めまいが起こるのは、なぜ?
ふとした瞬間に、目の前がぐるぐるしたり、頭がくらくらする。そんな「めまい」を感じたことはありませんか? 特に、梅雨や台風の時季に感じやすい、めまいの原因を伺いました。
雨が降るとめまいがすることがある。それは、気圧の変化が耳に影響を及ぼして起こる"気象病"かもしれません。「気象病・天気病外来」で診療を行う久手堅司先生に、めまいの原因やセルフケアについてお聞きしました。
INDEX
「めまいが起こるのは、なぜ?」Q&A
めまいの種類にはどんなものがありますか?
大きく「回転性めまい」と「非回転性めまい」の2つに分けられます。
めまいは症状の違いで大きく2つに分けられます。一般的に多いのは、ぐるぐる回るように感じる「回転性めまい」で、原因は耳の奥にある内耳(ないじ)の違和感です。一方、頭がくらくらする、地面が揺れている感じがする「非回転性めまい」は、耳以外に原因があります。例えば、年齢を重ねると骨格に歪みが生じて姿勢が悪くなり、歩くときのバランスがくずれ、めまいを感じる方もいます。貧血や低血圧などにより、血のめぐりが悪くなることでも起こります。
めまいの原因はなんですか?
主な原因は、自律神経の乱れなどによる耳の違和感です。
梅雨や、台風が多い時季にめまいに悩む方も多いのではないでしょうか。それは、気圧の変化で不調が生じる「気象病」によるものかもしれません。耳は、気圧の影響を受けやすい部位です。雨が降る前など、気圧が大きく変動するときに、耳の奥にある内耳がむくんだような状態になります。その異変が脳に伝わり、自律神経を通じてめまいとなってあらわれます。
人の耳は「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分かれます。気圧の変化に反応しやすいのは、耳のいちばん奥である「内耳」です。
めまいの原因のひとつである「気象病」について詳しく教えてください。
気圧や気温、湿度などの天候変化によって起こる不調です。
気象病は、気圧、温度、湿度の3つの要因が関係して起こります。特に影響が大きいのが気圧です。症状は「雨が降っているとき」ではなく、「雨が降る前」に感じやすいようです。これは、雨が降る前に気圧が下がるからです。
症状で最も多いのは頭痛です。そのほか、だるさ、首や肩こり、耳鳴り、うつなどのメンタルに影響を与える場合もあります。
気象病チェックリスト
下記のチェックリストに1つでも当てはまる項目がある場合は「気象病の可能性がある方」、あるいは「気象病になりやすい方」といえます。
✓天候が悪いときや雨が降る前に体調が悪くなる
✓雨が降る前や天候が悪化する前に、なんとなく天候の変化が予測できる
✓頭痛持ちである
✓首こり、肩こりがある
✓めまいや耳鳴りが起こりやすい
✓倦怠感が強い。起床時、日中も常にだるい
✓低血圧気味である。血圧が低くなると体調不良になる
✓精神的な不調がある
気象病は女性に多いそうですが、なぜですか?
女性ホルモンの影響や生活習慣などが関係しています。
理由1
女性ホルモンが変動しやすい
PMS(※)や更年期障害などの女性ホルモンが関係する不調には、イライラやめまいなどがよく見られます。それらの症状は気象病とよく似ており、両方が重なると、症状はさらに重くなると考えられています。また、出血によって貧血になれば、めまいや頭痛などが起こりやすいと言えます。
※PMS=生理前に起こる、さまざまな精神的・身体的不調
理由2
血圧が低くなりやすい
女性は男性よりも血圧が低い傾向にあります。気圧と血圧には深い関係があり、気圧が下がると血管が拡張して、血圧が下がりやすくなります。もともと低血圧の方はさらに血圧が下がり、つらいと感じることが多いようです。普段、血圧に問題がないという方も、気圧が下がることで血圧が下がり、不調を起こす場合もあるので注意しましょう。
理由3
デスクワークなどの仕事をする方が多い
デスクワークなどで、長時間同じ姿勢のまま働いていると首や肩がこりやすく、気象病になりやすいと言えます。姿勢が悪いと内耳の位置が本来あるべき場所からずれて不安定になり、自律神経に悪影響を与えるからです。また、男性よりも筋肉量が少なく、血行が悪くなりやすく冷えを感じる方が多くいます。冷えて血流が悪くなると自律神経が乱れるため、体調不良を引き起こす一因となります。
姿勢が悪いと背骨に負担がかかり、自律神経に影響を与えるため、気象病になりやすくなります。
気象病でめまいが起きたときの対処法を教えてください。
内耳を刺激する耳のストレッチが有効。温めることも大切です。
つらいときは横になることが大切ですが、横になる時間が長すぎると回復に時間がかかる傾向にあります。少し動けそうなときは、耳を持って前後にゆっくり大きく回すなどの「耳のストレッチ」で内耳を刺激すると、症状緩和が期待できます。また、耳を温めると内耳の血行が改善し、症状が和らぎます。
耳伸ばしストレッチ
耳を持って水平や斜めに引っ張って、それぞれ10秒キープ。逆方向も同様に行いましょう。
耳回しストレッチ
耳たぶを持ち、前に5回、後ろに5回大きくゆっくり回しましょう。
タオルを使ったストレッチ
①フェイスタオルを細くたたんで、頭と首の間に引っかけて両手で端を持ちます。
②タオルを前方に引っ張りながら、頭を斜め後ろに倒し、引っ張ります。首とタオルで押し合うイメージです。ここで30秒キープ。
③頭をもとに戻し、続いて下を向いて同様に30秒キープ。
※タオルを使うと、首を痛めることがないのでおすすめです。
めまいや気象病の予防法を教えてください。
普段の食事や生活習慣を見直しましょう。気圧予報アプリもおすすめです。
対策1
パソコンやスマートフォンの使い過ぎに注意する
パソコンやスマートフォンの長時間の使用は首に負担がかかり、自律神経の不調が生じて、気象病になるリスクが高まります。1時間以上使用する場合は、画面から目を離し、体を動かすことをおすすめします。
対策2
腸内環境を整える食材を食べる
人の脳と腸が自律神経を介して、相互に影響を及ぼしあっていることを「脳腸相関(のうちょうそうかん)」といいます。脳の状態が悪ければ腸に悪影響が生じ、腸の状態が悪ければ脳に悪影響が出るので、その間をつなぐ自律神経を整えるために、腸内環境を整えることが大切です。ヨーグルトやチーズ、納豆、味噌などの発酵食品や、食物繊維を多く含む食品を積極的に食べることをおすすめします。
対策3
気圧予報アプリの活用
最近は、天気予報のアプリだけでなく、気圧の変化を予報するアプリがいくつか登場しています。これらの気圧予報アプリを参考に、自分の行動を決めるのも良いでしょう。
【活用例】
・翌日天候が悪く気圧が下がるとわかったら→夜、早めに寝るように心がける
・午後に気圧が下がるとわかったら→午前中のうちに耳のマッサージをして備えておく
・気圧が大きく下がる日が事前にわかったら→今のうちにリモート勤務の申請を出しておく
・外出予定日に気圧が下がるとわかったら→可能なら、別日に変更する
まとめ
「気象病」は正式な病名ではないため、家庭や職場だけでなく、医療機関でもなかなか理解を得られず、苦しんできたという方が多いかもしれません。しかし、最近では気象病外来なども増えてきました。ここで紹介したセルフケアなども取り入れて、上手に対策を行っていきましょう。
イラスト:本田佳世