ヘルスケア特集 ヘルスケア

北海道東部、オホーツク海の南端に面した知床半島。新緑の中、気持ち良く歩ける全長約800mの高架木道。



■ 普段は大丈夫でも、こんなとき、ひざに違和感はありませんか・・・?

出かける前に見どころをチェック!

「ソファであぐらをかいてパソコンを見ていたら、全身がコリかたまってひざのあたりがつっちゃったみたい


資料館で歴史を読み解く

「じっと立って読んでいたら、動き出したときにひざがガクッと抜ける感じがした!」


原生林の中を気持ち良く登山

「楽しかったー! けれど、下りの坂道でひざが笑っちゃって。ちょっとしびれる感じもあったなぁ」





■ 実は40代から50代は「ひざの曲がり角」 早めのケアでずっと動ける体に

監修八木 貴史(やぎ たかし) 先生 佐々木病院横浜鶴見スポーツ&膝関節センター整形外科医長。医学博士。

昭和大学病院、関東労災病院などを経て、2013年より現職。ひざ関節・股関節を中心に年間200例以上の手術を行う。著書に『ひざの痛み 変形性ひざ関節症』(主婦の友社)がある。

日常生活を支えるひざ。ひざを早めからケアすると、運動し続けられる体でいられ、将来の健康維持につながるそう。詳しいお話を整形外科医の八木貴史先生に伺いました。

体重の何倍もの荷重が掛かる「ひざ」の役割

ひざの大切な役割は意外と知られていませんが、何かご存じでしょうか? 大きく分けて「支持性」「可動性」「無痛性」の3つです。ひざ関節は体の中で最も荷重が掛かる関節といわれていて、歩行時で体重の2〜3倍、走ると5〜7倍、階段の上り下りで3〜5倍の荷重が掛かっています。
ひざ関節は、骨や軟骨、靭帯(じんたい)などで構成されていて、軟骨は大腿骨(だいたいこつ)や脛骨(けいこつ)のはしを覆う「関節軟骨」と、骨と骨のすき間にある三角形の「半月板(はんげつばん)」があります。この2種類の軟骨が動作の際にクッションのような役割を果たし、衝撃を吸収するため、普段の生活ではひざに痛みを感じることがないのです。しかし、少しずつ負担が蓄積されていき、40代くらいから違和感が出ることも。そのため、40代から50代は「ひざの曲がり角」といわれています。

ひざの大切な役割

1 .支持性
全身の体重をしっかり支え、いろいろな姿勢を可能にする。

2 .可動性
ひざを曲げ伸ばしすることにより、さまざまな動作ができる。

3 .無痛性
飛んだり走ったりしても着地したときに痛みを感じない。

ひざの違和感は使いすぎによる横揺れ!?

登山や観光などでよく歩いた後に「ひざが笑っている」と感じたことはありませんか? それは筋肉疲労によるひざの横揺れ現象が起きているから。おおよそ30代までは一時的なものですが、酷使したタイヤがすり減るのと同様に、ひざも使いすぎや加齢により軟骨がすり減っていきます。すると栄養も届きづらくなってクッション性が失われていくため、違和感が痛みへと変化していきます。違和感を覚えたらケアを心がけ、違和感がない場合でもひざまわりの筋肉を強化することが大切です。


ひざの負担が大きいO脚とX脚

遺伝や生活様式などの要因により、日本人はO脚(太ももからふくらはぎまですき間がある)になりやすいといわれています。この状態が続くとひざ関節の内側に大きい負荷が掛かるため、内側の軟骨がすり減り、足の外側の筋肉が張っていきます。X脚(ひざを揃えても内側のくるぶしはつかない)は欧米人に多く、ひざ関節の外側に負荷が掛かって外側の軟骨がすり減り、ひざの内側が張ります。これらがひどくなるとひざ関節に負担が掛かり歩きづらくなっていくので、足の筋肉維持が大事なのです。


ひざの負担を少なく。日頃からケアして健康に

生活するうえでひざの負荷は避けられませんが、負担をできるだけ少なくする生活習慣と筋力維持により、ひざの健康を保つことはできます。まずはバランス良く体重を掛けた立ち姿勢や歩き方を意識し、座るときは深く腰掛けて足は組まないようにしましょう。生活していてひざに違和感を覚える人は適正体重より重いか、運動不足による筋力・柔軟性の低下が考えられるため、減量や運動を心がけて。ただし、継続的な違和感や痛みがある場合は医師に相談してください。
ひざの違和感は年齢とともに実感することが多いですが、90歳過ぎでも元気に歩いている方はいます。だからこそ、まだ違和感がない方も、今日から日常的にひざケアを続けてほしいです。




在宅ワークでひざが弱る?



