知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

太陽の光を浴びると、幸せホルモンといわれる「セロトニン」の分泌が促されます。日照時間の長い夏はその恩恵を受けやすい季節です。今回は、セロトニン研究の第一人者である有田秀穂先生にセロトニンの特徴や分泌を促す方法などを解説していただきます。

 INDEX 



「日照時間が長い夏はどう過ごすべき?」Q&A


日照時間が長い夏はどう過ごすべきですか?

早く起きて朝日を浴び、ポジティブに過ごしましょう!

なんとなく元気が出ない、ささいなことで落ち込んでしまう。心の状態にはさまざまなものが影響しますが、そのうちの一つが、実は太陽の光です。太陽の光を浴びると、人の心をポジティブにするとされる幸せホルモン「セロトニン」の脳内分泌が活性化するからです。日照時間が長い夏はセロトニンが多く分泌されるため、冬よりも心の健康に良い影響を与えやすい季節といえます。

日照時間が長い夏よりも、日照時間が短い冬の方がなんとなく元気がない...。それは、「セロトニン」の脳内分泌に関係しています。

そんな夏こそ意識したいのが、"朝の過ごし方"です。セロトニンは寝ている間は分泌されず、朝、目覚めて太陽の光を浴びることで初めて分泌されます。電球の明かりでは照度が足らず、セロトニンは分泌されません。まず、起床したらカーテンを開けましょう。



セロトニンとはどんな働きをもつ脳内物質ですか?

ポジティブな気分を作り、自律神経も整えてくれます。

セロトニンとは、精神を安定させる作用のある脳内物質(幸せホルモンと一般に呼ばれる)です。太陽の光が目に入ることで分泌が促され、脳に働きかけてポジティブな気分になり、ネガティブな気持ちを落ち着かせることがわかっています。また、重力に対して姿勢を保つために働く、顔から足までのさまざまな筋肉「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)※」に働きかけるといわれています。抗重力筋は全身にあり、それぞれの場所できちんと働くと、背筋が伸び、イキイキとした表情を作ってくれるため、若々しく見えるといった作用もあります。

※抗重力筋=顔であれば「眼瞼挙筋(がんけんきょきん/まぶたを動かす筋肉)」や「咬筋(こうきん/顎を動かす筋肉)」、首なら「頸部筋(けいぶきん/首の付け根から頭にかけてある筋肉)」、背中は「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん/背骨の横にある筋肉)」、腰は「腸腰筋(ちょうようきん/上半身と下半身をつなぐ筋肉)」や「大臀筋(だいでんきん/お尻にある筋肉)」、足には「ヒラメ筋(ふくらはぎにある筋肉)」など、全身にある筋肉の総称。



セロトニンの分泌を増やすにはどうしたらいいですか?

朝起きてから、歩行・呼吸・咀嚼(そしゃく)のリズム運動を行いましょう。

太陽の光を浴びること以外にも、セロトニンの分泌を増やす方法があります。それが、一定のリズムで行う「リズム運動」です。日常生活でできることでいえば、歩行・呼吸・咀嚼が当てはまります。いずれも、分泌を促すポイントは「集中して行うこと」です。また、セロトニンは睡眠中には分泌されず、朝起きることで分泌が始まります。そのため、朝に分泌を促す活動をすることを意識しましょう。

対策1【歩行のリズム運動】
朝、散歩をする

歩くことはセロトニンの分泌を増やすためには良い習慣です。朝日を浴びながらの散歩は、二重のセロトニン分泌効果が期待できます。比較的気温が低く、紫外線量が少ない早朝に、最低でも5分以上、30分程度を目安に行いましょう。事前に十分な水分補給をするなど熱中症に注意しながら、疲れない程度に行うことをおすすめします。疲れを感じるというのは、セロトニンの分泌が減ってきている合図と考えて良いでしょう。

