
突然筋肉がけいれんし、激痛で動けなくなる足のつり。つらいものですね。なぜ足がつるのか、『「足がよくつる」人のお助けBOOK』(主婦の友社)などの著書で知られる出沢 明先生に、原因や対処法をお聞きしました。
足やふくらはぎは最もつりやすい部分。夏特有の原因を知って、しっかり対処しましょう。
健康への第一歩
「夏に足がつりやすいのはなぜ?」Q&A
Q1.そもそも、筋肉が突然つるのはなぜですか?
A1.筋肉と腱(けん)との境目にあるセンサーの誤作動が原因です。
つりは、筋肉を吊り橋のように支える「腱」に組み込まれたセンサーの誤作動によって起こると考えられています。
筋肉は伸びたり縮んだりして、姿勢を支えたり体を動かしたりしています。その際、筋肉が損傷しないように極度な伸び縮みをセーブするセンサーのようなしくみがあります。それが筋肉と腱の境目にある「腱紡錘(けんぼうすい)」という組織。この働きが何らかの理由で鈍ると、けいれんが生じてつりが起こると考えられています。
Q2.なぜセンサーは誤作動を起こすのでしょうか?
A2.ミネラルバランスのくずれが原因です。
マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムなど血液や細胞内に存在するミネラルは、神経の伝達や筋肉の収縮にかかわっています。加齢や運動不足による筋肉量の低下、激しい運動による筋肉疲労、脱水、冷えによる血行不良などによってこれらのバランスがくずれると、神経伝達がスムーズにいかなくなり、センサーの誤作動を引き起こすと考えられるのです。
Q3.夏に足がつりやすいのはなぜでしょうか?
A3.脱水や冷房による冷えも原因の一つだと考えられます。
脚は重力に逆らって立つ・歩くという動きで酷使するうえ、心臓から遠いのでむくみや血行不良が起きやすい、夏にはたくさん汗をかくことによってミネラルが失われやすいなど、さまざまな条件が重なって、つりやすくなります。
夏の夜中につる人が多いのは、さらに以下のような条件が重なるからでしょう。
・睡眠中はセンサーの働きが低下する
・冷房で足先が冷えて血行不良になりやすい
・あおむけで寝ているとつま先が下がり、ふくらはぎの筋肉が収縮しやすい
特によくつるのが「腓腹筋(ひふくきん)」というふくらはぎの筋肉です。また、腓腹筋より深部にある「ヒラメ筋」は、足首の関節の動きのみにかかわっているため、長時間の立ち仕事やよく歩く人、ウォーキングやジョギングをする人などがつりやすい部分です。
Q4.ふくらはぎがつったときの対処法を教えてください。
A4.ひざ裏伸ばし⇒ふくらはぎ伸ばしの順に行いましょう。
まずは、ひざ裏の腓腹筋を伸ばします。硬くこわばった筋肉がほぐれて周辺の血行が促されることでミネラルが必要な部分に届き、神経の情報伝達が改善されてけいれんが治まります。
対策1
ひざ裏伸ばし
つっている脚を前に伸ばし、フーッと大きく息を吐きながら、つま先を手前に引っぱり、ひざ裏とふくらはぎをゆっくり伸ばす。
手がつま先に届かなければ、タオルをつま先に引っ掛けて手前に引きましょう。
対策2
ふくらはぎ伸ばし
ひざ裏を伸ばしてもつりが治まらなければ、「ヒラメ筋」がつっている可能性があります。ひざ上の裏側からかかとまで伸びている腓腹筋に対し、ヒラメ筋はひざ下からかかとにかけて伸びる筋肉のため、ひざを緩く曲げた方がより伸ばしやすくなります。「ふくらはぎ伸ばし」を行ってみましょう。
①軽くひざを曲げたまま、つま先をひざ頭の方にゆっくりと倒す。
②それでもつりが治まらなければ、あおむけになってひざを軽く曲げ、天井に足裏を向けてつま先にタオルを引っ掛ける。ゆっくりと手前に引っぱりながら、かかとを天井方向に突き出す。
*よくつる人は、枕元にタオルを用意しておくと良いでしょう。
対策3
すね伸ばし
すねがつったときは、床などを利用して足の甲とすねが一直線になるように伸ばします。ひざが痛くなければ、正座をするのも良いでしょう。
つったほうの足を後ろにつき、つま先を床につける。息を吐きながら足の甲をゆっくり床に近づける。
Q5.日頃からできる予防法はありますか?
A5.「波止場のポーズ」がおすすめです。
ふくらはぎの疲れやむくみは、ふくらはぎがつる「こむら返り」の原因に。疲れたなと思ったら、往年の映画スターが波止場でとったこのポーズが、予防におすすめです。
①しっかりしたイスや階段に片足をのせ、両手を太ももに置く。
②息を吐きながら前足に体重を掛け、後ろ足のかかとを床につけたまま、ふくらはぎとひざ裏を30秒間伸ばす。
③さらに腰を落とし、後ろ脚のひざを曲げて5秒キープ。反対側も同様に。
*毎日2~3回ほど行いましょう。
寝る前のおすすめケア
ストレッチのほかに、寝る前に以下のケアをやっておくと効果的です。
①水分を摂る 就寝前にコップ1杯の水を飲む。
②ふくらはぎをマッサージする ふくらはぎをもんで疲労物質の排出と血行を促進。
③体をあたためる 夏も冷房で筋肉が意外と冷えています。入浴時はなるべく湯船につかりましょう。
④つま先を伸ばさない 頻繁につる人は、サポーターなどで足首を曲げた状態で固定(締めつけないよう注意)してみても良いでしょう。
まとめ
つりがひどくなると睡眠不足になったり、外出やスポーツを思いどおりに楽しめなくなったりしてしまうことも。「一過性のものだから我慢すればいい」と諦めず、水分やミネラル補給を心がけ、冷え対策やストレッチなどを行いましょう。