ヘルスケア特集 ヘルスケア
監修塩野﨑 淳子(しおのざき じゅんこ)先生 管理栄養士

訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術クリニック内)にて、在宅訪問管理栄養士として活動。『70歳からは超シンプル調理で「栄養がとれる」食事に変える!』(すばる舎)など著書多数。



「いつもの買い物」に潜む栄養バランスの落とし穴

私は在宅訪問管理栄養士としてお客様のご自宅に出向き、食生活のサポートをしています。その中で感じるのは、高齢の方に限らず、どの年代でも「気づかないうちに栄養が偏っている」ことが意外に多いということ。特に自炊をされている方ほど使い慣れた食材に頼りがちで、その積み重ねが特定の栄養素の不足につながり、いわゆる「新型栄養失調」に陥っているケースも少なくありません。

食べているのに栄養不足?
「新型栄養失調」とは

カロリーは足りているものの、たんぱく質やビタミン、ミネラルなど特定の栄養素が不足した状態のこと。高齢者の食事量減少や女性のダイエット、現代人の偏った食習慣などが原因となり、年代を問わず広がっています。




「自分の食事の傾向」を知ることが第一歩

そこで大切なのが、ご自身の食事にどんな偏りがあるのかを知ること。最近は栄養管理ができるスマートフォンのアプリもあるので、活用してみるのも良いでしょう。

ただ、栄養の偏りに気づいたとしても、いきなり食生活を大きく変えるのはなかなか難しいものです。そこで、日々の食材選びで効率良く栄養を摂るテクニックをご紹介します。ほんの少し新しい視点を加えるだけでも、すこやかな毎日への一歩につながるはずです。


管理栄養士がアドバイス!
いつもカゴに入れる「定番の食材」、教えてください!

Aさん(45歳)
40代の夫と中学生の息子との三人暮らし。家事や仕事に忙しく、時短調理を心がけている。

育ち盛りの息子がいるので肉料理が多いのですが、本当は魚も食べてほしいですね。バランスを重視して、カラフルな野菜を買うようにしています。



Aさんの定番食材

赤身の豚肉や牛肉でたっぷり鉄分を

一見バランスは良さそうですが、食物繊維が不足気味なのでお通じが心配に。海藻やきのこもプラスしましょう。育ち盛りのお子さんには、鉄分豊富な赤身の豚肉(ヒレ、もも)や牛肉(挽き肉でも可)がおすすめです。



Bさん(68歳)
70代の夫と二人暮らし。基本3食自炊だが、食が細くなってきたため、あっさりしたものを好む。

やっぱり和食が体に良いかなと思って、お肉よりお魚をよく食べますね。それから年をとると骨折しやすくなるので、カルシウムをたっぷり摂るように意識しています。



Bさんの定番食材

和食は塩分過多や脂質不足の傾向に

和食がメインの方は、塩分や脂質のバランスを意識しましょう。鉄分や亜鉛も不足しがちなので、貝類でミネラル補給を。骨粗しょう症対策のカルシウム摂取は、ぜひ続けてほしいですね。



管理栄養士直伝! たんぱく質・ビタミン・ミネラルもしっかり摂る!
スーパーでできる栄養バランステクニック

いつもの買い物でも、売り場ごとに食材選びを少し工夫するだけで、栄養の偏りや不足を解消することができます。新しい食材や使い方を取り入れて、不足しがちな栄養素もしっかり摂れる食事を目指しましょう。




①惣菜コーナー

お惣菜は具だくさんを選ぶ

お惣菜を選ぶときは具だくさんのものがおすすめ。ポテトサラダならきゅうりやハム、ゆで卵、玉ねぎなどが入っているものを、ひじき煮ならごぼうやにんじん、大豆入りなどを選ぶと、栄養がたっぷり摂れます。


②冷凍食品コーナー

冷凍うどんにシーフードミックスを合わせたり、冷凍焼き鳥に卵を合わせて丼にするなど、冷凍食品の活用もおすすめです。


③レトルトコーナー

最近のレトルト食品は、高たんぱく・低糖質・減塩など、健康志向にも対応し、ラインナップも多彩。お気に入りを見つけるのも楽しいですよ。

④乾物コーナー
旨味と栄養の宝庫、乾物

乾物は栄養価が高く、凝縮された旨味や香りも魅力です。干し椎茸のビタミンD、ひじきのカルシウム、切り干し大根の鉄分など、不足しがちな栄養素も手軽に補えます。乾燥野菜も使い勝手が良く、入れるだけで具だくさんみそ汁のできあがり。手軽に使える乾物を、ぜひ積極的に活用しましょう。


⑤缶詰コーナー

缶詰レパートリーを増やす

ツナ缶やさば缶は定番ですが、売り場には多種多様な魚介類の缶詰があり、ミネラル補給にぴったり。おすすめはあさりで、炊き込みご飯やパスタにも使いやすく、不足しがちな亜鉛や鉄分を補うことができます。


⑥お菓子コーナー

果物が高くて買いにくいときは、ドライフルーツを。マンゴーはビタミンCやカリウムも豊富なので、特に塩分を多く摂る方におすすめです。

⑦水産加工品コーナー
練り物は手軽なたんぱく源

ちくわやかまぼこなどの練り物は、スープの具やお弁当に便利。塩分が気になるなら塩分カット品を、油分が気になるなら蒸し製品を選ぶと◎。魚が苦手なお子さんも食べやすいでしょう。


⑧青果コーナー

旬の野菜を1品追加

地元産の野菜コーナーには、栄養価が高くて価格も手頃な旬の野菜が多く並んでいます。普段あまり買わない野菜はなかなか手が出しにくいものですが、調理法を検索するなどして、料理の幅を広げるのもおすすめです。

フルーツでビタミンチャージ

フルーツは手軽にビタミンが摂れる優れもの。冷凍保存すれば、食欲のない朝もスムージーでおいしく栄養補給できます。


"いつも"を変えるマイ・ルール

売り場探索で新発見!

普段の買い物はリストを片手に急ぎがちでも、時間に余裕のある日は売り場をじっくり眺めてみませんか?新しい食材や便利なアイテムとの出合いがいつもの食卓をアップデートし、栄養の偏りを見直すきっかけになります。

「調理品・半調理品」ならアレンジ簡単

スーパーには、下処理や味付けが済んだ調理品や半調理品がたくさんあります。冷凍餃子を使って具材たっぷりのスープにするなどのアレンジもしやすく、栄養アップの手助けになります。

食材チェンジで偏り解消!

つくり慣れたレシピでも、食材を変えてみると栄養の偏り解消に役立ちます。例えば肉の炒め物を魚に置き換えてみる、ハンバーグを豆腐でつくってみるなど、ちょっとした工夫で不足しがちな栄養素を補うことができます。



イラスト:イトガマユミ

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