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足のむずむず症状に悩まされ、夜ぐっすり眠れず、日中に眠気に襲われてつらいと感じることもある「むずむず脚症候群」。専門医の井上雄一先生に、病気の原因や対策などについてお聞きしました。

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「足がむずむずして眠れないのは、なぜ?」Q&A


「むずむず脚症候群」とはどんな病気ですか?

主に夕方から夜に、脚に不快な症状が起こり、眠れなくなる病気です。

むずむず脚症候群は、脚の深部で生じるむずむずやかゆみなどの不快な症状が、主に夕方から夜にひどくなる病気です。いつの間にか症状が治まる方もいますが、症状を繰り返す方も多く、不快感で眠れず睡眠不足となり翌日の日中に眠気に襲われるなど、生活に支障が出る場合もあります。患者数は60〜70代が最も多く、女性は男性の1.4倍にも上るといわれています。

むずむず脚症候群は、朝に症状を感じることは少なく、夕方から夜にかけて脚に不快感が生じやすいという特徴があります。



「むずむず脚症候群」の原因を教えてください。

原因はさまざまですが、鉄分不足や持病、遺伝などが考えられます。

原因は、鉄分不足とドーパミンの機能障害が考えられます。ドーパミンは脳内で分泌される神経伝達物質の一つですが、そのドーパミンを生成しているのが鉄分です。ドーパミンがうまく機能しないと脳から脊髄までの神経調節が正しく行われないため、正常なら感じることのない痛み・かゆみを脳が敏感に受け止めてしまい、不快な症状を感じやすくなるのです。また、腎不全やパーキンソン病などの持病によって症状が出るケースもあります。腎不全で透析を行っている患者さんの約3割、パーキンソン病の患者さんの約1割が、むずむず脚症候群を引き起こしているといわれています。さらに、遺伝も関係しているとされており、親がむずむず脚症候群に悩んでいたという方はなりやすいといえます。

ドーパミンという脳の神経伝達物質に不具合があると、脊髄から脳までの神経調節が正しく働かず、むずむず症状を感じて脚を動かさずにいられなくなってしまいます。



どんな状態になったら医療機関にかかるのが良いでしょうか?

日常生活に影響が出たら、睡眠障害専門の医療機関を受診しましょう。

夜眠れなくてつらい、むずむず症状が日中にも起きてしまうなど、日常生活に影響が出るようでしたら、医療機関に相談しましょう。むずむず脚症候群の主な症状は「不眠」なので、睡眠障害を専門とする睡眠専門医がいる医療機関を受診してください。睡眠専門医がいる医療機関は、日本睡眠学会のホームページで確認できます。

受診時には、いつ・どんな不快感があるのか、脚のどの部位に症状が起こるか、睡眠の状況はどうかなどを医師に伝えましょう。



「むずむず脚症候群」以外にも、脚のむずむず症状を感じる原因はありますか?

似た症状でも、ほかの病気が隠れている場合があります。

ほかの病気が原因で、脚の不快感が生じている可能性があります。たとえば、動くと症状が軽くなるむずむず脚症候群とは違い、こむら返りや下肢の血管障害は"動くとつらい"と感じることの多い病気です。それぞれ対策が異なりますので、まずは睡眠専門医に相談をすると良いでしょう。



日常生活でできる「むずむず脚症候群」のセルフケアを教えてください。

食生活の改善や脚のマッサージなどが有効です。

気になる症状がある場合は、医師の診断とアドバイスに従いながら、次のようなセルフケアを実践してみると良いでしょう。

対策1
鉄分不足を防ぐ

むずむず脚症候群のセルフケアで最も大切なことは、鉄分不足を防ぐことです。食生活が偏りがちだったり、ダイエットをしていたりすると、鉄分不足になりやすくなります。心当たりがある方や、貧血などの症状があり、鉄分不足を自覚している方は、鉄分の多い食事を摂りましょう。サプリメントなどで積極的におぎなうこともおすすめです。

鉄分を多く含む食品としては、レバーや卵黄、煮干し、海藻類などがあります。日頃の食生活にひじき煮やレバニラ炒めなどのメニューを取り入れましょう。

対策2
カフェイン・アルコールを控える

むずむず脚症候群の方は、熟睡できず日中に眠気を感じやすいため、眠気覚ましにコーヒーを飲むという方も多いでしょう。また、寝つきを良くするために、就寝前に寝酒をする方もいるかもしれません。カフェインやアルコールを摂取した日の夜に症状を感じる場合は、夕方以降は摂取を控えると良いでしょう。

むずむず症状が起こりやすい夜に影響が出ないよう、カフェインが多く含まれるコーヒーや紅茶などの飲み物は夕方以降、避けるように心がけましょう。

対策3
脚を動かす・冷やす

むずむず脚症候群の症状は、じっとしているよりも、動いている方が楽になる傾向があります。症状を感じたら、ベッドから出て歩く、脚をマッサージするなどの対策を行うことをおすすめします。また、脚があたたかくなると症状が重くなりやすいという方は、入浴時に浴槽から出た後、冷たいシャワーを脚に当てて冷やすとよく眠れる場合が多いようです。

むずむず症状を感じる部位は太ももやふくらはぎ、足首などと人によってそれぞれです。症状を感じる部位を中心にマッサージを行いましょう。

対策4
症状から意識をそらす

何か別のことに集中すると症状に意識が向きにくくなります。症状が出やすい夜は読書や映画鑑賞、ゲームなど好きなことに熱中する時間を作ることをおすすめします。ただし、激しい動きを伴う筋力を使う運動は症状を悪化させる可能性があるので避けた方が良いでしょう。

読書などに熱中していると、知らず知らずのうちにむずむず症状から意識をそらすことができます。

まとめ


一日の疲れをリフレッシュするはずの睡眠が、むずむず症状で妨げられてしまうのは残念なことです。ぐっすり眠れるようになれば、翌日もハツラツと元気に過ごせるはず。日常生活でできるセルフケアも取り入れながら、イキイキとした毎日を目指しましょう。


今月の監修者井上 雄一(いのうえ ゆういち) 先生 医師/医療法人社団絹和会理事長。東京医科大学睡眠学講座教授。アジア睡眠医学会 理事長。専門は睡眠学で、『名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全』(講談社)など睡眠に関する著書多数。

イラスト:本田佳世

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