
今日から始める私たちのマインドセット
老化や寿命にまつわる話題に、私たちはつい翻弄されがちですがシニアライフの未来は意外と明るい? データ解析のプロ・長澤光太郎さんが皆さんに送る、第二の人生を謳歌するためのマインドセットの提言です。
連載企画として、老化や寿命に関する記事をお届けします。
あなたが抱くシニアのイメージ、そろそろ更新してみませんか?
人生100年時代といわれます。しかし、そのことをイメージできている人はまだ少ないかもしれません。
日本人女性の平均寿命は87.14歳※1ですが、実は、女性の50%が到達する年齢(中央値)は90歳程度※2。半数以上の人は、平均寿命より長生きをしています。
昨年、歌手の西川貴教さんが「漫画『サザエさん』に登場する磯野波平と同い年(54歳)になりました」とSNSで報告して話題に。それほど現代人は、見た目も体力年齢も若返っています。実際私には、88歳で私よりボールを飛ばすゴルフ仲間がいますし、妻のヨガ友達は90歳です。
私たちが抱きがちな老後のイメージと実態とのギャップは、統計にも見事にあらわれています。老後に対するマイナスイメージは、そろそろ更新するべきでしょう。シニア時代は自分のための時間を味わえる"人生のゴールデンタイム"といわれます。その準備として、健康作りや将来の夢を今から考えておくことは、案外大切なのではないでしょうか。
※1 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」参照
※2 中央値とは、100人の女性のうち50・51人目の人が寿命を迎える年齢のこと。90歳は2020年の国勢調査の結果に基づいた値
女性の大多数が90歳超え!
グラフ内の「H60」は、当時60歳だった人の半数以上が、統計的に確実に到達する年齢(中央値)をあらわす指標です。1960年に60歳だった人は、79歳で人数が半減しました。それが2020年では91歳まで延びます(予想値)。グラフを見ると、60〜70代で亡くなる人の数が年々減少し、H60の値は直線的に上昇していることがわかります。日本人は過去70年にわたり、男女ともほぼ5年で1歳ずつ長寿化を続けているのです※3。
※3 コロナ禍の2021~2022年を除く
出典:長澤光太郎 編著『還暦後の40年 データで読み解く、ほんとうの「これから」』(平凡社)
※4 60歳女性10万人当たりのその後の年齢別死亡者数
体力年齢はますます若返り、80代の自立生活者は8割に!
今の75~79歳の人の歩く速度は、20年前の65~69歳の人とほぼ同じというデータ※5があります。60歳以降の体力年齢は、20年で10歳も若返っています。体調面でも、日常生活に支障を感じるほどの自覚症状を訴える人の比率を示す「有訴者率」は、グラフが示すとおり減少傾向。また、他人の世話にならずに生活ができる「自立寿命※6」は、「健康寿命」をはるかに超え、実際の寿命を迎える3.3年前まで続いています。体力年齢が長期的に延びていることから、自立寿命もさらに延びると考えられます。
※5 スポーツ庁「体力・運動能力調査」各年版
※6 要介護認定を受けていない人~介護保険の要介護2までの数で推定
厚生労働省「国民生活基礎調査」健康票、1998、2001、2004、2007、2010、2013、2016、2019年版、「有訴者率(人口千対)、年齢・症状(複数回答)・性別」に基づいて作成
参考:「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」報告書(平成31年3月)
シニアの一人暮らしの9割以上は「幸せ」
2020年の国勢調査によると、65歳以上の約5人に1人が一人暮らしでした。85歳以上の女性では約3人に1人の割合です。その暮らしぶりがうかがえるデータが、下の2つのグラフです。一人暮らしの高齢者(1,480人)のほぼ半数が「幸せ」、4割が「まあまあ幸せ」と回答。実に9割以上が一人暮らしを楽しんでいるのです。
参考:内閣府「平成26年度一人暮らし高齢者に関する意識調査」
<次回予告>
人生のゴールデンタイムを延ばす研究はどこまで進んでいる?
加齢によって肉体が劣化する速度は確実に落ちてきています。ではその速度はどこまで遅らせられるのでしょうか? 次号は最新科学がアプローチする"抗老化の現状"を探ります。
イラスト:⼭村真代