知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

鏡でご自身の歯や歯茎を見てみましょう。昔よりも歯が長くなったり、歯並びが少し悪くなっている気がしませんか? これらも、歯茎やせのサインかもしれません。


歯茎がやせるのは、なぜ?」Q&A


歯茎がやせるのはなぜでしょうか?

加齢による骨密度低下や歯周病が原因です。

歯茎やせとは、歯槽骨(しそうこつ)がとけて歯茎が下がってしまった状態のこと。加齢による骨密度低下やコラーゲン量の減少、歯周病などが原因で起こります。
特に歯周病は、放置すると歯茎が歯を支えきれずグラグラしてしまい、最悪の場合は歯が抜けてしまいます。不十分な歯磨きで磨き残し(歯垢・しこう)があると、そこから歯石へと変わり、歯磨きでは取れなくなってしまいます。その繰り返しにより歯周病菌が増えてしまい、歯槽骨にまで影響を与えてしまうのです。その結果、歯茎やせが目立つようになります。
さらに、骨密度低下やコラーゲン量の減少は歯並びを変化させ、磨き残しが生じて歯周病を悪化させるという負の連鎖におちいることもあります。
正しい歯磨き方法を実践するなど、今から対策を始めれば健康な歯茎を取り戻すことは可能です。セルフケアを心掛けるとともに、歯科医院でのプロケアを定期的に行うようにしましょう。


(左)歯茎が健康な状態・・・口内の状態がキレイで歯槽骨が歯茎をしっかりと支えている。
(右)歯茎やせの状態・・・歯槽骨がとけ出し、そのまわりにある歯茎も下がっている。



歯茎やせと、普段の食生活とは関係がありますか

早食いなどの乱れた食生活も一因です。


歯茎やせの原因の1つである歯周病は、習慣によって起こる、いわば「生活習慣病」ともいえます。
普段、以下のような食生活をしてはいないでしょうか? 1つでも当てはまれば、歯茎やせが起こりやすいといえます。


あまり噛まずに食べる。早食い

よく噛まずに食べると唾液が出にくくなるため、早食いが習慣の方は要注意です。唾液には歯に付いた汚れを洗い流す、食べ物を飲み込みやすくするなどのさまざまな働きがあり、きちんと分泌されていれば虫歯や歯周病の予防にもつながります。

甘いものなど間食が多い
だらだらと飲食し続けることが多い

間食や、だらだらと食事をする習慣がある方は、口の中が汚れた状態が長く続くことになります。その後にきちんと歯磨きができればリセットできますが、そのような習慣がある方は、できていない場合が多いので気をつけましょう。

晩酌や寝酒をよくする

晩酌や寝酒をした日は歯磨きもおろそかになりがちです。翌朝に普段以上にていねいに磨くよう心がけましょう。



歯茎やせの予防法はありますか?

正しい歯磨きを心がけましょう。マッサージもおすすめです。


歯磨きが雑な方は歯周病も歯茎やせも起こりやすいといえます。以下のような習慣は歯や歯茎に負担がかかるのでNGです。

歯をごしごし磨いている

歯ブラシが強い力で当たると歯茎は血流が悪くなり、酸欠状態になります。これが歯磨きのたびに繰り返されれば、歯茎にダメージを与えて歯茎やせが起こりやすくなります。

歯磨きをすぐ終わらせてしまう

歯磨きは意識的にていねいにやらないと歯垢が除去できず、歯周病になりやすく、歯茎が下がりやすくなります。私の歯科医院で患者さんが歯を磨く様子を見ていると、全部の歯に対してていねいに磨けている方は多くありません。
特にルールを決めず、左右上下ばらばらに磨いていると、磨き残しが生じやすくなります。
おすすめは、下記のように磨き始めの歯を決めて磨くことです。

磨く順番を決め、一周してその歯に戻ってくるようにします。
歯茎に負担にならないやさしい力で1つの歯に歯ブラシを約3秒当てて、10回小刻みに動かしましょう。
終わったら隣の歯という風に順番に進めれば磨き残しを防げます。



歯茎マッサージもおすすめ!

