
年々、声がかれることが多くなるのは、なぜ?
年々、声がかれることが多くなったり、カラオケで高音が出にくくなったと感じている方が多いようです。いつまでもハリやツヤのある、若々しい声を保ちたいもの。今回は、お客様から知りたいという要望が多かった「声」の悩みに迫ります。
人と楽しく話したり、気持ち良く歌ったりできるのは、声帯が健康である証拠です。特に、声帯のまわりにある筋肉「声筋(こえきん)」の状態が重要になります。そこで、音声を専門とする耳鼻咽喉科医・渡邊雄介先生に声筋についてお聞きしました。
INDEX
「年々、声がかれることが多くなるのは、なぜ?」Q&A
年々、声がかれることが多くなるのは、なぜですか?
声帯のまわりの筋肉「声筋」の衰えが一因です。
声を出すためには、「声筋」と呼んでいる、喉の声帯のまわりの筋肉がきちんと動く必要があります。しかし、ほかの筋肉と同様に20~30代をピークに筋力が徐々に低下し、声帯がきちんと閉じなくなります。そのため、年々うまく声が出せなくなる、声がかれる、食事中にむせるなどの不調が起こります。
声帯は女性で1cm、男性で1.5cm程度の長さのとても小さい器官ですが、声筋はその左右にある筋肉で、声帯を動かすために働いています。
声帯は粘膜の一種です。加齢により乾燥すれば、カサカサとした声になります。さらに、女性は更年期以降、女性ホルモンの分泌が減少することで声がかれたり、高い声が出にくくなったりします。また、声帯にポリープや炎症などがあると、声帯がうまく閉じられないため、声の不調が起こることがあります。不調が続いた場合は医療機関を受診しましょう。
声筋が衰えると、どんなリスクがありますか?
食事中にむせたり、体に力が入りにくくなります。
リスク1
思いどおり声が出ない
声筋が衰えると、声帯がぴったりと閉じにくくなり、発声に影響が出ます。例えば、声がかすれる、発声しにくい、高い声が出にくくなるといった不調があらわれます。
リスク2
食べ物をうまく飲み込めなくなる
声筋が衰えると声帯がうまく閉じられず、食べ物が食道ではなく声帯の下にある気管から肺に入りやすくなり、「誤嚥(ごえん)性肺炎」を起こすリスクが高まります。食事中にむせる、咳が出るということが頻繁に起きる方は要注意です。
リスク3
体に力が入らなくなる
声筋には、体を安定させる働きもあります。重いものを持つときに「よいしょ」と言うことがありますよね? これは、声を出すことで喉の筋肉に力が入り、体にも力が入るためです。声筋が衰えれば踏ん張る力が落ち、ペットボトルのふたが開けられない、段差のない場所でよろめく、お通じが滞るなどの不調が生じることがあります。
声筋を衰えさせるNG習慣にはどんなものがありますか?
喉の乾燥や、食生活などに注意しましょう。
次にご紹介する生活習慣のうち、1つでも当てはまることがあれば、声筋が衰えやすいといえます。これらの習慣を見直して、若々しい声を維持していきましょう。
NG習慣1
✓あまり水分を摂らない
NG習慣2
✓長時間、話をする機会が多い
話しすぎると喉が痛くなることがありますが、それは喉が乾燥するからです。話しすぎたときはもちろん、普段から水分を補給することが大切です。
NG習慣3
✓甘いものや脂っこい食事が好き
甘いものなどの食べすぎは胃酸の逆流を招きます。胃酸は強い酸性のため、声帯を炎症させてしまい、声がかれることもあります。
NG習慣4
✓アルコール度数の高いお酒が好き
アルコール度数の高いお酒はたんぱく質を硬くする作用があるため、飲酒により喉を硬くして機能低下を起こします。
NG習慣5
✓喫煙習慣がある(電子タバコも含む)
喫煙は喉に温度が比較的高い煙を通すため、声筋が低温やけどのような状態になり、声質がスモーキーになることもあります。
声筋の衰えを確認する方法を教えてください。
一息で声を出し続けられる秒数が、15秒以下なら要注意です。
声筋が衰えているかどうかを見極めるためには、深く息を吸った後に息つぎをせずに「あー」と声を出し続けられる秒数を確認する「あーテスト」を試してみると良いでしょう。15秒以下しか声が続かなかったり、かすれてしまったりするなら、声筋が衰えている可能性が高いといえます。成人女性の場合は20秒、成人男性の場合は30秒が正常値です。
もし10秒以下なら、なにかしらの病気が隠れている可能性があるため、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
声筋を鍛える方法にはどんなものがありますか?
道具も使わず、とても簡単にできる発声法があります。
方法1
声筋全体を鍛える発声法「の⤴の⤵発声法」
①ストローを吸うときのように口を小さくすぼめて、「のー⤴」と低い音から高い音へ、音程を変えながら発声します。声が途切れないように注意します。
②高い音から続けて「のー⤵」と低い音に向かって発声します。
※10回1セット、朝昼晩を目安に1日3セット行いましょう。
方法2
声筋の緊張を高めて鍛える発声法「イエィ・プッシング法」
①胸の前で左右の手のひらを合わせて、押し合いながら「A(エィー)」と発声します。
②同様に「B(ビィー)」と発声します。
③同様に「C(シィー)」と発声します。
※10回1セット、朝昼晩を目安に1日3セット行いましょう。
方法3
お風呂で毎回同じ曲を最後まで歌う
お風呂で毎回同じ曲を最後まで歌うこともおすすめです。喉が十分にうるおった状態になるため、声筋にとって理想的な環境です。また、同じ曲であれば「このフレーズは一息で歌えるようになった」など、声筋の変化に気づきやすくなります。
まとめ
トレーニングをしないと足腰の筋力が衰えるように、声筋も鍛えなければ衰えてしまいます。いつまでも、ハリとツヤのある声を出すために、声筋の筋力アップを目指しましょう。
イラスト:本田佳世