知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

厳しい暑さを乗り越え、過ごしやすい日も増えてきましたね。食欲の秋、運動の秋と言われるように、旬のグルメやアクティビティを楽しみたい季節ですが、夏バテによる不調を引きずってしまい、だるさが続くという人も少なくありません。そこで、季節の不調に詳しい川嶋朗先生に、不調のメカニズムや、日頃から実践すると良いケアの方法についてお聞きしました。



健康への第一歩
「なぜ夏が過ぎても不調が続くの?」Q&A



Q1.なぜ夏が過ぎたのに、不調が続くのでしょうか?

A1.食欲不振やだるさ・寝不足は、「秋バテ」のせいかもしれません。

涼しくなる秋は、夏の間に溜まった疲れが軽減し、食欲も増して元気になるはずです。ところが食欲不振やだるさ、寝不足など、実は「秋バテ」による不調を感じる人も多いのです。
秋バテの原因には2パターンあり、1つは夏バテを引きずるパターン。もう1つは秋の気候変化についていけないというパターンです。
秋になると酸素の薄い低気圧がたびたび日本に来るため、それに対応しようと自律神経がお休みモードに。さらに気温の低下によって体温も下がり、それがメンタルダウンにつながることも。特に体力に自信のない方は、体温を維持するためにエネルギーが使われてしまい、不調を感じやすくなるのです。



Q2.秋バテを克服するには、何から始めれば良いでしょうか?

A2.まずは体が冷えていないかを確認しましょう。

秋バテを感じたら、まずは体が冷えていないかを確認し、自分の体質を自覚することが大切です。もし冷えていたら、体温を維持するためにエネルギーが使われている可能性が高いので、体を温めることを意識すると、自律神経のバランスが戻り、不調を感じにくくなるはずです。
冷えを確認するためには、体温を測りましょう。生命活動を維持するために最も適した内臓温度は、38℃から40℃です。これは体温計で測ると36.5℃から37℃になります。平熱がこの範囲であれば健康的ですが、最近は35℃台の人も増えており、体が常に冷えていることに気づかないケースもあります。
また、おなかを触って冷たかったら、全身が冷えている可能性が高いです。おなかの冷えは服の上から触ってもわかりやすいので、たまに触って自分の冷えの状態をチェックすると良いでしょう。

おなかが冷たかったら、温かい手で優しくさすってください。
摩擦熱で徐々に温まってくるのを感じます。



Q3.適切な体温を維持するためには、どうすれば良いでしょうか?

A3.一番大事なのは「天然のカイロ」である筋肉をつけることです。

体温が低く、体力に自信がない方は、今よりも少し筋肉をつけましょう。筋肉は熱産生を行っているので、筋肉量が多ければ体を温める力も高まります。いわば筋肉は天然のカイロです。特に夏の間、暑くて動きたくなかった方や、室内でじっとしていることが多かった方は、筋力が落ちているかもしれません。過ごしやすくなってきた秋にこそ、少し負荷をかけて体力を戻すことをおすすめします。
ただし、続かない運動では意味がないので、少しの負荷で大きな成果が期待できる筋トレから始めましょう。まずはおなか、背中、太もも、二の腕など、大きな筋肉を動かすことを意識してみてください。また、買い物のときになどは歩く速度を1.5倍にする、家事をするときはつま先立ちで歩くなど、日常に筋トレを組み込むのも継続のコツです。



Q4.外出中に冷えを感じたときのための対処法を教えてください。

A4.二の腕をマッサージしましょう。

秋は一日の寒暖差が大きくなるため、夜に冷え込む日も増えます。つい油断して薄着で出かけた結果、体が冷えてしまうことも多いかもしれません。
そんなときは、どこでもできる二の腕マッサージがおすすめです。二の腕は大きな筋肉があるので、マッサージすると効率よく血行が良くなります。

二の腕の内側と外側を、少し強めに1分ほど揉んでみましょう。



また、冷えを感じたらいつでも首を温められるように、常にストールなどをバッグに入れておきましょう。首には太い動脈が通っているので、首が冷えると全身が冷えてしまいます。寒暖差の大きい秋はもちろんですが、どのシーズンでもストールやマフラーの常備はおすすめです。



Q5.秋バテ対策のための食事のコツを教えてください。

A5.体温より温かいものを食べましょう。

秋バテで自律神経のバランスが崩れていると、食欲も低下してしまいます。そのため、あっさりしたものや冷たいものなど、つい食べやすいものばかり選びがちです。しかし、そのような食事は冷えのもと。温かい食事で体の中から冷えを改善していくことが大切です。
食事で気を付けることは、体温よりも温かいものを食べるのがポイント。もしどうしても冷たいものを食べたいときは、温かいものとセットにすることを意識してください。例えば、サラダにはみそ汁、サンドイッチにはスープ、アイスクリームには紅茶など、温かい飲み物や汁物が合わせやすいです。また、朝食を食べることで体温が上がるため、食欲がなくても何か一口食べて出かけることをおすすめします。


まとめ


だるさや食欲不振は、つい軽視してしまいがちですが、貴重な過ごしやすい季節を秋バテでダウンしていてはもったいないです。まずは体が冷えていないかチェックし、温めるためのちょっとした工夫を実践してみましょう。秋の不調を克服したら、紅葉狩りや旬のグルメを思いきり楽しみたいですね。

今月の監修者川嶋 朗 (かわしま あきら) 先生

医学博士。『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社)、『不調が消え、免疫力アップ 毎日の冷えとり漢方』(河出書房新社)、など、著書多数。

イラスト:天野勢津子

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