
もしかして隠れ栄養不足? 食生活の「クセ」をチェック!
「食事はきちんと摂っているし、変わりなく生活を送れている」と思っていても気づかぬうちに栄養バランスが偏ってしまう「隠れ栄養不足」が増えています。元気に過ごすために、食生活を見直して体の中から健康を維持していきましょう。
日々の食事に気をつけていても「隠れ栄養不足」の状態に
昨日は何を食べましたか?
「ヘルシー志向だから、野菜中心の食事をしている」「前日に食べすぎたので、軽めにうどんですませた」など、自分なりに工夫や調整をしていることでしょう。毎日忙しくて、加工品や半調理品、デリバリーサービスを活用する人も多いと思います。
バラエティー豊かな食事を手軽に摂れる現代だからこそ、実はこっそり「隠れ栄養不足」状態になっていることがあります。
例えば、野菜中心の食事は一見良さそうですが、肉や魚などが必要量摂れていないと、たんぱく質や脂質、ミネラル類は不足しがちに。手軽さを優先して朝は菓子パン、昼はうどんといった食生活をしていると、糖質は過多となる一方、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルが不足気味になってしまいます。家族の食事を作っている人の好みによって、家族全員同じ栄養素が不足しているケースも少なくありません。
このように現代人は、手軽に食べ物が手に入るがゆえに栄養バランスが乱れて「隠れ栄養不足」が増えているのです。
不足している栄養素は食生活や年代により変わる
隠れ栄養不足を引き起こす原因や不足しがちな栄養素は、食生活だけでなく年代によっても変わってきます。代謝が少しずつ落ちてくる40代は、体重をキープしようと糖質制限ダイエットなどに励みがち。すると炭水化物が極端に減ってしまい、エネルギー不足の状態に。
また、フルーツはビタミンが摂れるからと積極的に食べていると糖質量が増え、かえって栄養バランスが悪くなることも。
健康意識が高くなる60代以降は、ウォーキングなどの運動をしている方も多いですが、「毎日続けているのに筋肉がなかなかつかない」という方もいます。その原因は、筋肉のもととなるたんぱく質が不足しているから、というケースが少なくありません。必要な栄養素がしっかり摂れてこそ、今の筋肉量を維持したり、運動によって増やしたりすることができるのです。
日頃の食生活で栄養が偏りがちなのは、自分では気づきにくいもの。まずは、下記のチェックリストで該当する項目を数えてみましょう。
チェックリスト
□ 朝ごはんは、菓子パン程度や食べない日が多い |
□ 食欲がないときは、麺類などですませることが多い |
□ 肉や魚を食べない日がある |
□ 野菜があまり摂れていない |
□ 果物はほとんど食べない |
□ 定食よりも丼ものになりがち |
□ 偏食気味である |
□ 食が細く、少食だ |
□ ダイエット中で食べる量や種類を減らしている |
3項目以上該当する方は・・・隠れ栄養不⾜かも?
栄養素が互いに作用して私たちの体をつくり、動かす
食事により体に入った食べ物は、体内で消化器官を通り、各栄養素に分解・吸収されながらそれぞれの役割を果たしていきます。
体を動かすためのエネルギー源となるのは、炭水化物、たんぱく質、脂質で「三大栄養素」といわれます。それらがしっかり働くように助けるのがビタミンとミネラルで、この2つを合わせて「五大栄養素」と呼びます。
三大栄養素が体内でエネルギーに変わる、いわゆる代謝が行われる際は、ビタミンB群が必要になります。つまり、ビタミンB群も一緒に摂ることで、代謝が良くなるのです。脂質やたんぱく質は体の構成成分にもなり、その際も各種ビタミン、ミネラルが働き、体内で合成されます。例えばコラーゲン合成には、たんぱく質とビタミンC、ミネラルの鉄が必要です。
このように互いが作用することで体が構成され、動くので、五大栄養素はどれも欠かせません。偏りなく、バランス良く摂ることが大切です。
私には何が足りないの? 数えるだけでわかる! ⾷⽣活の「クセ」をチェック!
