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暑さと冷えに打ち勝つ体づくりこそ重要

今年も暑い夏がやってきました。疲れやすい、食欲がない、ぐっすり眠れない......。この時季よく聞かれるこれらの不調が1つでも当てはまれば、"夏バテ"であると内科医の石原新菜先生は話します。
「年齢を重ねると体内でエネルギーが十分に作られなくなるので、疲れが溜まってだるくなりがち。更年期の人はホルモンバランスの乱れで眠れず、さらにつらく感じることもあるでしょう。逆に、普段から運動をして筋力のある人や、お風呂に入って汗をかく習慣のある人は、代謝が良いので夏バテのダメージを受けにくくなります」
また近頃は、暑さをしのごうと冷たいものばかり食べ、内臓が冷えて体調をくずす、いわゆる"冷えバテ"になる人も増えています。
夏バテ、冷えバテに打ち勝つためには、健やかな体づくりがなにより大切。3つの極意を実践して、暑い夏を乗り切りましょう!


なにはともあれ熱中症対策は万全に!

熱中症とは、体の中に熱がこもって体温調節ができなくなることで生じる、吐き気や頭痛、筋肉けいれんといった症状の総称です。不調が徐々にやってくる夏バテと違い、熱中症は急激に症状が悪化することが多いので、予防対策は万全にしたいもの。「熱中症警戒アラート(環境省 熱中症予防情報サイト)」なども参考にしてください。

熱中症にならないようにするには?

□ 風通しの良い、涼しい服装を心がける
□ 外出時は日傘や帽子を活用する
□ 日陰を利用する
□ 水分・塩分をこまめに補給する
□ 気温だけでなく、湿度や室温もチェックする
□ 食事と睡眠で体調を整える


現代でも役に立つ、江戸の庶民のエコロジーな暑さのしのぎ方

電気もガスもなかった江戸時代、人々は夏の暑さをしのぐためにさまざまな工夫をしていました。地面の熱を冷やす打ち水、日光を遮りつつ風を通すよしず、浴衣を着て花火見物がてらの夕涼み。水分の多い夏野菜やスイカで体のほてりをしずめる方法は、現代の暑さ対策にも有効です。また、江戸の町の夏の風物詩だったのが「甘酒売り」。甘酒は栄養豊富で、夏を元気に過ごすにはうってつけだったようです。



夏バテしないための3つの極意

暑さに負けず、夏を元気に過ごすには、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか。毎日の生活の中で実践できる極意を、石原先生に教えてもらいました。

栄養バランスの良い食事で
夏を乗り切るスタミナをつける

スタミナをつける食事といえばステーキや焼肉をイメージしがちですが、夏バテ気味の胃腸には重すぎると感じてしまうことも。
「カレーなどに入っているスパイスは食欲を増進させ、消化を助けてくれます。旬の野菜をあたたかいスープなどにして食べるのも良いですね。また、炭水化物からのエネルギー産生を助けるビタミンB1や、エネルギーに不可欠なコエンザイムQ10も、この時季に積極的に摂りたい栄養素です」(石原先生)



夏の元気&エネルギーに不可欠な2大成分




暑い夏こそ頼りになる!
エネルギーにかかわる
「コエンザイムQ10」とは?



コエンザイムQ10は、体内でエネルギーを作る際に必要となる補酵素の1つ。かつては"ビタミンQ"と呼ばれていたこともありました。コエンザイムQ10には酸化型と還元型があり、酸化型は体内で還元型に変換されます。また、還元型は疲労回復や肌のターンオーバーにかかわるといわれています。
「もともと体内にあるものですが、20代をピークに減少するので外からおぎなう必要があります。食材にも含まれますが、いわしなら30匹近く食べないと1日の目安量に届かないので、サプリメントも活用しましょう」(石原先生)



体の外側と内側から"夏サビ"を防ぐ

鉄くぎやアクセサリーなどの金属が空気に触れて酸化し、やがてサビていくように、私たちの体も紫外線を浴びて酸化します。"夏サビ"とは、この時季の強い紫外線で肌細胞がダメージを受け、酸化してしまうこと。年齢を重ねると肌の回復も遅くなるので、外側から紫外線を防止するだけでなく、内側からの夏サビ対策が必須です。ビタミンA、C、Eやポリフェノールなどを意識して摂るようにしましょう。
「ブロッコリースプラウトやしょうが、みそなどは抗酸化作用が期待できます。また、この時季は、みそ汁を冷やしていただくのもおすすめですよ」(石原先生)



質の良い睡眠は明日へのエネルギー源

「夏バテのいちばんの原因は睡眠不足と言っても過言ではありません。朝、パッと目覚めることができ、日中眠くならずにいられるのが、ちょうど良い睡眠時間です。質の良い睡眠のためにも、運動や入浴、寝室のしつらえなどを工夫してみてください」(石原先生)
パジャマや寝具には、肌ざわりと吸湿性の良い天然素材がおすすめ。また掛け布団は、薄手の夏掛けよりも春秋用のやや厚めのものを選び、エアコンで室温を調節するのが安眠のコツだそう。



監修石原 新菜(いしはら にいな)先生 内科医。イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長

学生の頃から、父親である医学博士・石原結實氏とともに海外の病院に同行し、自然医学の基礎を養う。現在は父親とともにクリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行う。テレビ、ラジオ、講演活動なども積極的に行い、著書多数。

イラスト:イトガマユミ

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