ヘルスケア特集 ヘルスケア

"(103歳のジョヴァンニ・サンナイは)毎日少なくとも6マイル(10キロ弱)は歩き、働くことが好きだ。彼はいつも早起きして、日中は牧草地で過ごした"

――イタリア・サルデーニャ島の項より

ビュイトナー氏の著書『ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ 健康と長寿のルール』の増補改定版。5地域の調査の様子をドキュメンタリータッチで紹介。ブルーゾーンの100歳人たちが、何を食べ、どのように1日を過ごし、人と付き合い、ストレスを発散しているのかをつぶさに知ることができる(日本語版訳・監修:荒川雅志、訳:仙名紀)

『ブルーゾーン セカンドエディション 世界の100歳人に学ぶ 健康と長寿9つのルール』(祥伝社)
ダン・ビュイトナー著



100歳を超えてなお活動的な長寿者たち

長寿者が極めて多い地域の存在に最初に気がついたのは、医学統計の専門家でもあるイタリア人医師です。ほかの地域と比べ、イタリア・サルデーニャ島の山岳地域は100歳を超える男性の比率が驚くほど高かったのです。その後、国際的な自然科学雑誌『ナショナル ジオグラフィック』の記者ダン・ビュイトナー氏が、長寿研究者たちと調査に乗り出し、100歳を超える人々が多く暮らす世界の5つの地域を特定。文化も生活習慣も超越した、9つの法則があることを探り当てました。ビュイトナー氏は調査結果を『ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ 健康と長寿のルール』という著書にまとめ、100歳人たちから学んだ「長寿の方程式」を実践することで、人生のクオリティを高めることができると語っています。

導き出された9つの法則

1. 適度な運動を続ける
2. 腹八分で摂取カロリーを抑える
3. 植物性食品を食べる
4. 適度に赤ワインを飲む
5. はっきりした目的意識を持つ
6. 人生をスローダウンする
7. 信仰心を持つ
8. 家族を最優先にする
9. 人とつながる

※沖縄だったら泡盛など、地域のお酒でも。


健康&長寿の法則を暮らしにとり入れるコツ

★ 取り組みやすいことから始める
★ 同時に4つ以上は取り組まない
★ 家族または友人と一緒に取り組む
★ 自分へのご褒美を忘れない


5つの地域の特徴

● 体 ● 食 ● 心

イタリア・サルデーニャ島

羊飼いたちは1日8キロあまり歩く。


● よく歩く
● 植物性食品を主体にした粗食
● ヤギのミルクを飲む
● 毎日グラスに1、2杯の赤ワインを飲む
● 家族を最優先にする
● 長寿者を大切にする
● 友人たちと談笑する

ギリシャ・イカリア島

無心で体を動かし、昼寝で体を休めている。


● 山の生活は暮らし自体が運動
● 昼寝をする
● 定期的に断食を
● ヤギのミルクを飲む
● 地中海風の食事をする
● ハーブをストックしておく
● 家族や友人を優先する

中米コスタリカ・ニコジャ半島

ニコジャの100歳人は頭が冴え、動きも活発。


● よく働く
● 適度に太陽を浴びる
● 硬水を飲む
● 夕食は軽く
● 人生の目標を持つ
● 家族を第一に
● ネットワークを維持する
● 伝統文化を大切にする

日本・沖縄

薬用になる野菜もさかんに栽培している。


● よく体を動かす
● 日光を浴びる
● 植物性食品を主体にした食生活を維持する
● 大豆をたくさん食べる
● 薬用にもなる野菜を作る
● 生き甲斐を持つ
● 強い意思を持つ
● 近所付き合いを続ける

アメリカ・ロマリンダ

時間の聖域=安息日は1日やすらかに過ごす。


● 適度な運動を定期的に
● 健康的なBMIを維持する
● 間食にはナッツを
● 肉を食べるなら控えめに
● 夕食は早めに軽く
● 食事に多くの植物性食品を
● 水分を十分に摂る
● 気の合う人と時間を過ごす
● 社会へのお返しを心がける
● 時間の聖域を決める

