんなに努力しているのに、なぜ結果が出ないんだろう」と焦って不安になることもあるかもしれません。そんなときは、雪の下に埋もれる植物の芽をイメージしてみましょう。「冬が去り春がやってきて、雪が溶けつやつやした新芽が見え始めるまでには、もう少し時間が必要なんだ」と繰り返しイメージすると、心が楽になっていきます。

こんなイメージもおすすめ


□ 壁打ちボクサー


頑張っても一向に変わらない状況でも、壁土は落ち始めているかも。穴が空いたときの喜びを想像して打ち続けましょう。



□ 雨の後の虹


虹は雨の後にしか出ないように、今が良くない状態でも、虹が出るための下準備の期間なのです。



□ 伸びる前に沈むばね


ばねが大きく伸びるためには反動が必要。今は苦しくても、ばねのように伸びるために一時的に沈んでいるだけなのです。


奥田先生から頑張り屋さんなあなたへ
春は"期間限定の60点"でOK!

いつも仕事に家事に人付き合いに、頑張りすぎていませんか? どんな人でも、この時季はフルパワーが出せないのがあたりまえ。明るく乗り切るためには、「今だけ60点でOK!」と思うことです。

いつも100点を目指してしまう人にとっては抵抗感があるかもしれませんが、例えば食事を1品、買ったお惣菜にするなど、自分でコントロールできる範囲のことは手を抜いてみてください。心と体をいたわりながら、激動の春を一緒に乗り切りましょう。


監修奥田 弘美 先生 山口大学医学部卒。産業医・精神科医として老若男女の心身のストレスケアに携わる。自ら悩んだ経験を活かしメンタル面から改造するダイエット法も提言し、著作『何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから』(扶桑社)はベストセラーに。近著に『「会社がしんどい」をなくす本 いやなストレスに負けず心地よく働く処方箋』(日経BP)。

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