ヘルスケア特集 ヘルスケア


■ 血管力が重要なのはなぜ?

血管力とはズバリ、血管のやわらかさ!

「人間は血管から老いる」といわれるように、血管の若さ=血管力は健康的な生活を送るために非常に重要なポイントです。なぜなら、血管が硬くなることで、心筋梗塞や脳梗塞といった血管事故を引き起こすリスクが高まるからです。
では、硬くなった血管の中では、どんなことが起こっているのでしょうか? 血管は3層構造になっており、最も内側にある内膜には血管の壁をやわらかく保つ役割などがあります。そこへ血液中の脂肪や増えすぎたコレステロールが入り込み、プラークと呼ばれるこぶを形成。これが大きくなると、血管は次第に硬く、脆くなっていきます。さらに成長したプラークが破れると、そこに血栓ができ、血管を詰まらせる重大なリスクにつながるのです。
つまり、血管力とは血管の柔軟性のこと。これを知ることができるのが、健康診断の数値です。



全身の血管をつないだ長さ 10万km

全身の血管をすべてつなげると、約10万km、なんと地球を2周半する長さに相当。体中に酸素や栄養素を届け、二酸化炭素や老廃物を受け取る重要な役目を果たしています。


毎年起きている突然死の人数10万人

年間約10万人が亡くなっている突然死の約9割は、実は血管の事故によるもの。しかも血管の老化は自覚症状がないため、まさに「サイレントキラー」なのです。


心臓が1日に収縮している回数10万回

心臓は毎日約10万回も休むことなく拍動し、1日にお風呂30杯分ほどの血液を送り出しています。血管が硬くなるとその負担が増大し、血管事故のリスクが高まるのです。








■ 健康診断で注目したい数値はこれ!

血管はほかの臓器と違い、中の様子を目で見ることができません。そのため、異変があっても自分では気づけない場合が多く、健康診断の数値が唯一の手掛かりとなります。血管力を知るためには、以下の4つの数値に着目しましょう。
まず、血液検査からわかる中性脂肪LDLコレステロールは、増えすぎるとプラークを形成する原因になります。また、ヘモグロビンA1cは血液中の糖分の状態を示しており、高めになると血管が脆くなることも。
さらに血液検査と並んで重要なのが、血管の内圧を測る血圧測定です。上下2つの数値が出ますが、見るべきは上の数値。高めになると血管の内壁が傷つき、コレステロールが入り込みやすくなります。
数値の目安として、それぞれ基準値が設けられています。自分の数値と比較し、血管力を知るための参考にしましょう。



中性脂肪
 150mg/dL以上 ⚠ 


体のエネルギー源となる脂肪の一種で、脂質や糖質などの摂りすぎや、運動不足によって体内に蓄積される。血液に脂質を放出し、血管が硬くなる一因に。


LDLコレステロール
 140mg/dL以上 ⚠ 


血液中でコレステロールや中性脂肪などの脂質を運ぶ大切な役割を担うが、増えすぎると血管に蓄積し、内壁を傷つける原因となる。


ヘモグロビンA1c
 6.5%以上 ⚠ 


赤血球中の色素であるヘモグロビンが糖と結合している割合。直近の食事の影響を受ける血糖値に比べ、過去2ヵ月程度の血液中の糖分の状態がわかる。





上の血圧
 140mmHg以上 ⚠ 


血管内部に掛かる圧力のことで、高めの状態が続くと血管が硬く、厚く、狭くなるのを加速させる。家庭で測る場合は低く出やすいので、135mmHg以上を上の数値の基準値に。




4つの危険因子が1つでリスクは3倍、4つで81倍に!

