知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

蒸し暑い季節が過ぎ、秋らしい景色になってきましたね。公園や川沿いを散歩したり、少し遠出をして自然に親しんだりするにはぴったりの季節です。一方で、夏が過ぎた頃から目がかゆい、鼻がムズムズする、くしゃみが止まらないなど、まるで春先の花粉症と同じような不快感を持つ人も少なくありません。そこで、花粉症原因物質研究の第一人者である王青躍(おう せいよう)先生に、秋の不快な症状について、その原因や対策をお聞きしました。


健康への第一歩
「秋のムズムズ、何が原因?」Q&A


Q1.秋になってから、一日に何度も鼻がムズムズするのですが?

A1.家の近所に花粉のホットスポットがあるかも!

夏から秋にかけて、都市部の市街地でもさまざまな植物が花を咲かせます。最近なんだかムズムズするのは、家の近所に「秋の花粉」のホットスポットがあるせいかもしれません。
春のスギ花粉に反応する人のうち、40~60%程度が秋の花粉の代表格ブタクサにも反応するというデータもあります。毎年秋口になるとムズムズなどの不調を感じる場合は、どんな植物に反応しているのかを知り、適切な対処をすることが必要です。


Q2.春と秋の花粉、何が違うの?

A2.秋の花粉は春よりも不規則で、予測が難しいのが特徴です。

春にはスギやヒノキなどの樹木が、遠隔地から長期間にわたって広範囲に花粉を飛ばします。大きな飛散の波が到来することを気象庁やメディアも注意喚起するため、誰もが不快感の原因を認識しています。
それに対し、秋は身近な草花たちが飛ばす花粉の小さな飛散の波が何度も繰り返されます。
同じ地域でも先週あちらに咲いたかと思えば、今週はこちらで咲くという具合に、短期間・散発的に花粉を飛ばすため、春のように多くの人が同時に不快感を覚えることはありません。樹木に比べ飛散距離は限られますが、いつもの散歩道や庭の隅に溶け込むように咲く花は意識されにくいもの。そんな花粉が、風に舞ったり、衣類や靴底に付いたりしたまま、気づかず家に持ち込まれていることが多いのです。


春の花粉の特徴

・スギやヒノキが生育する山林から、数百km飛散することも
・時期は冬の終わりから5月中旬まで、特に4月に集中する
・飛散の範囲が広く、一斉に反応が出る
・数か月間、花粉による不調が継続するため認識されやすい


秋の花粉の特徴

・雑草の生息地の周辺に飛散
・同じ市内でも、草花の生育状況によって散発的に花粉を飛ばす
・ムズムズを感じる期間が短く断続的なため、花粉に反応していることに気づきにくい
・民家の裏庭や公園、道端、河川敷、マンションの緑地スペースなどがホットスポット
・草刈り直後は風で近所に飛散するので要注意


Q3.秋の花粉、どんな植物に注意すれば良いですか?

A3.キク科やイネ科など身近な雑草にご注意を!

最もよく見られるのは、キク科のブタクサやヨモギで、さらにイネ科の植物やアサ科のカナムグラなども身近に生育しています。
最初に飛散するのがブタクサやヨモギなどのキク科の植物で、7月上旬から始まり、8月下旬から9月にかけて活発に。地域によっては12月まで飛ぶことも。アサ科のつる草であるカナムグラは、ブタクサよりやや遅れて9月中旬〜10月上旬に飛散量が増加し、イネ科は初夏にピークを迎えてからも11月頭まで長く飛散します。
大まかなシーズンを把握し、秋の不調に備えることが対策の第一歩。以下に主な植物をご紹介しますので、近所に生育していないかチェックしてみてください。


オオブタクサ(キク科)

・飛散時期:7月~11月
・草丈:100~300cm
ブタクサは、葉がヨモギとよく似ていて背丈は1m以下。ブタクサの仲間のオオブタクサは、葉がクワの葉に似ており背丈が3mになるものも。どちらも茎の先に長い雄花の穂をつけ、大量の花粉を撒き散らす。ブタクサより遅れて日本に入ってきたオオブタクサは、その生命力によって今ではブタクサより勢力を拡大している。


ヨモギ(キク科)

・飛散時期:8月~11月
・草丈:50~120cm
ブタクサと同じキク科の植物で、地下茎を伸ばして生い茂る。ブタクサと開花時期が重なるため気づかれにくいが、繁殖力が強く生育面積が広いため、飛散量はかなり多い。花粉の粒子が小さいため、身体に入り込みやすい。


カナムグラ(アサ科)

・飛散時期:8月~11月
・草丈:60~100cm
カナムグラは、家の庭でもよく見かける身近な存在で、意外と接触機会が多い。つる草なので電柱やガードレールに巻き付いていることも。緑色の花を咲かせ、紫褐色の実をつける。葉は子どもの手のひら大のモミジ形で、茎に小さなトゲがあるため注意が必要。関東で飛散量が多い。