歯茎の毛細血管を刺激して、血行促進につながる歯茎マッサージもおすすめです。夜、歯磨きをした後や、入浴中などタイミングを決めて行いましょう。歯茎に傷をつけないように、爪は適切な長さに切って清潔にしてから行ってください。
ちなみに、とある美容家さんに初めてお会いした際、59歳にして若々しい見た目であったのはもちろんでしたが、歯科医の私は、桜貝のようなピンク色の美しい歯茎に驚かされました。その理由をお聞きすると、肌同様に20代から歯茎マッサージを習慣にされていたそうです。
歯茎は唇から頬まで1つの皮膚でつながっています。歯茎マッサージは歯茎の毛細血管の血流を良くするので、歯茎にとどまらず、顔の血流改善にもつながっていきます。

やりやすい指の腹を使って歯茎と唇の折り返し部分をなぞりましょう。



歯磨きは1日3回しないといけませんか?

毎食後が好ましいですが、1日1回でもOK。

何かを食べたら口の中は当然ながら汚れます。口の中を"マイルーム"と考えてみてください。歯を磨いてキレイになった部屋と、食べたまま放っておいた部屋、どちらが良いですか? 汚れた口腔内は歯に汚れが付きやすいため、歯周病菌が発生しやすく、歯茎やせも生じやすいといえます。もちろん口臭も! そんな部屋にはあまり近づきたくないですよね。そのイメージを持っていれば食後には歯磨きをせずにはいられないでしょう。
とはいえ、できないときもあるはず。そんなときは、1日に1回、夜、寝る前だけはていねいに磨くようにしましょう。

食べ終わった後のお皿をそのまま食器棚に入れる人なんていないはず。特に、油っこい食事であれば念入りに洗わなければ汚れは取れません。食後に歯磨きをしないでいるというのは、食後に汚れたお皿を放置しているのと同じことなのです。歯も毎食後きれいに(食事の内容によってよりていねいに)磨いてあげましょう。



歯ブラシ選びのポイント

⚫やわらかめ
固い歯ブラシは、力が入るとどうしても歯がすり減ってしまい、知覚過敏になりやすくなります。やわらかめの歯ブラシを選びましょう。

⚫小さいヘッド
磨き残しを防ぐためには、口の中で小回りがきく小さいヘッドの歯ブラシを使うのもおすすめです。

⚫歯間ブラシ・フロス
どうしてもケアが行き届かないところは、歯間ブラシやフロスなどの補助的清掃用具を使うようにしましょう。



歯科医院ではどんなケアをしますか?

歯石の除去です。3~6ヵ月に1度のケアをおすすめします。

歯に付いた汚れが歯垢になり、歯石になってしまうと普段の歯磨きでは取り除くことができません。歯石を除去したいなら、歯科医院で定期的にケアを行うことを習慣づけましょう。
期間があいてしまうと歯石も取りにくくなります。かかりつけの歯科医院を決めて、できれば3ヵ月に1回、最低でも半年に1回、定期的に口腔内をチェックすることをおすすめします。


定期的に歯科医院に行かず歯石の除去をしないと、歯石の上にまた汚れが付き、その上に歯石が付いてさらに汚れが付きやすくなる・・・という悪循環に。歯の表面や隙間にミルフィーユ状の汚れが積み上がっていき、ケアも難しくなります。


まとめ


痛みや出血などのわかりやすい症状がないため、つい見過ごされがちな歯茎やせ。これを機に正しい歯磨き方法を習慣にして、これからも健康な歯茎を守っていきましょう。しばらく歯科医院に行っていなかったという方は検査に行ってみても良いですね。


今月の監修者宝田 恭子(たからだ きょうこ) 先生 歯科医師/宝田歯科医院院長、日本アンチエイジング歯科学会監事。著書に『オーラル宝田メソッド―10歳きれい!10年後もきれい!』(朝日新聞社)など。テレビや雑誌などにも数多く出演している。

イラスト:本田佳世

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