ヘルスケア特集 ヘルスケア
監修高尾 美穂 先生 医学博士 産婦人科専門医

婦人科診察を通し、女性の健康を幅広くサポート。働く女性のための産業医として企業を支える傍ら、内閣府男女共同参画局、人事局などで教育講演を担当。また、婦人科スポーツドクターとして日本スポーツ協会ではスポーツドクターの養成に携わる一方、骨盤底筋トレーニングヨガ、アスリートヨガをはじめ、ヨガ指導者を育成するセッションも積極的に行っている。


■ 実は3つの種類がある、40代からの不調

40代に入って生理が乱れ始めると、「えっ? そろそろ更年期?」「これから、いろんな不調が続くの?」と、不安になってしまう女性が多いかもしれません。心と体の不調が一度に押し寄せて来るイメージを思い浮かべて、心配になる方もいるでしょう。

でも、それは「更年期」「更年期以降」「エイジング」の不調を混同しているだけ。まずは3つの違いを理解することから始めましょう

大丈夫! 正しく知ってきちんと対処すれば、「更年期」はコワくありません。

まとめて「更年期のせい」と思われている3つの不調

1:更年期の不調=女性ホルモン(特にエストロゲン)の乱高下(ゆらぎ)によるもの
2:更年期以降の不調=女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少によるもの
3:エイジングの不調=男女問わず加齢によるもの

1:女性ホルモン(特にエストロゲン)の乱高下(ゆらぎ)によるもの

「更年期」とは、閉経前後の10年間を指し、この期間は女性ホルモンの分泌量が大きくゆらぎます。その影響で、自律神経の働きが不安定になり、ほてりや、のぼせなどの体の不調以外に、イライラや不安などの心の不調を感じる人もいます。

とはいえ、日常生活に支障をきたすほど不調を感じる人は3割程度。そして不調のピークは閉経の前後3~4年。「更年期」を過ぎれば不調はなくなります。ただし、ここで大切なのは我慢しないこと。つらいときは、1人で抱え込まず、専門家に相談して上手に乗り切りましょう。

そして、特に不調を感じなくても、確実に女性ホルモンが減っていく更年期後に備えて、体調の変化に気をつけるようにしましょう。

女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量は、緩やかに減っていくわけではなく、閉経の前後に大きく乱高下。この急激なアップダウンによって自律神経が乱れ、さまざまな不調を引き起こすと考えられています。

2:女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少によるもの

出産という大役を担う女性の体は、閉経までは女性ホルモンの主役エストロゲンによって守られています。

ところが、「更年期」を境にその分泌量が大きく減少することで、女性特有の不調に加え、閉経前の生活習慣を続けることによる健康リスクも上昇。「更年期以降」は、これまで以上に健康診断のさまざまな数値に注意する必要があります。


3:男女問わず加齢によるもの

年齢的に「更年期」と重なるために混同されやすいのが、加齢による体の変化と不調です。例えば、内臓の機能低下による食欲の低下、疲労感などが挙げられますが、これは女性に限らず男性にも起こる自然な老化現象。「更年期」とは別に考えましょう。


特に気をつけたいのは、エストロゲンの減少によるコレステロール値の上昇

「更年期以降」の女性にとって注意したいのは、エストロゲンの減少によって起きる不調。その代表的なものがコレステロール値の上昇です。

コレステロールは、もともと生命維持に欠かせない脂質。そしてエストロゲンの材料でもあります。「更年期」を境にエストロゲンの分泌量が減少すると、材料であるコレステロールも使われなくなるため、コレステロールの数値が上昇しやすくなるのです。

HDLコレステロールは善玉、LDLコレステロールは悪玉。HDLコレステロールを除く、すべての悪玉コレステロール値をあらわすのがnon-HDLコレステロール値です。

グラフを見ると、女性のLDLコレステロール値とnon-HDLコレステロール値のどちらも40代から上がり始め、50代、60代になると同じ年代の男性に比べて、一気に高くなります。

コレステロール値の上昇を防ぐためには、これまでの生活習慣を見直す必要があります。



始めるならココから! 女性のコレステロール対策

コレステロール値を基準内に保つために、まず見直したいのは毎日の食事。さらに代謝を上げるための運動も欠かせません。健康診断で高めの数値が出てしまう前に、40代以降のライフスタイルのポイントとして、毎日の習慣にしましょう。

食事は、3つ減らし、2つ増やす

食事での対策の基本は、3つ減らし、2つ増やすこと。

●減らすもの:動物性の脂、トータルカロリー、アルコール
●増やすもの:体内でのコレステロール合成を抑える青魚の脂、腸からの排出を促す食物繊維

毎日摂るのが難しい青魚の脂は、缶詰などの活用もおすすめ。余分なコレステロールをつくらず、溜めない食生活を続けることが大切です。

毎日、続けやすい運動をする

コレステロール値改善のために、保健指導で推奨されているのは、1日30分以上、中程度以上の有酸素運動を毎日続けること。かなりハードルが高いので、続けるのは難しい方も多いかもしれません。

運動習慣のない人や運動が苦手な人は無理せず、まずはラジオ体操、ウォーキングなど、自分ができることから始めてみましょう。

目標は毎日続けること。1人では続かないと思う方は、同年代の友達や仲間と誘い合わせて始めるのも良い方法です。



<高尾先生から40代女性へのエール>
 変化の時期をラクに過ごして、 ご機嫌な女性でいよう!

「更年期」は、大きく乱高下する女性ホルモンの分泌量に心と体がゆれる激動期。女性ホルモンに守られていた体から、女性ホルモンの守りがない体へ。これまでの生活習慣を見直し、これからのライフスタイルを整えていく時期でもあります。

上手に過ごす秘訣は、無理や我慢をしないこと。特にメンタルの不調は、家族やまわりの人にも影響を与えてしまいます。自分が楽しいと思える時間を増やし、十分な睡眠で心身をリセットして、いつもご機嫌な状態を保つように心がけましょう。



<予告>
後編(11月16日公開予定)は、更年期の血圧についてご紹介します。

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