散歩はできるだけ無心で行った方がセロトニンの分泌に良いため、人通りの多い場所ではなく、自然豊かな場所がおすすめです。

対策2【呼吸のリズム運動】
朝、声を出す

声を出すことは呼吸のリズム運動につながり、セロトニンの分泌を促進させます。良い例が、早朝に行うお坊さんの読経です。生活に取り入れやすいことでいえば、歌を歌ったり、本や新聞などを音読したりするのもその一つです。

朝、人とおしゃべりをすることもセロトニンの分泌を促進させます。

対策3【咀嚼のリズム運動】
朝食をしっかり噛んで食べる

朝食をしっかり噛んで食べることは、咀嚼のリズム運動につながります。また、ガムを噛むことも有効です。ガムを噛みながら試合をしているスポーツ選手をよく見かけますが、それも咀嚼のリズム運動がセロトニンの分泌を促し、緊張や不安を和らげるからです。

セロトニンの分泌を促すには、しっかり噛むことを意識しましょう。



セロトニンを減らしてしまうNG習慣はありますか?

スマートフォンやパソコンの長時間の使用は良くありません。

太陽の光を浴び、体を動かして汗を流すような生活であればセロトニンは問題なく分泌されます。しかし、スマートフォンやパソコンを長時間使う生活は、太陽の光を浴びにくく、運動不足にもなりやすくなります。セロトニンの分泌が促される生活からは程遠い状態になってしまうのです。



セロトニンの分泌以外にも、太陽の光を浴びるメリットはありますか?

太陽の光には、体内時計をリセットする働きもあります。

朝日を浴びることは体内時計をリセットする意味でも重要です。体内時計が狂うと時差ぼけのような状態になり、集中力低下やイライラなどを引き起こすこともあります。夏は日が昇る時間が朝4~5時台と早いので、起床時間も早めにすると良いでしょう。早起きをしたことで日中眠くなってしまうようなら、昼寝をするようにします。ただし、30分以上眠ると、夜の睡眠に影響してしまうのでご注意ください。

朝日を浴びることで、元気な一日をスタートしましょう。



朝、すっきり目覚めるためにできることはありますか?

夜ぐっすりと眠るために、2つの脳内ホルモンを分泌させましょう。

夜ぐっすり眠っていれば、朝すっきりと目覚めることができるものです。夜ぐっすり眠るために有効な脳内ホルモンの分泌を促すと良いでしょう。

対策1
愛情ホルモン「オキシトシン」の分泌を促す

「オキシトシン」は、"愛情ホルモン"とも呼ばれており、親しい人との会話やマッサージなどでの触れ合い、ペットとたわむれるなどの心地よいと感じる行為によって分泌されます。オキシトシンが分泌されると、ストレスホルモンが減少し、セロトニンの分泌を促すことにもつながります。また、睡眠の質を良くする作用もあります。

オキシトシンの分泌を促すため、夜は家族やペットと触れ合うなどのリラックスタイムを設けましょう。

対策2
睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を促す

太陽が沈むと分泌が始まり、脳や体をリラックスモードに切り替えて心地よい睡眠へ誘導するのが、睡眠ホルモン「メラトニン」です。分泌のピークは夜中の12時といわれているため、それまでに就寝をすることをおすすめします。

スマートフォンやパソコンのブルーライトはメラトニンの分泌を妨げるため、夜は使用を控えましょう。寝室にはスマートフォンは持ち込まないように習慣づけるのも良いですね。

まとめ


日照時間が長い夏は、ポジティブな気持ちになり、新しいことにチャレンジしたくなる季節です。太陽の光の恩恵を存分に受けるためにも、朝の過ごし方を意識して、すっきり爽快な毎日を送りましょう。


今月の監修者有田 秀穂(ありた ひでほ) 先生 医学博士/東邦大学医学部名誉教授。「セロトニン」研究の第一人者。『ストレス脳が幸せ脳に変わる朝5分の習慣 脳科学からみた本当の幸せを手に入れる方法』(日本文芸社)、『自律神経をリセットする太陽の浴び方 幸せホルモン、セロトニンと日光浴で健康に』(山と渓谷社)など著書多数。

イラスト:本田佳世

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