
オトナ目のために やると良いことやってはいけないこと
40代から50代は仕事や家事、子育てなど充実しているとき。忙しさに追われ、気づかぬうちに目を酷使していることはありませんか。そのような目について、眼科専門医の平松類先生に、正しい知識とケアについて伺いました。
■ 目に負担をかけること、やっていませんか?
タブレット、スマートフォンで配信ドラマを2時間以上見続ける
人は通常1分間に約20回瞬きをしますが、画面などを集中して見ていると約7回に減少します。目の表面が乾燥しやすく、涙の質も悪くなり目の輝きが落ちてしまいますので、1時間に1回は休憩しましょう。
眩しい太陽光の下、家族や友人とお花見
紫外線は人の目には見えない「不可視光線」で、ものを映すことに必要な光ではありません。エネルギーが強く、浴び続けると眼球の奥の網膜にダメージを与えるため、UVカットのサングラスをかけるなどの工夫を。
薄暗い店内で目を凝らしメニューを読む
暗いところでは対象物を近づけ目を凝らして読もうとするため、目の筋肉が過緊張を起こし、疲れを感じやすくなります。携帯電話のライトで照らすなど、まわりの迷惑にならない程度に明るくし、目から離して見るようにしましょう。
寝る前に暗い中でスマートフォンを見る
暗い中でスマートフォンを見ると目に近づけてしまいがち。実は「暗い中」よりも「距離の近さ」が問題なのです。至近距離で画面を見続けるとピント調節機能が落ちていきます。また、光を浴びすぎると睡眠の質が悪くなるので見るのはほどほどに。
■ 眼球は臓器のひとつ 加齢とともに機能は低下する
臓器というと胃や腸を想像しますが、視覚をつかさどる「眼球」もそのひとつです。ほかと違うのは光を取り込む必要があるため、むき出しであるということ。また加齢による老化は誰しも訪れますが、目は生活の不便さを感じやすく老眼鏡などの道具を必要とするため40歳頃から自覚していきます。
ものを見るときは、まず眼球表面の角膜が光による視覚情報を捉え、毛様体筋という筋肉が収縮・弛緩することで、レンズの役割を果たす「水晶体」の厚みを変えてピントを合わせます。オトナ目は水晶体や毛様体筋の弾力性が弱まってピント調節機能が低下し、悩みがあらわれるのです。
[ 眼球の構造 ]
現代人は目が休まるヒマがない!?
デジタル機器の増加が目を酷使する環境に
2010年以降、スマートフォンやタブレットなどの情報通信機器が飛躍的に広まり、ほとんどの年代が利用するようになりました。学業や仕事でも目を使うことのニーズは高まる一方。また、木造よりも鉄筋の住居は密閉性が高まるため乾燥しやすく、涙が減って目が乾きやすい環境に。これらが目の疲労感につながり、オトナ目の悩みになっていきます。
【 スマートフォンやタブレットの利用状況/2023年 】
出典:「令和5年度情報通信機器の利活用に関する世論調査」(内閣府)を基に作成
【 情報通信機器の世帯保有率の推移 】
出典:「通信利用動向調査」(総務省)を基に作成
■ 今知れば将来が変わる目のケアとオトナ目のギモン
<目のケア>
目の疲れを感じたら、やってみて!
一般的に40歳を過ぎると自覚しやすいオトナ目。年齢を重ねたら、日頃から目をケアする意識を持ちましょう。
1日1〜2回 目をあたためる
目を使うと目のまわりの筋肉がコリ固まって血行が悪くなるので、あたためて休ませることが大事。あたためたタオルなどを閉じた目にかぶせて1〜5分じっと過ごします。できれば朝・晩の2回がおすすめ。日中に疲れを感じたときは手のひらをこすってあたたかくし、目に20秒ほどかぶせると良いでしょう。
目に良い栄養を摂る
ほうれん草やゴーヤーなどの緑黄色野菜に含まれるルテインという色素は強い抗酸化作用があり、光の刺激から目を保護してくれます。甲殻類などに含まれるアスタキサンチン、野菜や果物に含まれるビタミンA、C、Eも目のために積極的に摂りたい成分。目が乾燥しやすい人には良質な魚の油に含まれるEPA、DHAを摂ることがおすすめです。
サングラスで目を守る
紫外線カットは目を守る第一歩。太陽光を浴びるときはUVカット加工してあるサングラスをかけましょう。加工法により効力が弱まる場合があるので、2年おきにUVカット率を調べられる機器がある店で効果が持続しているか確認するのがベター。ちなみにレンズの色は眩しさを抑えるだけでUVカット率とは関係ありません。
眼鏡を使う
手もとが見えにくくなったときに頑張って見続けても目の疲労感を助長するだけ。自覚がある人はすぐに目に合った眼鏡を入手しましょう。初回は眼科医院で検査し、眼鏡処方箋を発行してもらうと目に適したものを入手しやすいです。
デスクワークは1時間に1回、目を休める
パソコンを使用する場合、ノートタイプよりモニターが大きめのデスクトップタイプの方が目の負担が少ないです。モニターの位置は目線と水平、もしくは下方15度まで、ディスプレイの明るさは購入時の7〜8割程度に抑えて。また1時間に1回は目を離し、2m以上遠くを見るか目を閉じるなどして休ませましょう。
<平松先生教えて!>
オトナ目Q&A
オトナ目と上手に付き合っていくために、どんなことに気をつけるべきか平松先生に解説していただきました!
Q. スマートフォンのオトナ目への影響は?
A. スマートフォンを長時間見続けることで毛様体筋がコリ固まり、ピント調節がうまくいかなくなります。画面が発する光(ブルーライト)自体は有害ではありませんが、光を直接至近距離で浴び続けることで網膜などにダメージを与えます。できるだけ目から離すようにし、こまめに休息しましょう。
Q. アイメイクもオトナ目に影響あるの?
A. 直接的な影響はありませんが、きちんと落とさないと涙の質が悪くなり、目のうるおいがダウンします。まぶたのふちには、目が乾かないように脂を分泌するマイボーム腺という器官があり、メイクが残っていると脂が固まってしまうのです。刺激の少ないメイク落としで、目のキワまでしっかり落としましょう。
Q. オトナ目は乾きやすい?
A. 加齢とともに肌がカサついていくように、目の水分保持能が落ちていきます。涙が減ると乾きを感じ、疲れを感じやすくなりますので、目をあたためて血流を良くし、食事から栄養を摂りましょう。
Q. ものを見るときの距離の差はオトナ目に関係ある?
A. 近くで見るほど目の負担は大きくなります。一般的にスマートフォンは20cm、本は30cm、タブレットは30〜40cm、パソコンは50cm、テレビは1〜2mが適切な距離といわれています。同じ内容のものを見るなら距離がとれる方を選びましょう。
オトナ目は、実際には20代頃から進行しています。でも進行の速度は人によりさまざま。違いは日頃の生活習慣によるところが大きいです。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、血流を良好に保ち、健康を維持することがオトナ目の進行遅延にもつながります。