下の4つの項目は血管事故の4大危険因子です。健康な人のリスクを1とした場合、1つでも当てはまると、そのリスクは3倍になると考えられています。逆に1つの因子を改善すれば、リスクも大きく改善されることに。健康診断で気になる数値が複数あった場合は、早めの対策がカギになります。





■ 健診結果をフル活用して血管力を高める習慣へ

血管事故の4大危険因子を減らす方法としては、やはり食事や運動がポイントになります。ただ、これまでの習慣をガラッと変えるのはストレスが大きく、継続もしにくいでしょう。そこで下の「血管力アップ習慣」では、実践しやすいちょっとしたコツをご紹介しています。
特に優先したいのは食習慣の改善です。人間の体には栄養を吸収する力、合成する力、そして利用する力があり、これらは個人差が大きいため、一概に「この食材をこれだけの量食べればOK」といえるものではないのですが、一方で血糖値を急激に上げない食べ方や、血圧抑制のための減塩、血管を老化から守る栄養素といった、確実に押さえるべきポイントもあります。それらを包括したのが「やさいの法則」なので、まずこれをとり入れることから始めてみると良いでしょう。


健康診断の数値は血管からのメッセージ

健康診断で気になる数値があった場合、最も大切なのは「そのままにしないこと」です。血管の内側には知覚神経がないため、変化が起きていても自覚することは難しく、そのため頼りになるのは健康診断で得た数値だけ。数値が高めに出た場合は、それを"血管の痛み"として受け取る感性を持ってほしいのです。「血管事故は知識で防げ」といわれるように、数値が伝えてくれるメッセージと改善方法を理解することが、血管事故を防ぐための第一歩となります。



血圧が低めの女性も
閉経期には注意が必要!?


女性の中には、若い頃から健康診断で低血圧を指摘されてきたという方も多いようですが、閉経期に入ると血圧が高めになるケースもあります。これはホルモンバランスの変化により、体内の塩分排出の力が弱まることが一因。そのため、女性も40代以降は減塩を心がけることが大切です。


\\実践! 血管力アップ習慣//


食事は「やさいの法則」

さいをきにっぱい食べるというシンプルなルール。野菜は血管を老化から守ったり、余分な塩分を排出したりする成分が豊富なうえ、先に食べると野菜の旨味を感じやすいため、塩分控えめでもおいしく食べられます。満腹感も得やすくなり、血糖値の急激な上昇も抑えます。



喉が渇く前に水分補給

水分が不足して脱水状態になると、血液が固まりやすくなります。喉に渇きを感じるときは水分が相当不足しているため、渇く前に水分を補給するのが理想的。寝る前にもコップ1杯の水を飲みましょう。



旨味・酸味・香りで「塩8分目」

血圧が高めの場合は一日の塩分量を6gまでに留めたいですが、難しい場合は「塩8分目」を目指しましょう。ポイントは塩やしょうゆの代わりに、だし・酢・レモン・ハーブを使うこと。少ない塩分でもおいしく食べられます。



禁煙スタート

喫煙習慣は血管事故の4大危険因子の1つ。まずは本数を減らし、少しずつ禁煙に近づけましょう。どうしても難しい場合は禁煙外来へ。



「困ったポーズ」で血管若返り体操

1. 脚を肩幅程度に開く。両手をウエスト横に置き、肩を開く。手のひらは前方へ向ける。

2. 両肩を上げ下げするとともに、かかとをつま先立ちするように10回上げ下げする(朝晩1セットずつ)。

ふくらはぎ周辺の筋肉を収縮させることで、下半身の血液が心臓に戻りやすくなり、全身の血液循環が活性化します。



笑いや涙で感情を解放

思いきり笑ったり泣いたりすると、副交感神経が優位になり、体の緊張が解けてリラックスします。これにより血管が拡張し、血圧も下がるため、血管事故の予防にも。



睡眠で免疫ケア

睡眠中に分泌される成長ホルモンは、傷ついた血管を修復し免疫力を高めます。入眠から3時間の間に分泌されるため、この時間は深くぐっすり眠ることが大切です。



年1回の健康診断

血管事故の予防のために最も大切な生活習慣は、定期的な健康診断を受けること。毎年受ければ経年変化もわかるため、リスクの早期発見につながります。忘れないよう誕生日などの記念日に受けるのがおすすめです。



*記事内で紹介している血管若返り体操は、高沢先生監修による動画でもチェックできます。

◆「血管若返り体操」


監修高沢 謙二(たかざわ けんじ) 先生 信濃坂クリニック院長、東京医科大学名誉教授。

専門分野は内科、高血圧、循環器、脈波。「血管年齢」の考案者で、著書に『血管若返り博士絶対おすすめ! [高沢式]自力で血管を強化する本』(主婦の友社)など多数。

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