
夏なのに冷えてしまうのは、なぜ?
薄着で出かけて冷房にさらされたり、冷たい飲食物ばかりを摂りがちな夏。気温が高い季節であっても、「冷え」を感じる方は多いようです。そんな「夏冷え」の原因や対策についてご紹介します。
冷房がきいた室内で感じる夏の冷え。対策をしないでいると、胃腸の不調や疲れやすさなどにつながりかねません。そこで今回は、冷えについての著書も多い医学博士の福田千晶先生に、夏冷えの原因や対策などについてお聞きしました。
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「夏なのに冷えてしまうのは、なぜ?」Q&A
夏なのに冷えてしまうのは、なぜでしょうか?
冷房は想像以上に体を冷やしているから。特に、筋肉量が減っている方は要注意です。
暑い夏、炎天下で汗をかいた後、涼しい屋内に入るとその瞬間は気持ち良く感じますが、汗で濡れた肌や衣服が冷房で冷やされ、寒いと感じることがあると思います。うっかり上着を持たずに出かけてしまい、衣服で調節ができないと夏でも冷えを感じやすくなります。
さらに、夏冷えの根本的な原因として考えられるのは、実は筋肉量の減少なのです。筋肉は体内で最も多く熱を作る場所ですが、一般的に年齢を重ねると減少します。日頃から運動する習慣がない方や、座っている時間が長い方は、筋肉量が減少しやすく、夏冷えを起こしやすいといえます。
夏冷えを放っておくとどんなリスクがありますか?
自律神経の乱れや胃腸の不調を感じ、秋まで症状が続くこともあります。
冷房がガンガンにきいている場所で寒さを感じていても、「少しの間だから我慢すれば良い」と思って対策をおろそかにしていませんか? そのままでいると、自律神経が乱れたり、胃腸の調子が悪くなったり、腰痛や肩こり、関節痛、疲れやすさが生じたりと、さまざまな不調を起こしやすくなります。そして、その影響は夏だけでなく秋まで続いてしまう可能性があります。
夏冷えを起こしやすいNG習慣とはなんでしょうか?
ついうっかりしてしまう夏の習慣が冷えにつながります。
✓外出時に上着を持参しない
夏は、屋外では快適に感じる服装でも、冷房がきいた電車内や室内では寒いと感じる場面が多くなります。カーディガンなどの羽織れるものを準備しておき、こまめに脱ぎ着して体が冷えないようにしましょう。ちなみに、自分の手で腕などを触ってみて、「手の温かさが気持ちいいな」と感じたら冷えている証です。
✓冷たい飲食物ばかり摂る
暑い外出先から、家に帰ってきたりカフェなどに入ったりすると、暑さから冷たいものが飲みたくなります。たしかに、汗をたくさんかいた後などで体が熱くなっているときは、冷たいものを摂取したほうが効率良く体を冷やすことができます。問題なのは、冷房のきいた室内で長い時間、涼しく過ごしているにもかかわらず、冷たい飲食物ばかりを摂ることです。アイスクリームなどの冷菓が好きという方以外にも、冷奴やサラダ、冷製スープなどの冷やした料理を好む方も、夏冷えを起こしやすいです。
✓家で、素足で過ごしている
夏、自宅にいるときは、一日中素足で過ごすという方も多いと思います。血液は心臓から全身をめぐりますが、足で血液が冷やされると全身が冷えてしまうため、特にフローリングの床は要注意です。室内でも、靴下やスリッパを履くようにしましょう。サンダルを履いて外出するときも、素足ではなく、できればストッキングを着用すると良いでしょう。
冷えにくい体づくりのための良い対策を教えてください。
運動で筋肉量を増やし、食事や服装選びを工夫しましょう。
対策1
運動習慣を身につける
筋肉量を増やすためにも、運動習慣を身につけることが大切です。アウトドア派ならできるだけ涼しい時間帯に外に出てウォーキング、インドア派なら室内で動画を見ながらダンスやエクササイズなどを行うと良いでしょう。自分が楽しいと感じるもので、汗ばむぐらいの運動を目安にしましょう。
紫外線や熱中症が気になる夏は、室内での運動もおすすめです。
対策2
あたたかい飲食物を摂る
夏場の食事は栄養のバランスとともに、温度のバランスも考えるべきです。暑い日が続くとつい冷たい飲食物を摂りがちですが、食事の際は湯気が出るぐらいのあたたかいものを1品でも取り入れるようにしましょう。また、例えばコーヒーを飲む場合、夏の間は無意識のうちにアイスコーヒーを選んでしまいがちですが、「いまの自分は本当に冷たいものがほしいのか?」を問いかけてみてください。
冷たいものを食べるときには、例えばアイスクリームとホットティーのように、温かい飲み物を添えるなどの工夫をしましょう。
対策3
冷えやすい部位を衣類で温める
衣類は、汗を吸ってもすぐ乾く素材を選ぶと良いでしょう。さらに、首・二の腕の後ろ・ひざの後ろは体の中でも特に熱が逃げやすい場所です。冷房のきいた室内では、この3ヵ所をできるだけ覆って冷えないようにしましょう。
外出の際、薄くて邪魔にならないストールを1枚持って行くのもおすすめです。
体を温めるメリットはなんですか?
心身をリラックスさせ、健康状態を整えます。
体を温めることは、冷えの防止以外にも、心身をリラックスした状態に導くことにつながり、自律神経の働きも整いやすくなります。また、血行が良くなり、全身に酸素と栄養が十分に届き、健康状態を整えてくれます。この時季はシャワーだけで済ませがちですが、お湯につかって体を積極的に温めましょう。なお、治療中の病気がある方は、運動や入浴などについて医師に相談の上、行ってください。
お風呂の温度は40度ぐらいで、冷たいと感じる体の部位が温まったと感じるまでお湯につかることをおすすめします。
まとめ
冷えというと寒い冬に悩まされるイメージが強いですが、夏は冷房による冷えが起こりやすい時季です。衣類や食事を工夫して夏冷えを防ぎ、運動や入浴など体を温める習慣で健康的な毎日を送りましょう。
イラスト:本田佳世