知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

夏になると、旅行やスポーツ観戦など、屋外で活動する時間が増えますよね。楽しいイベントが多い一方で、この季節は目を酷使しがちです。そこで、目の健康に関する多くの著書で知られる深作秀春先生に、疲れ目のメカニズムや、日頃から気をつけるべき目のケアの方法などについてお聞きしました。



健康への第一歩
「夏に目が疲れやすいのはなぜ?」Q&A



Q1.夏に目が疲れやすくなるのはなぜでしょうか?

A1.強い紫外線などが水晶体や網膜にダメージを与えるためです。

屋外で大量の紫外線や、青や紫の短波長可視光線(たんはちょうかしこうせん)※を浴びると、水晶体や網膜にとっては強いダメージとなります。それが蓄積することで、目の疲れだけでなく、白内障や加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)などの深刻な目のリスクへつながることも。夏は肌を日差しから守るように、目のケアも必要です。
対策として有効なのがサングラスですが、瞳孔(どうこう)が開いてしまう黒色ではなく黄色や薄茶色のものがおすすめです。

※人間が色を感じられる波長の電磁波のこと。



Q2.夏は海やプールに入る機会も多くなりますが、泳いだ後は目をしっかり洗った方が良いでしょうか?

A2.目は基本的には「洗わない」ことが大切です。

水泳をするとき注意していただきたいのが、必ずゴーグルを装着し、目を保護することと、プールで泳いだ後はゴーグルをつけたままシャワーを浴び、タオルで拭いた後にゴーグルを外すことです。
目は常にむき出しになっている繊細な臓器であり、防御しているのは涙だけです。涙は油層、水層、ムチン層から構成されています。洗眼によって油層が取れると、角膜はすぐに乾燥して角膜上皮細胞障害(かくまくじょうひさいぼうしょうがい)をきたします。目を保護する油層とムチン層の成分を洗い流すのは、目にとってはとても高いリスクになります。
目を洗うのはゴミや薬物が入ったときに留め、なるべく目の保護層を流さないことを心がけてください。

水泳のときは必ずゴーグルをつけましょう。

目の保護膜を洗い流すのは避けましょう。



Q3.紫外線以外で目の疲れを引き起こす原因はありますか?

A3.近くを見続けることも、疲れ目の原因になります。

疲れ目、つまり眼精疲労は、近くを見続けることによっても引き起こします。近くを見続けると、水晶体レンズによる屈折力を調整する毛様体筋(もうようたいきん)が緊張し続け、視界がかすんだり、目の奥が痛くなったりなどの不調があらわれることがあります。
こうした状態が続くと、遠くが見えにくくなり、肩や首がこったり、頭痛や吐き気など、全身の不調につながることも少なくないので、「たかが目の疲れだ」と侮ってはいけません。以下のような不調があらわれたら、目の休息タイムです。目を閉じたり、遠方をぼんやり見るなどして、毛様体筋を緊張から解放しましょう。


疲れ目のサイン

□ 目の奥が痛い

□ 目がかすむ

□ 目が熱をもつ

□ 目が乾く

□ 涙が出る

□ まぶたが痙攣(けいれん)する



Q4.目の健康のために、どんな食物を食べれば良いでしょうか?

A4.新鮮な緑黄色野菜を積極的に食べましょう。

目の健康に良いとされるルテイン、ゼアキサンチンなどのカロテノイドは、強い抗酸化作用のある色素成分です。これらは目の黄斑部(おうはんぶ)で紫外線や、青や紫の短波長可視光線を吸収遮断する役目を果たします。また、抗酸化作用によって、スマートフォンなどの長時間直視による、目の光障害を防ぐ働きもあります。
ルテインやゼアキサンチンは緑黄色野菜に多く含まれています。目の光障害を防ぎ、網膜機能を健やかにするためにも、日々の食事で緑黄色野菜を積極的に食べましょう


目の健康のために食べたい緑黄色野菜

・ブロッコリー

・ケール

・ほうれん草

・パプリカ

・とうもろこし



Q5.目の健康寿命を延ばすために、日頃から気をつけるべきことを教えてください。

A5.「3つのポイント」を意識して生活しましょう。

日本人の平均寿命は100歳にどんどん近づいていますが、国際眼科学会では、目の健康寿命は60~70年だというのが共通認識です。老眼や白内障、緑内障は本人も気づかないうちに進行し、手術が必要になることも。目の健康寿命のためには、定期的に眼科検診を受けることや、日々目の状態を自己チェックするなど、日常的なケアが欠かせません。
覚えておきたいのが、脳や心臓は頭蓋骨や肋骨で厳重に守られていますが、目は唯一むき出しの臓器だということ。紫外線だけでなく外からの刺激を受けやすいので、以下の3つのポイントを意識してみてください。


目の健康寿命のための3つのポイント

➀ 強い紫外線から目を守る

外で過ごすことが多い日はサングラスをかけましょう。サングラスをかけられないときはせめてつば広の帽子をかぶったり日傘をさすなど、できるだけ紫外線や、刺激の強い短波長可視光線から目を保護することを心がけてください。

② 目を酷使しないよう注意し、休ませる

目を休めるために、1時間に一度、なるべく遠くをぼーっと見ることを習慣にしましょう。できれば1キロ以上先の遠景を見ると良いですが、5メートルくらい離れていれば室内の時計などでも構いません。習慣にすることが大切です。

③ 少しでも気になることがあったら、検査する

目の不調を放置してしまうと、重大なリスクを見過ごしてしまう恐れがあります。夜間の車のヘッドライトや街灯がまぶしく感じたり、暗い場所でものが見えにくくなったら、早めに検査を受けることが大切です。

まとめ


疲れ目はつい軽視しがちですが、特に夏は目への刺激が多い季節なので、目の保護や休息を心がけたいですね。サングラスの使用や、カラフルな緑黄色野菜を積極的に食べるなど、目の健康寿命のためのケアを積極的にしていきましょう。

今月の監修者深作 秀春(ふかさく ひではる) 先生

深作眼科院長。『世界一の眼科外科医がやさしく教える 視力を失わないために今すぐできること』(主婦の友社)、『やってはいけない目の治療 スーパードクターが教える "ほんとうは怖い"目のはなし』(角川書店)、『緑内障の真実 最高の眼科医が「謎と最新治療」に迫る』(光文社)など、著書多数。

イラスト:天野勢津子

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