ヘルスケア特集 ヘルスケア



\お話を伺った先生/

監修松峯 寿美(まつみね ひさみ)先生 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医、医学博士。

1946年生まれ。1970年東京女子医科大学卒業後、1980年に東峯婦人クリニックを開院。特に更年期・思春期医療、不妊治療に力を注ぐ。


Y美:そもそも女性ホルモンってなんですか?

松峯先生:ずばり、女性の人生の守り神です! 卵巣から分泌される2つの女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が協力。出産や生理はもちろん、下記などの女性のカラダを健全に保ってくれる大切な存在です。

女性ホルモンが働いている器官


皮膚や髪などの表面
胸や卵巣といった女性器
運動神経や精神をつかさどる
血管の柔軟性を保つ心血管系
関節痛や骨粗しょう症にかかわる



A子:ときとともに女性ホルモンが少なくなるのは、なぜ?

松峯先生:「種の保存」からの卒業が近づくから。女性ホルモンには次の世代に「種」をつなぐ働きがあり、エストロゲンが卵胞を成熟させると、排卵後にできるプロゲステロンが子宮内膜に受精卵が着床しやすいよう、ふかふかにベッドメイキング。お互いにチームワークを発揮します。初潮後から毎月排卵し、平均50歳前後には排卵できる卵胞が在庫切れに。それに伴い女性ホルモンも減っていくのです。

Y美:更年期が始まるサインはありますか?

松峯先生:女性ホルモンが減ってくるのが更年期で、その兆候がわかりやすいのは月経不順。女性は10代前半で初潮を迎え平均50歳前後で閉経を迎えるまで、月経と排卵を繰り返します。その間、月経サイクルをコントロールするのが女性ホルモン。そのため、変化の訪れは月経にあらわれます。月経が来なかったり、逆に早く来たり、排卵が不規則になって月経周期が乱れてきたら、更年期に入ったサインです。

女性ホルモンが減ると出血の原因や周期が変わります

◇◇◇◇


エストロゲンとプロゲステロンが均衡を保った状態で起きるのが、その月の子宮環境をリセットする消退(しょうたい)出血で、月経はこの1種です。一方、無排卵などでエストロゲンが分泌されっぱなしになり、バランスが破綻して起きるのが破綻出血。月経と思いきや無排卵の可能性が高く、周期が乱れます。





A子:よく更年期世代といわれるんですけど、更年期ってどんな状態?

松峯先生:更年期は、慣れ親しんだ女性ホルモンを手放しながら、閉経に向けてゆっくりとホルモンバランスが変化していく時期。閉経を挟んだ前後10年間とされ、不快症状が起こりやすくなります。例えば、体がほてるホットフラッシュや関節痛、目や口の乾き、肌の乾燥、不眠、精神的不安など。月経不順とこれらの不調が重なれば、更年期の症状と考えてよいでしょう。不調が起きる理由は、脳下垂体から卵巣に向かって「エストロゲンを出して」「排卵して」と指令を送ってもらっても、機能が低下した卵巣が反応できないから。エラー状態が伝染し、脳下垂体隣の「間脳視床下部(かんのうししょうかぶ)」管轄下の自律神経が悲鳴をあげ、エストロゲンが減ることで、守られていた前述の表面、女性器、脳、心血管系、骨などの治安が乱れます。このしくみを理解しておけば、怖がらずに済みますよ!


Y美:更年期の症状は、みんなに平等に起きるモノですか?

松峯先生:軽い・重いの個人差がありますが、結局は「ホルモンの感受性」次第。月経の重さには関係なく、忙しさにかまけて気づかない人もいます(私がそう!)。


A子:女性ホルモンの分泌がなくなると、私たちどうなっちゃう? もしかして女性じゃなくなるの?

松峯先生:女性は灰になるまで女性です。閉経は寂しさを伴いますが、月経前症候群(PMS)や生理痛、月経出血から解放され自由に! むしろ閉経してからが、女の見せどころですよ。

Y美:閉経後に女性ホルモンをキープすることって可能?

