知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

ちょっとした刺激で肌トラブルが生じてしまうのは、普段のスキンケアや食生活とも関係しています。肌と栄養との関係についても詳しい、皮膚科専門医の川﨑加織先生に原因や対策をお聞きしました。

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「年々、肌が刺激に弱くなるのはなぜ?」Q&A


肌が刺激に弱くなる理由はなんですか?

洗いすぎや加齢により、肌のバリア機能が低下するからです。

以前は放っておいてもすぐに改善した湿疹が、なかなか良くならなかったり、何回も繰り返し生じる原因には、次のようなものがあります。

理由1
加齢で肌のターンオーバー周期が長くなる

年齢を重ねると、肌が生まれ変わるターンオーバーの周期が長くなっていきます。20代では約28日周期といわれていますが、30代40代と年代が上がるにつれ、期間が1.5~2倍と長くなっていきます。周期が長くなればなるほど、肌に古い角質がどんどん溜まっていきます。肌のキメが粗くなり、水分を保持する力が低下。肌がつやつやした状態ではなくなってしまいます

理由2
肌への摩擦=洗いすぎで肌のバリア機能が低下する

ごしごし洗って肌を摩擦してしまうと、肌の表面でバリア機能を果たす「皮脂膜」が洗い流されてしまう場合があります。私のクリニックでも、体を洗いすぎて肌トラブルを起こす患者様は少なくありません。また、年齢とともに皮脂の分泌量は減少します。特に30代以降に明らかに減少することがわかっています。すると、皮脂膜が薄くなります。また、肌の水分が蒸発しやすくなり、肌のバリア機能が低下することで花粉などの外からの刺激を感じやすくなります。そのため、肌荒れやかゆみが起こりやすくなるのです。

理由3
紫外線による乾燥で肌のバリア機能が低下する

皮脂膜にダメージがあると、春先から強くなる紫外線の影響で、乾燥によるさまざまな肌トラブルを起こしやすくなります。日焼けしやすくなったり、シミができたり、シワが深くなってしまったりというトラブルも起こりやすいようです。なお、皮脂膜に問題がなくても、極端に日焼けをしてしまえば皮膚が炎症を起こし、肌トラブルへとつながります。

理由4
食生活に偏りがあり、栄養のバランスがくずれている

肌トラブルは、栄養バランスが偏っているサインでもあります。食生活の見直しで肌トラブルが改善する方は、私のクリニックでもとても多いです。特に、炭水化物が主体の食事や、おやつで糖質を摂りすぎていると、体の中でたんぱく質や脂肪が余った糖と結びついて「糖化」が進行し、肌トラブルを起こしやすくなります。肌細胞の糖化が進むと、シミやシワなどの症状が起こりやすくなります。そのため、食事に注意をするように患者様にも伝えています。



春先に起こりやすい肌トラブルにはどんなものがありますか?

花粉などによる皮膚炎と、紫外線トラブルが多くなります。

春先に多いのが、花粉によって起こる「花粉皮膚炎」です。目のまわりや頬などにかゆみや肌荒れが生じやすくなります。黄砂やPM2.5などの刺激でも、花粉皮膚炎と同じような症状が起こります。また、紫外線によるトラブルも春先から増え始めます。日焼けしたつもりはなくても、外出から戻ってくると、肌が熱くなって赤くなる方もいます。




刺激に負けない肌を作るためにおすすめのスキンケア法を教えてください。

365日の紫外線対策が基本です。肌への摩擦にも注意が必要です。

対策1
毎日欠かさず日焼け止めを塗る習慣をつける

紫外線対策は、日差しの強い夏だけでなく、春先にも必要です。毎日使いやすく肌にやさしい日焼け止めを塗ると良いでしょう。私自身は、365日、室内にいるときでも、日焼け止めを塗っていますし、クリニックに来院する患者様にもおすすめしています。日焼け止めを塗るようになってから、肌トラブルが少なくなったという患者様も多くいます。実は、日焼け止めを塗ることは花粉などの刺激に対するコーティングを作ることにもつながるんですよ。

対策2
シャワーだけですませず、入浴で汗をかく

肌トラブルを防ぐには、適度な汗をかくことが大切です。運動や入浴で、汗をかくように心がけましょう。忙しいとシャワーのみですませてしまう方もいるかもしれませんが、しっかり湯船につかりましょう。また、入浴後は10分以内に保湿剤を塗るなど、きちんと保湿を行うと良いでしょう。

対策3
肌への摩擦を最小限にする

クレンジングや洗顔は、やさしい力で行いましょう。入浴中は肌がやわらかくなっており、メイクも浮きやすくなっているので、洗顔に適しています。できるだけ顔に触る回数を減らし、コットンなどの使用も避けるようにしましょう。

冷たい水で洗うと毛穴が引き締まってしまい、汚れが取れにくくなります。ぬるま湯で洗顔やクレンジングを行いましょう。



肌の健康を保つために、摂ると良い栄養素はありますか?

ビタミンAや亜鉛、ビタミンB群、たんぱく質がおすすめです。

まんべんなく栄養を摂ることが大切ではありますが、肌の代謝を上げるという意味では「ビタミンA」をはじめ、「ビタミンB群」の摂取をおすすめしています。また、肌はもちろん、髪や爪、筋肉などの全身の健康維持を目指すなら、「たんぱく質」「亜鉛」の摂取が重要です。特に、年齢を重ねるとたんぱく質不足になりがちです。積極的に摂るよう心がけましょう。

ビタミンAはレバーやうなぎ、にんじんなどに豊富に含まれています。サプリメントでの摂取も有効です。

たんぱく質は、肉や魚、豆腐などに豊富に含まれています。



肌トラブルを起こしやすい「糖質の摂りすぎ」を防ぐには、どうしたら良いでしょうか?

普段の食事の仕方や献立選びを工夫しましょう。

ご飯などの主食から食べるのではなく、野菜や肉、魚などの主菜・副菜から食べるようにするだけでも、糖質の摂りすぎを防ぐことができます。また、ゆっくり噛んで食べることは、食べすぎを防ぐことにもつながります。さらに、肌の健康のためには、バランス良く栄養を摂ることができる和食中心の食生活をおすすめします。うどんやパスタなどの糖質がメインの献立は、肌にとっての栄養が不足しがちなうえに、肌トラブルを引き起こす原因になります。単品の献立になりがちなランチでは、せめて、もう一品、たんぱく質のおかずを足すと良いでしょう。

バランス良く栄養が摂れる和食中心の食事は、肌にとって良い食生活の例。一方で糖質だけの献立は、肌にとって悪い食事例といえます。

まとめ


肌の健康には、スキンケアはもちろん、栄養もとても重要です。つい糖質を摂りすぎてしまっている方は多いのではないでしょうか。日頃のスキンケアだけでなく、食生活も見直すことで体の内側から肌を健康に導き、トラブル知らずの肌を目指していきましょう。


今月の監修者川﨑 加織(かわさき かおり) 先生 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医/皮フ科かわさきかおりクリニック院長、医学博士、日本抗加齢医学会専門医。テレビや雑誌、WEB記事にも数多く出演している。

イラスト:本田佳世

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