近年は働き方が変わり、自宅で仕事をする方も増えてきました。出歩くことが少なくなると筋肉量が減り、立ち上がるときにひざがポキッと鳴ったり、足に力が入りにくくなったりします。家の中でも足下からあたためて血流を良くし、休憩をとって次に紹介する体操やストレッチを行いましょう。





八木先生からのメッセージ

ひざに違和感があると、ついひざだけをケアしがち。でも体はつながっていますから全身のことを考えた生活習慣やケアが大事です。バランスの良い食事、適度な睡眠や運動、ストレスを溜めない生活が、ひざの健康にもつながります。






■ 「ひざの曲がり角」世代におすすめ 今すぐ始めたい"ひざケア"

監修黒田 恵美子(くろだ えみこ) 先生 健康運動指導士、健康経営エキスパートアドバイザー。

人生の最後まで、自分の足で歩くことを目的とした「ケア・ウォーキング(R)」などを考案。簡単で痛みの起こらない体の使い方を提案している。八木貴史先生との共同監修『変形性ひざ関節症の痛みが消える4週間プログラム』(主婦の友社)ほか著書多数。

ひざの健康を保つには、ひざの負担を軽減することが大事。自分の体に合った靴やいすの選び方、ツボ押しによるひざケア、日常にとり入れたい体操やストレッチ、筋トレまで、健康運動指導士の黒田恵美子先生に伺いました。できるところから始めてみましょう。

<基本のひざケア4種>

足に合う靴を履く

ウォーキングには足が横揺れしないように安定性があり、衝撃を吸収する靴底で足を支えるインソールのある靴、登山や足下が悪い場所を歩くときは滑りにくく安定して歩ける靴底で、足首までカバーしてくれるものを。ヒールのある靴は、足に合うインソールを入れることでひざへの負担が軽減できます。


体形に合ういす

ひざがほぼ垂直に曲がり、足裏全体が床につく高さのもの、骨盤が立って仙骨(せんこつ)(腰の中央、尾骨(びこつ)の上の骨)が背もたれにつく奥行のものを選びましょう。高さが合わないときは足の下に台を置いても。


足ツボを押す

足にはひざの疲れを癒すツボがいっぱい。「内膝眼(ないしつがん」「外膝眼(がいしつがん)」はひざの違和感をやわらげ、「足三里(あしさんり)」「承山(しょうざん)」は足やふくらはぎの張りを緩和します。お風呂上がりに、いた気持ち良いくらいの力で押してみましょう。


ゆるゆる屈伸体操

足先を正面に向け、足と同じ方向にひざを曲げるようにするのがポイント。歯磨き中や家事の合間など、ちょっとした時間にやるだけでひざの筋肉がほぐれ、柔軟性がアップします。

<ひざ健康筋トレ2種>

スクワット

ひざを安定して動かせるよう、ももの筋肉を鍛えましょう。股関節をしっかり折り曲げてお尻を後ろに突き出すようにすることで、ひざの負担を減らします。


股関節まわし

左右の動きを安定させるために股関節をやわらかくし、強くする運動をしましょう。片足立ちになるので、同時に体幹や足も鍛えられます。





長距離・長時間歩く日に
出かける前後のストレッチ

足の前と後ろを伸ばしてひざの筋肉をほぐすと、動きやすくなり、疲労回復を早めます。


ももの前伸ばし
いすの背に右手をおき、左手で左の足先を持っておしりに近づけてももの前を伸ばす。右も同様に。



ふくらはぎ、もも裏伸ばし
背もたれから背を離して座り、左足を伸ばしてかかとを床につける。左手でつま先をつかんで手前に引き、もも裏からふくらはぎを伸ばす。右も同様に。




黒田先生からのメッセージ

違和感がないときに、ケアを始めるのは難しいもの。でも骨や筋肉が整っている足は見た目もきれいですから、美しさを保つためと思ってぜひ頑張ってください。ひざの負担を軽減すればいつまでも元気に動くことができ、全身の健康にもつながります。




イラスト:山田有紀

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