知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

寝違えの背景には、姿勢の悪さやストレスなどがあることを知っていますか? 整形外科医でカイロプラクターの竹谷内康修先生に、原因やセルフケアについてお聞きしました。

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「寝違えが起こるのは、なぜ?」Q&A


寝違えが起こるのは、なぜですか?

姿勢の悪さやストレスで、首や肩がこっているからです。

寝違えが起きると、「寝相が悪かったのではないか」、「枕が合っていないのではないか」などと考えるかもしれません。しかし、それらは寝違えが起きる"きっかけ"にすぎません。主な原因は次の2つです。

原因1
もともと姿勢が悪い

寝違えを起こす人の多くは、もともと姿勢が悪い傾向にあります。普段から姿勢が悪いために、首や肩に負荷がかかって筋肉が緊張し、寝違えが起こりやすい状態になっているのです。

原因2
疲労やストレスで自律神経が乱れている

忙しい日々で疲れやストレスが溜まっていたり、睡眠不足が続いていると、自律神経の乱れから首や肩の筋肉が緊張しやすくなります。寝違えは働き盛りの20~50代の方に多い傾向にあります。



寝違えが起こりやすいのは、どんな方ですか?

姿勢が悪くなるような習慣がある方は、注意が必要です。

特に次のような方は寝違えが起こりやすい方といえます。

その1
スマートフォンやノートパソコンなどの画面を見過ぎている

スマートフォンやノートパソコン、タブレット端末の画面を見るときの姿勢は、座っていても立っていても背中が丸まって猫背になりがちです。すると、頭が前に突き出たり、下に垂れるなどの悪い姿勢になりやすく、首や肩の筋肉に負荷がかかってしまうのです。そのため、肩こりに悩んでいる方は、寝違えを起こしやすいともいえます。

その2
ストレートネックである

首は7つの骨で構成されており、健康であれば緩やかに"く"の字にカーブしています。しかし、スマートフォンなどの操作で悪い姿勢が続くと、頚椎(けいつい=首の骨)がまっすぐになる「ストレートネック」になり、肩こりや寝違えを起こすこともあります。ストレートネックのほとんどは、生まれつきではなく、生活習慣によって引き起こされる状態です。

(左)正常な首...首の骨が"く"の字にカーブになっている。
(右)ストレートネック...首の骨がまっすぐで、頭が前に出てしまい、首に負担がかかっている。



寝違えが起きたときは、どんな対策をしたら良いですか?

湿布を貼って安静に。痛みが治まってからはストレッチが有効です。

寝違えで痛みが強いときには湿布を貼るのも良いでしょう。痛みが治まるまでは無理に伸ばしたりせず、安静にすることが大切です。痛みが治まってからは、できる範囲内で首のストレッチをしましょう。痛みの原因となっている首まわりの筋肉の緊張を緩めてくれます。ただし、痛みやしびれを感じたら、中止してください。

首を斜め前に傾けて、頭(耳の後ろ)に手を当ててゆっくり押す。首もとを徐々に伸ばし、10秒キープします。



寝違えの再発を防ぐためにできることはなんですか?

正しい姿勢を身につけることです。

一番大切なことは、姿勢を良くすることです。そのためには、正しい姿勢を知る必要があります。皆様は、正しい姿勢とはどんな状態なのか、理解していますか? 私のクリニックの患者様も、正しい姿勢を認識できていない方が多いと感じています。

正しい姿勢とは、横から見たときに「耳」「肩」「腰」「股関節」「ひざ」「外くるぶし」が一直線にそろった状態です。

正しい姿勢を理解していたとしても、実践するのはとても難しいでしょう。では、簡単に改善し、正しい姿勢をつくるにはどうしたら良いでしょうか。そこでおすすめしたいのが、背中の中心にある「ボタン」をイメージすることです。そのボタンを背中側からぐーっと押されているという意識を持つと、自然と背筋が伸び、肩が後ろに引かれるような感じがして、姿勢が良くなるはずです。実際にボタンの場所を誰かに押してもらうのも良いでしょう。歩くときも意識すると、良い姿勢を保ち続けることができます。

肩甲骨の一番下のあたり、背骨の後ろ側にボタンがあることをイメージして、正しい姿勢を保っていきましょう。

また、ストレスや疲労を溜めすぎないよう、入浴や睡眠の時間を十分にとるなど、心身の休息の時間をつくることも大切です。さらに、運動不足も寝違えを起こしやすい一因です。無理なく続けられる運動習慣を身につけると良いでしょう。



姿勢が悪くなりがちなデスクワークでの注意点はありますか?

ストレートネックを防ぐため、作業環境を工夫しましょう。

一日中、パソコンを使用して仕事をしている方は、モニターの角度を変えるなどのちょっとした工夫が大切です。パソコン作業を長時間続けている方は、こまめに席を立って少し歩くなど、定期的に休憩をとることをおすすめします。特に、ノートパソコンを使用している方は要注意です。デスクトップ型のパソコンよりも画面が小さく、位置も目線の高さより低くなりすぎてしまうため、覗き込むような姿勢になりやすいからです。また、ストレートネックも引き起こしやすくなります。ノートパソコンを使用するときは画面の位置を高くし、覗き込むような姿勢にならないよう心がけましょう。

ノートパソコンを使うときは、外付けのキーボードを設置し、パソコンを台に置いて作業をすると、首に負担がかかりにくい姿勢になります。



寝違えを防ぐために日頃からできるストレッチを教えてください!

首まわりの筋肉を緩める「ゼロ筋トレ」がおすすめです。

頭の上で両手を組み、両腕を「0(ゼロ)」の形にする「ゼロ筋トレ」をおすすめします。左右の肩甲骨を寄せて引き下げることで、首まわりの筋肉を緩め、背中の筋肉を鍛えることができます。筋トレとストレッチ両方の作用があるので、首の痛みや肩こりのケアにも役立ち、姿勢も改善する効果が期待できます。立ったままでも、座ったままでもどちらでもOKです。1日に何回行っても良いので、気になるときに行いましょう。

①両手を頭の上に上げて大きな「0(ゼロ)」の形をつくり、一方の手で他方の手をつかむか、軽く指を組みます。そのまま左右の肩甲骨を体の中心に引き寄せて、胸を張ります。

②腕の位置はそのまま、肩甲骨の周辺の筋肉を下に伸ばすイメージで、引き寄せた肩甲骨をそのまま引き下げます。腕が下がりすぎないように注意しましょう。この状態で10~15秒キープ、1セットを3回繰り返しましょう。※肩甲骨が下がる位置は2~3㎝程度です。肩甲骨まわりの筋肉が衰えていると引き下がったと感じにくいですが、このトレーニングを続けていくと下がったと感じるようになります。

まとめ


これまでの経験上、疲れが溜まっているときに寝違えが起こると感じている方が多いかもしれません。しかし、根本的な原因は姿勢の悪さにあることがわかりました。日頃の環境づくりやストレッチなどで、正しい姿勢を身につけましょう。


今月の監修者竹谷内 康修(たけやち やすのぶ) 先生 整形外科医、カイロプラクター/竹谷内医院 院長。『頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える』(徳間書店)、『「ゼロ筋トレ」「背骨ストレッチ」「首伸ばし」の頸椎症エクササイズでスッキリ! 首の痛みは、自分で簡単に治せる!』(三笠書房)など、首の痛みに関する著書も多数。

イラスト:本田佳世

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