食材には、複数の栄養素が含まれていて、その内容も量も異なります。栄養素をまんべんなく摂取するためには、食材を偏りなく食べることが大事。食生活の"クセ"をチェックすると、不足しがちな食材がわかります。
食品摂取の多様性スコア
1〜10の食品群に対して、「ほぼ毎日食べる」に1点、「2日に1回食べる」、「週に1、2回食べる」、「ほとんど食べない」の摂取頻度は0点とし、その合計点を計算しましょう。
出典:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センターホームページ
点数で食品群の偏りがわかる
上の図表は、日常の食生活において、摂取する食品群を10種類に分けたものです。栄養管理や食生活チェックがより簡単にできるように、ほぼ毎日食べる食品群を1点とし、その他は0点という大胆な得点方式が特徴です。
「こんなにざっくりで良いの?」と思うかもしれませんが、「まんべんなく栄養を摂っているか」を振り返り、フレイル※予防のため大まかに確認する目安としては有効と期待されている指標です。
7〜10点の方は、まずは五大栄養素をバランス良く摂れていると思って良いでしょう。このタイプは筋量も多く、 身体機能が高いことが実証されています。5点以下の方は足りない食品群を意識して摂ってください。 特に1〜5、10に得点が入っていない方はたんぱく質や脂質が不足しているので、積極的に摂るようにしましょう。
※フレイルとは、「健康」と「要介護」の中間の状態
足りない栄養素は身近な食品から。手軽に栄養不足を解消!
炭水化物は具材が入ったものを選んで
おにぎりは塩むすびではなく鮭や昆布など具が入ったものを。サンドイッチや麺類も肉、魚、野菜などが入った具だくさんのものにして、炭水化物以外の栄養も一緒に摂る。
たんぱく質は1食で2種
たんぱく質組成は食材によって異なるため、朝食は目玉焼きと納豆、昼食は焼き魚と豆腐のみそ汁、夕食はハンバーグとツナサラダなど、1食で2種を心がける。カット野菜にさばの水煮缶やツナ缶をのせるだけでも!
タイプの違う油を使い分け
炒め物にはオリーブオイルを、加熱すると酸化しやすいアマニ油やえごま油はドレッシングに使うなど、タイプの違う油を使い分けてみましょう。いわしやさば、さんまなど青魚の脂もおすすめ。
現代人に特に不足しがちなビタミン、ミネラルはこの食材から摂ろう
ビタミンB群は、豚肉やかつお、まぐろなどの魚介類に多く含まれています。ビタミンCはカット野菜や冷凍ブロッコリーが手軽で便利。鉄は肉や魚だけでなく、ほうれん草やひじきにも多く含まれるので、食事の際は副菜にプラスしてみては。食事から摂取しにくいビタミンDや亜鉛は、サプリメントを上手にとり入れて。
汗をかく夏場は鉄分を積極的に摂って
「鉄」は赤血球の中にあるヘモグロビンの材料となる重要なミネラルで、月経中の女性は不足しがち。しかも汗によって体内の鉄分が流れ出てしまうため、夏場は特に意識して摂る必要があります。
食材の鉄には、赤身の肉や魚、レバーなどに多く含まれる動物性の「ヘム鉄」と、主に納豆や小松菜、ひじきなどに含まれる植物性の「非ヘム鉄」があります。
おすすめは体内での吸収率が高いヘム鉄。非ヘム鉄は動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップします。日々の食事に積極的にとり入れましょう。
現代人は、子どもから高齢者まで炭水化物の摂りすぎと同時に、食習慣の乱れからくる「隠れ栄養不足」が増えています。摂りすぎのもの、不足しているものを知り、生活にとり入れやすい形でしっかりおぎなっていきましょう。忙しいときや求める食材が手に入らないときはサプリメントを活用してもOK。チェックリストや食品摂取の多様性スコアを定期的に活用し、暑い夏を元気に乗り切りましょう!
人物イラスト:高橋マサエ