松峯先生:できます。更年期がつらければ病院へ行き、潤滑油感覚でホルモン補充療法を受けてみては。その他、主な対策を下にまとめましたのでチェックを。おしゃれを楽しむのもおすすめの策です。

ホルモンの補い方


医療機関でのホルモン補充療法
➋食事やサプリメントでの栄養補給
唾液とともに若返りホルモンのパロチンを出す咀嚼(そしゃく)


骨や筋肉から若返りホルモンが分泌される運動
異性(夫)との触れ合い



Check
更年期世代におすすめの成分と含まれる食品


●大豆イソフラボン●
大豆、大豆製品



●カルシウム●
乳製品、小魚、ひじき

●ビタミンB群●
かつお、豚ヒレ肉、パプリカ

●コラーゲン●
牛すじ、鶏軟骨、鶏砂肝

●鉄●
赤身肉、魚、小松菜、岩海苔

●亜鉛●
牡蛎、豚レバー、ごま

●ビタミンC●
パプリカ、キウイ、ケール



A子:閉経後、何をやっても太る一方。ダイエットは諦めるべき?

松峯先生:閉経すると女性ホルモンをつくる働きが失われ、女性ホルモンの材料となるコレステロールなどが余剰に。基礎代謝も落ちるから、太りやすい体質になるのは当然です。体重増加が気になるなら、1日の総摂取カロリーを閉経前の2〜3割減にするのが良いですね。ホルモン活性の意味でも運動をおすすめしていますが、家事だって立派な運動。今までより掃除を長く、念入りにしてみましょう。

閉経後は食事量を2~3割減に!

Y美:今までになく気分の浮き沈みが。どうしたら良いかわからない・・・

松峯先生:ホルモンバランスの乱れによる生理現象だから、気に病まないで。おすすめの解決策はおしゃれをして外に出ること! クラス会に参加したり、カフェに行くなら近所の店ではなく一駅先で新たな店を発見してみたり。刺激があなたの心を動かします

松峯先生よりアドバイス

◇◇◇◇


更年期世代は、心身を守り続けてくれた女性ホルモンとの蜜月の、最終ステージです。「今までありがとう」と感謝しながら、健康を見直すチャンスにしていきましょう。






更年期世代が知っておきたい2つのポイント

女性ホルモンが減ることによって衰えやすいポイントの、エイジングケアをご紹介。すこやかな毎日のために続けてみましょう。

  POINT 1  
骨のエイジングに注意

骨密度は更年期を境に低下する傾向が。身長が低くなったと感じるなら、軽い圧迫骨折で細かな骨がつぶれて背骨が丸まってしまった可能性も。失った骨量はとり戻せないので、早めにケアを始めましょう。

年齢を重ねるとともに骨密度が低下

歳を追って湾曲するのは、骨の強度が低下したことによる軽い圧迫骨折の積み重ねで、背骨が歪むのが原因。冷えやしびれも起きがちに。

簡単セルフチェック

腰や首の下に手が入りますか? 入らない場合は軽い圧迫骨折が起きているかもしれません。まっすぐに寝転べない場合も歪みの証。

床に横になって背骨に触れてみましょう。


食事+運動+日光浴で骨量をキープしましょう

◇◇◇◇


骨をつくるカルシウムやたんぱく質、ビタミンD、ビタミンKを含む食事や、運動での負荷、適度な日光浴によるビタミンD生成で骨を強化しましょう。





  POINT 2  
骨盤底筋(こつばんていきん)トレーニングで女性ホルモン減少に負けないカラダづくり

尿もれや頻尿も、気になるワード。これらは、閉経後に緩みやすい骨盤底筋を鍛えることで解決可能です。ハンモック状の筋肉がキュッとしまり、排泄のコントロールが叶います。


鍛えずにいると、子宮、膀胱、直腸を支える骨盤底筋が、薄くなって緩んでしまいます。



若い頃の骨盤底筋は厚く伸縮自在で、しっかりとしたハンモック状。



骨盤底筋トレーニング

「8」の字をキュッとしめる


電車に乗りながらトレーニング

吊り革につかまり、息を吸いながらつま先で立って肛門をしめる。
息を吐きながらかかとを下ろす。
➊、➋を5分目安で繰り返す。


座りながらトレーニング

脚を閉じ、息を吐きながら5秒間肛門をしめて、脱力する。
脚を肩幅より広く開き、と同様に肛門をしめて、脱力する。
➊、➋を5回目安で繰り返す。


イラスト:本田佳世

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