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老化対策の新キーワード「老化細胞」

加齢の影響を事前に調べて対策をとっておけば、健康を維持したまま大病を患うことなく寿命を終えられるーー。そんな夢のような話が現実味を帯びています。

生物学の世界では、"若返りは可能"というのがすでに定説になっています

こう話すのは、老化対策の指標となる検査法の研究にも携わり、多くの実績を持つ抗加齢医学の先駆者、堀江重郎先生です。

「例えば、高齢のマウスと若いマウスの血液を交流させると、高齢のマウスの毛並みが良くなり、筋肉の状態が復活するといったことが、研究で確かめられています」

このような数々の老化研究の中で、特に今注目を集めているのが"老化細胞"です。

「老化細胞とは、体内で細胞本来の機能を十分に果たせなくなっているのに残ってしまっている細胞で、周囲の正常な細胞に悪影響を与えることがわかっています。皮膚にシワができたり、記憶力が落ちたりする要因には、この細胞が関係しているといわれています」

老化細胞が蓄積するイメージ

出典:国立研究開発法人 日本医療研究開発機構より作図



「老化細胞」の蓄積を加速させる要因

老化細胞が増え始めるのは30代頃からと考えられています。若いときは新陳代謝や免疫機構によって自然に除去されますが、年齢を重ねるにつれ、次第に除去するスピードが追いつかなくなり、体に蓄積されていくのだそう。

老化細胞の蓄積を加速させるのは、食べすぎや過度なストレス、睡眠不足などの生活習慣。食事は特に重要で、食べすぎによる肥満や、逆にやせすぎで筋肉量が減ってしまうことは、老化を促進させる大きな要因になるといいます。


「老化は生活習慣と密接にかかわっているので、悪い習慣を改善することで老化を遅らせたり、巻き戻したりもできます。あるいは、老化細胞さえ除去できれば、より有効な老化対策が可能になります

積極的に老化を食い止めるアクションを起こすなら今

では、現時点で私たちができる老化対策には、どんなことがあるのでしょうか。

「体や脳が喜ぶ行動をとることが、老化対策になります。健康的な食事や睡眠に加え、ワクワクする気持ちを持ち続けることが大切。普段の生活を見直しながら、老化に対して積極的なアクションをとっていきましょう

見た目が若い人は脳や気持ちも若いので、病気にもかかりにくいそう。日々の対策で見た目が変わってきたら、それは老化の進行が巻き戻ったサインかもしれません。

「近い将来、血液で自分の"生物学的年齢"が計れるようになります。生物学的年齢とは、暦年齢と違って、健康状態を反映した体の年齢を指し、老化の指標となるもの。それを改善することができれば、病気のリスクを最大限に減らし、寿命を迎えるその日まで健康でい続けることも可能になるでしょう。老化対策は、これまでとは違う革命的な局面を迎えているのです」


まとめ

老化は生活習慣と密接にかかわっており、体や脳が喜ぶ行動をとることも老化対策になるのですね。普段の生活を見直しながら、老化に対して積極的なアクションをとりたいものです。

監修堀江 重郎(ほりえ しげお)先生 医学博士 / 順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器科学主任教授

日米で医師免許を取得、救急医学、泌尿器科学、分子生物学などの研鑽を積む。日本抗加齢医学会理事。日本初のメンズヘルス外来開設。『LOH症候群』(KADOKAWA)、『二階から目薬』『堀江重郎 対談集 いのちーー人はいかに生きるか』(ともに、かまくら春秋社)など著書多数。

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