イラクサ(イラクサ科)

・飛散時期:9月~10月
・草丈:40cm~100cm
主に東日本から西の比較的暖かい地方の、半日陰で湿気のあるあぜ道や住宅の周辺で見かけられる。茎や葉の表面などにあるトゲは、触ると鋭い痛みがあり、かぶれることもあるため注意が必要。秋になると長い花穂を葉腋から2本ずつ出し、緑色の花をたくさんつける。


ススキ(イネ科)

・飛散時期:8月~10月
・草丈:100~150cm
イネ科のススキは、日本全国に生育する馴染みのある植物で、土手や河川敷、公園などで見かけることが多い。茎の先に茶色の穂をつけ、種が成熟すると白くふわふわになり、風に乗って遠くへ運ばれる。よく晴れて湿度の低い日や、雨が降った翌日の晴れの日などに飛散しやすい。


Q4.秋の花粉への対策を教えてください。

A4.家の中に持ち込まない工夫を。

花粉対策の基本は「付けない」「入れない」「舞い上がらせない」です。
外出時にはできるだけ草むらに近づかないこと。そして家に入る時は玄関で花粉を払い部屋に持ち込まないようにしましょう。また、室内に侵入した花粉の9割は、床に落ちているか、洗濯物や外干しした布団などに付着しているといわれます。こうした特徴を理解して、効果的な対策を。


日々のなかでできる花粉対策

1.花粉対策グッズでガードする

外出時にはメガネ・マスクで花粉からガードしましょう。花粉は髪や衣類に付着することも多いので帽子をかぶったり、花粉をブロックするスプレーの使用も効果的です。帰宅時には玄関先で髪や衣類、靴底に付いた花粉を払いましょう。


2.洗濯物や布団を外に干さない

花粉シーズン中は、洗濯物は室内干しを。衣類乾燥除湿器やエアコンの除湿モードを活用して、乾かすと同時にカビ対策も行いましょう。布団やカーペットなどは外干ししたくなりますが、布団乾燥機やコインランドリーなどを活用しましょう。春の花粉症がある方は、夏や秋の花粉にも反応しやすいので、洗濯物は基本的に屋内で干すことをおすすめします。


3.風の強い日は換気を避ける風の強い日は換気を避ける

花粉は窓や換気扇からも侵入してきます。風の強い日はできるだけ換気を避けましょう。換気をするなら、花粉の飛散しにくい早朝や夜間に行うと良いでしょう。レースのカーテンごしに換気を行うことでも花粉の侵入を減らす効果がありますが、カーテンは花粉がつきやすいため、こまめに洗濯することが必要です。


4.空気清浄機は台の上に置く

空気清浄機を床に直置きすると、花粉を部屋に巻きちらす原因に。空気清浄機は台の上に置くなどして床から離せば、吸い込む花粉の量を減らせます。安定した場所に置き、転倒防止に気を付けましょう。
また、加湿機能を使って部屋の湿度を適切に保つことで、花粉が水分を含み、床に落ちやすくなります。こまめに拭き掃除をして、花粉を残さないようにしましょう。


5.床掃除は水拭きと乾拭きを

床掃除をする際、いきなり掃除機をかける方が多いのですが、これも床の花粉を室内に巻き散らすことにつながります。少々面倒でも、まず掃除用ワイパーで軽くほこりを取り除いてから床を水拭きし、さらにさっと乾拭きをして仕上げるのがベスト。また、絨毯やカーペットもいきなり掃除機をかけず、テープ状のクリーナーなどで付着した花粉を取り除くのがおすすめです。


6.アロマをうまく活用する

花粉対策にはアロマも有効です。植物から抽出した精油を嗅ぐと鼻がスッキリしたり、リラックスして自律神経を整える効果が期待できます。トドマツの精油などは花粉対策におすすめです。寝る前に枕元に置いたり、マスクや衣類にスプレーしたりすれば、外出時の花粉対策にもなります。


まとめ


秋のムズムズが気になる方が多い一方で、その原因が花粉だと気づかないケースも少なくありません。まずは通勤・通学経路やいつもの散歩道に、秋の花粉の原因となる草花がないか確認してみてください。しっかり対策を行えば、不快な症状も減り、秋を快適に楽しめるはずです。



今月の監修者王 青躍(おう せいよう) 先生

埼玉大学大学院理工学研究科教授・工学博士。環境科学研究者。花粉症原因物質研究の第一人者であり、東京都花粉症対策検討委員会委員を務める。花粉の飛散状況をモニタリングし、テレビや雑誌などで注意喚起や情報発信を行っている。

イラスト:天野勢津子

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