※体重と身長から体格を割り出す指数。「適正体重 = (身長m)×(身長m)×22」

<ACTION1 BODY>
適度な運動を習慣化する

元気な長寿者たちに共通しているのは、「日常生活の中に、あまり激しくない適度な運動が組み込まれている」こと。
体を動かすことの少ない現代人が運動を習慣化するために、ビュイトナー氏がすすめる方法をご紹介します。

身のまわりを不便にする

掃除機ではなくほうきや雑巾で掃除してみる、バスや電車ではなく、たまには徒歩や自転車で出かけるなど、少し不便な生活を楽しんでみよう。適度に体を動かすことにつながり、良い運動に。

草花を植える

かがんで土を掘ったり、雑草を取ったり、立って枝葉の剪定をしたり...。庭仕事をすると、体のあちこちを動かして良い運動になるうえ、ストレス解消にも。さらに好きな野菜を育てれば収穫も楽しめるなど良いことずくめ。

毎日歩く

「毎日歩く」ことはブルーゾーンすべての長寿者に共通していた習慣。歩くことはお金も掛からず、ランニングほど関節に負荷も掛からない。いつでもできるし仲間も誘える。食後の散歩は消化を助けることにも。

仲間と一緒に散歩する

一人の散歩もいろいろな発見があって楽しいけれど、気の合う仲間と語らいながらの散歩はなお楽しい。最初に自分は誰と歩くのが楽しいかを考えてみよう。運動能力が同じくらいの人となら無理しないで歩けるはず。

毎日を活動的に楽しむ

「運動のための運動」はなかなか続かないもの。ライフスタイルをより活動的にするために、坂道や階段を使う景色の良い道を探してみるなど、楽しんで体を使えることはないか、リストアップしてみては?

ヨガのクラスに出席する

高齢になるほど、転倒が大きなケガの原因になることも。筋力トレーニングとバランス感覚の向上は欠かせない。筋肉を強化し、柔軟性を増すヨガは、バランス感覚の向上にも役立つ運動のひとつ。


<ACTION2 SPIRIT>
家族を最優先にする・人とつながる

ブルーゾーンには社会的つながりが根付いていて、長寿者たちも家族や地域社会と支え合っています。
ビュイトナー氏はライフスタイルを改善する最も強力なポイントは「人とつながること」と言い、実践をすすめています。

家族の距離を近くする

家族や親しい人と過ごす時間が少なくなっている現代、家族を軸として暮らすブルーゾーンの100歳人たちにならって、1日に一度は食事をともにする、家族や親しい人と一緒に過ごす機会を増やすなど、絆を深める工夫を。

家族の儀式を作る

口実がないとなかなか集まりにくいもの。家族や親しい人と一緒に過ごす日を年中行事のように決めたり、皆が集まってややかしこまった食事を楽しんだり。自分たちならではの儀式を作って、習慣化してみては?

価値観を共有できる人をリストアップする

社会的つながりの多い人ほど長寿であるという研究結果も。たとえ大事な人に先立たれても、違った形のつながりが支えてくれる。住所録や友人の連絡先を見返して、価値観を共有できる人とつながろう。

仲間と一緒の時間を作る

サルデーニャの人たちは、地元のバーで友人と語り合って1日を終え、沖縄の人たちには生涯を通じて寄り添う「模合」というグループがある。少なくとも1日に30分は自分の仲間と過ごすのがおすすめ。

目的意識を持って楽しむ

イキイキとした長寿者に共通するのは、社会とのつながりがあり、しっかりした目的を持って人生を送っていること。ブルーゾーンの調査でインタビューした100歳人には、愚痴をこぼすような人は一人もいなかったのだそう。


\成果があった!/
「ブルーゾーン・バイタリティ・プロジェクト」



ミネソタ州アルバート・リー市はビュイトナー氏の主導で「ブルーゾーン・バイタリティ・プロジェクト」を開始し、「歩きやすく歩道を整備」「市民が野菜や花を植えるスペースを確保」等々を実施。2009年1月の開始時と同年10月の2回、参加者の生活習慣から平均余命を割り出す調査を行ったところ、平均寿命が約3年延びていました。この成果を受け、カリフォルニア州やアイオワ州なども同様のプロジェクトをスタートさせました。地域を挙げてライフスタイルの見直しを行う活動が広がっています。



イラスト:サイトウマサミツ

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