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なぜ夏は特にビタミン・ミネラル不足に注意が必要なの?

夏の炎天下で大量に汗をかくと、汗と一緒にビタミンとミネラルが体外に流れ出てしまい、不調をまねく要因になります。「自分はエアコンの効いた室内にいるから大丈夫」と思った方も、油断は禁物。室内外の温度差が激しいと自律神経が乱れて食欲が落ち、十分に必要な栄養素を摂取できずに体調をくずしてしまうケースが多いのです。
夏の暑さや紫外線から身を守るための防御機能(抗酸化作用)を持つ抗酸化ビタミン(A・C・E)にも特に意識を向けたい時季。暑さで食欲が湧かず、喉越しの良い麺類ばかり食べていると、糖質過多な食生活になりがちです。パフォーマンスが落ちないよう、エネルギー代謝に必要なビタミンB群の不足にも気をつけましょう。また、ビタミンとミネラル不足が様々な不調をまねくため、いつにも増してバランス良く摂取することが必要なのです。


健康維持のために欠かせない栄養素

ビタミンとミネラルは、エネルギー源となる三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)の代謝をサポートし、骨の代謝にも関与しています。その他、神経や筋肉を正常に働かせる役割も果たす、体の調子を整える"潤滑油"のような存在。生命の維持に必要な生理機能の大半にかかわる重要な栄養素です。例えば、ビタミンB群は糖質や脂質などの代謝をサポートし、カルシウムは、骨の主成分として欠かせません。しかし、ビタミンとミネラルは体内ではほとんど合成されないため、毎日の食事で十分に補う必要があります。


そのときの食欲に応じた、栄養摂取を

中には、夏バテによる食欲低下は「ダイエットにちょうど良い」と感じる方もいるのでは? しかし、必要な栄養素が不足してしまっては、健康を害してしまいかねません。体調をくずしたり、様々な肌トラブルが起きやすくなるため、注意が必要です。美しさは健康があってこそ成り立つもの。栄養不足になる前に、しっかりと対策をしましょう。
もし夏バテで食欲がないときには、簡単な食事でいいのでまずは食べることが大切です。日本人は食事から多くの水分を摂る傾向があるため、何も食べないと脱水にもなりかねません。ただしそうめんなどの麺類ばかりでは糖質に偏りがちなので、野菜や果物、豆、卵、肉、魚など食べられるものからたんぱく質やビタミン・ミネラル補給を心がけましょう。


夏に意識したいビタミン・ミネラルは?

夏は暑さで食欲が低下しやすく、気づかぬうちに栄養不足になりがちな季節。暑さに負けずいきいきと過ごすために、意識して摂りたいビタミンとミネラルをご紹介します。


ビタミンA・C・E


暑さや紫外線のストレスから身を守る働きがあります。特に水溶性のビタミンCは、体内で利用されなかった分は尿や汗として排出されてしまうため、こまめに補給を。

----[効率良く摂れる食材]----

ビタミンA(ベータカロテン)
うなぎ、にんじんなど
ビタミンC
ピーマン、キウイなど
ビタミンE
ナッツ類など





ビタミンB1


夏は調理がラクな麺類や、菓子パン、アイスクリームといった糖質過多な食生活になりがち。糖質代謝に必要なビタミンB1を大量に消費するため積極的な摂取を。

----[効率良く摂れる食材]----

豚ヒレ肉、豚レバー、枝豆など






全身への酸素運搬に不可欠。不足すると集中力の低下や食欲不振などをまねくため、通年しっかりと摂りたい栄養素ですが、汗をかく夏は特に不足しがちなので意識して摂りましょう。

----[効率良く摂れる食材]----

ヘム鉄(動物性食品)
牛肉赤身、あさり、卵黄など
非ヘム鉄(植物性食品)
枝豆、大豆、納豆など



食欲が落ちやすい夏は、大豆製品や野菜からの摂取もおすすめ


以前はヘム鉄の方が吸収率に優れているとされていましたが、近年では、鉄の不足時は非ヘム鉄の吸収率が大幅に高まることが明らかになりました! 年齢とともに食が細くなったり、夏バテで食欲が落ちても、食べやすい食品から鉄分を摂りましょう。

※出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」



カリウム


ナトリウムと互いに作用して、体内の水分バランス・血圧をコントロールしています。余分なナトリウムの排出を促す働きも。汗と一緒に体外へ流出するため、野菜や果物などから十分な摂取を。

----[おすすめ食材]----

トマト、きゅうり、スイカなど





塩飴での塩分過多に要注意!


夏はナトリウム不足を防ごうと、塩飴などを活用する方が増えますが、あまり汗をかかない場合は要注意。塩飴から塩分を摂りすぎているケースが多いため、食べすぎには注意しましょう。



カルシウム


日本人は通年不足気味ですが、夏バテで食事量が減るとさらに欠乏しやすい栄養素。骨密度を維持するためにも、こまめに摂取しましょう。

----[おすすめ食材]----

しらす、モロヘイヤ、チーズなど




夏の食事で効率良く栄養を摂る3つのポイント

暑さでキッチンに立つのも億劫になりがちな夏。食材選びのポイントを押さえ、調理のハードルを下げる工夫をすれば、無理なく効率的に栄養補給できますよ。




調理法を工夫する


電子レンジを活用することで、調理中のビタミンC損失を抑えることができるうえ、暑い夏に火の前に立つ時間を減らすことができます。また、カット野菜や冷凍野菜も鮮度を保つ技術が進んでいるので、栄養を効率良く摂りたい方におすすめです。



※出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」




旬の食材を積極的に選ぶ


夏野菜には、暑さを乗り切るために必要なビタミンやミネラルがたっぷり。トマトやオクラなどカラフルな野菜が持つ色素は、ストレスや紫外線から身を守る抗酸化作用があるのもうれしいポイント。様々な夏野菜で食卓をカラフルに彩ると効率良く栄養を摂ることができますよ。







なるべく複数の品目を摂る


一品料理でも使う食材の種類を増やせば、バランス良く栄養補給ができます。麺類には、野菜や卵、ツナ、納豆を加えると栄養価がアップ。具だくさんな炊き込みご飯や、彩り豊かな野菜にしゃぶしゃぶ肉をのせたサラダも◎。旬の野菜やたんぱく質食材を少しでも加えることを心がけましょう。





\藤橋先生おすすめ!/
栄養バランス抜群「サラダうどん」

電子レンジ調理が可能な冷凍うどんに、きゅうりやトマト、納豆、卵、ツナなどをトッピング。めんつゆと豆乳を混ぜてかけ、汁まで食べれば、コクと栄養を強化できて一石二鳥です。



藤橋先生からのアドバイス

毎日の小さなひと工夫が、夏を健康に乗り切る大きな力に


体のケアに役立つ栄養素を知り、「夏バテ時もできる範囲で質を高める」工夫が大切です。食欲がないときは不足しがちな栄養素をサプリメントで補うのも有効な手段のひとつ。小さな積み重ねが、夏を健康に乗り切る大きな力になります。




監修藤橋 ひとみ(ふじはし ひとみ)先生 管理栄養⼠・医学博士

株式会社フードアンドヘルスラボ代表取締役。科学的根拠に基づく栄養学を軸に、食と健康の専門家育成やコラム執筆、メディア出演、商品開発コンサルティングや研究など幅広く活躍。著書に『おいしく⾷べてキレイになる!おから美腸レシピ』(KKベストセラーズ)など。

イラスト:なかむら葉子

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