
年々、爪が割れやすくなるのは、なぜ?
最近、昔よりも爪が割れやすい、欠けやすいと感じていませんか? 年齢を重ねると、爪は脆(もろ)くなったり、縦ジワが生じるようになります。肌や髪と同様、爪もケアが大切。今回は、手の爪の適切なケアについて、皮膚科専門医の豊田先生に伺いました。
爪は乾燥や栄養不足による影響でさまざまなダメージを受けます。それなのに、ケアはおろそかになりがちです。そこで、爪の健康について詳しい皮膚科専門医の豊田雅彦先生に手の爪のケアについて解説していただきます。
INDEX
「年々、爪が割れやすくなるのは、なぜ?」Q&A
年々、爪が割れやすくなるのは、なぜですか?
爪の乾燥や栄養不足で、爪の健康が失われるからです。
原因①
爪の乾燥
爪はうるおいを保つ皮脂膜が少なく、乾燥しやすい部位です。加齢に伴い、爪の中の水分量が低下するため、肌や髪に行うように爪にも保湿が必要です。外気の乾燥はもちろん、エアコンによる室内の乾燥で、爪は一年中うるおい不足です。さらに、更年期以降はうるおいを保つ女性ホルモンが減少し、より乾燥しやすくなります。
原因②
栄養不足
食が細くなると、血液を作る材料が減って血流が悪化し、爪を作る爪母(そうぼ)に栄養が届かず、爪が脆(もろ)くなります。また、年々消化機能が低下していくことで、爪を作るために必要な栄養がうまく吸収されず、健康な爪が育ちにくくなる場合もあります。
爪は三層構造をしています。乾燥や栄養不足でこの構造がくずれると、爪がはがれたり、二枚爪になりやすくなります。さらに、加齢により爪が脆(もろ)くなると、ぶつけたり、爪を切ったりする衝撃でダメージを受けやすくなってしまうのです。
爪に縦ジワができるのは病気のサインですか?
加齢に伴うものです。保湿などのケアである程度目立たなくできます。
爪の縦ジワは病気のサインではなく、加齢によるもの。爪甲(そうこう)の下にある爪床(そうしょう)のシワが深まり、目立つようになるためです。爪のシワも、保湿などのケアである程度目立たなくすることは可能です。
爪の正しい保湿ケアの方法を教えてください。
肌と同じように化粧水をつけましょう。
爪も肌と同じように保湿が大切です。朝晩など、顔のスキンケアをするタイミングで、爪にも化粧水を塗り込むと良いでしょう。冬場はお出かけの際にハンドクリームを持ち歩く方も多いと思いますが、クリームよりも化粧水で保湿することをおすすめします。自宅で肌に使っている化粧水などを小さな容器に入れて持ち歩き、乾燥が気になるときにつけましょう。その上からハンドクリームを塗ると、より保湿効果が期待できます。
爪の健康のために良い栄養素はなんですか?
爪を作るたんぱく質や亜鉛などです。
爪を作るケラチンの主成分であるたんぱく質や、爪を作るために欠かせない亜鉛の摂取がおすすめです。また、爪の生成を促し、爪の血色を良くする鉄も大切です。玄米やじゃがいもなどに豊富に含まれているケイ素は、爪にうるおいを与える働きがあります。食事で不足しがちなときは、サプリメントでおぎなうのも良い方法です。ちなみに、爪がカルシウムでできているというのは間違い。カルシウムを摂取しても爪は丈夫になりません。
正しい爪の切り方を教えてください。
月1~2回、やすりも使ってお手入れを。
手の爪は1日約0.1mm伸びるとされ、個人差はありますが、約150日で生まれ変わると想定されています。そのスピードを考えると、爪切りは月に1~2回で十分です。切るタイミングは爪に水分があり、ふやけて切りやすい入浴直後がおすすめ。爪先をまっすぐ切った後、角のとがっている部分をやすりで丸く整えましょう。爪切りの裏のやすりで構いません。角をカットするバイアス切りは爪トラブルの原因となります。
爪の最適な長さ
指先と爪先が揃うか、爪先の方が少し長くなるように切りましょう。
爪の最適な形
バイアス切りや深爪はNGです。
なお、100円ショップなどの安価な爪切りは、爪に負担を掛けるのでおすすめできません。私は爪の健康のために、刃物で有名な新潟県三条市産の爪切りを愛用しています。切れ味が良く、刃の力だけできれいに爪を切ることができます。
ネイルは爪の健康に悪いのでしょうか?
爪を乾燥させたり、負担を掛ける場合があります。
ネイルカラーを頻繁にしていると爪の水分量が低下し、爪に負担を掛けます。これは、ネイルを落とす除光液に、爪の水分量を奪う性質があるためです。また、ネイルサロンなどで施術される「ジェルネイル」で使われるアルコール成分やライトも爪を乾燥させ、爪トラブルをまねきかねません。先述したとおり、手の爪は約150日で生まれ変わるため、爪が割れているなどの不調がある場合は半年ぐらいネイルカラーやジェルネイルは休みましょう。
ネイルは健康な爪の人がおしゃれのために行うのであれば良いのですが、爪の縦ジワを隠すためや、爪の割れやすさをカバーするためなどの動機であれば避けた方が良いでしょう。
手を洗うとき、家事をしているときなど、手の爪は目に付きやすく、ダメージがあると気になるものです。これからはスキンケアやヘアケアのように、爪のケアにも力を入れていきましょう。
イラスト:本田佳世