知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

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拡張した静脈の血管壁(へき)が元に戻りにくくなるからです。

手の甲に浮き出る血管は静脈です。静脈は、血液を貯留して体内の血流量を調整する役割があり、血管を膨らませて多くの血液を溜められるように、血管壁が薄く、やわらかく、伸縮性に富んでいます。年々、手の甲に血管が浮き出てくる主な原因は、年齢とともに静脈の血管壁を成す平滑筋(へいかつきん)の縮む力が弱まり、血液が滞ると、血管が拡張したまま、伸びきったゴムのように元に戻りにくくなるからです。さらに、手の甲の皮膚が薄くなる菲薄化(ひはくか)や皮膚の弾力性の低下、極端な皮下脂肪の減少など、血管を支える周辺環境の変化が影響し、より静脈が目立つようになります。手の静脈は、血液の逆流を防ぐ血管内の弁が壊れにくく、病的な症状を引き起こすケースは極めてまれです。手の甲の血管が浮き出る症状の大半は生理現象なので心配ありませんが、ストレスを感じたら、ハンドベイン治療を行う血管外科にご相談ください。



阿保先生にお聞きしました!

手の甲に浮き出る血管に関するあれこれ


手の血管が浮き出やすい人の特徴はありますか?
紫外線を浴びる機会が多い方は注意が必要です。

年齢を重ねるにつれ、慢性的な紫外線によるダメージが蓄積して光老化が進み、皮膚が薄くなる傾向があります。その他、下のチェックリストの❶❷に当てはまる方は、肌の弾力が低下している可能性がありますので、手の血管も浮き出やすくなります。また、浅い呼吸は静脈血の流れを悪化させ、血管の拡張にもつながります。肺での深い呼吸が、心臓へのスムーズな血液の引き上げを促すため、深呼吸が大切です。

手の血管が浮き出やすいのはどんな人?

セルフチェックで当てはまる項目が多いほど、年々、手の甲の血管が浮き出やすい傾向があります。

✓ 紫外線を浴びる機会が多い


✓ 手がカサついている...❶


✓ 手の甲の皮膚をつまむと薄く伸びる...❷


✓ 呼吸が浅い


✓ 力仕事をすることが多い


✓ 水分をあまり摂らない



手の甲に生じる血管の浮きの予防・改善が期待できるセルフケアを教えてください。
私が考案した「ひじ上げ呼吸法」がおすすめです。

ひじ上げ呼吸法は、胸式呼吸と腹式呼吸の良さを活かした、静脈血の流れを促すエクササイズ。実際にこれを10回行った後に検査をすると、静脈が1mm以上細くなることが実証されています。
1.背すじを伸ばし、鼻から深く息を吸い込みながら、両ひじを開くとともに手を耳までゆっくりと上げて胸を大きく広げます。
2.おなかをへこませながら、空気を出し切るように口からフーッと息を吐き、両ひじをゆっくり下げて手を前に伸ばします。

息を大きく吸いながら肩の力を抜いてひじを上げる

*1セット10回を毎日継続することがおすすめです。



若々しい血管年齢を保つための食事について教えてください。
5大栄養素を基本に、ルチン、ビタミンB群・Dを含む食材を取り入れましょう。

5大栄養素をバランス良く摂ったうえで、血管をすこやかに保つ栄養素を不足させない食事が理想です。血管壁を丈夫にするルチンは、そばやアスパラガス、ブロッコリー、トマトに含まれます。肉や魚、卵、乳製品に代表されるビタミンB群は、血管細胞の再生を促進。血管壁の平滑筋の収縮にかかわるビタミンDは、イワシやサンマ、サケに豊富です。また、脱水により血液粘度が上がると血管に負荷が掛かるため、こまめな水分補給も重要です。



コラム

医師が教える
静脈が浮き出るメカニズム

皮膚の弾力や構造を支えるのは、真皮の中にあるコラーゲンとエラスチンですが、年齢、紫外線、乾燥などの影響でだんだんと減っていきます。表皮・真皮の構造がくずれてしまうと、真皮の下を通る血管の拡張を外側から抑え切れなくなります。年々、表皮も薄くなりますので、さらに静脈が目立つようになるのです。


*イラストはイメージです



今月の監修者阿保 義久(あぼ よしひさ)先生 外科専門医・脈管専門医/北青山D.CLINIC 院長。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院第一外科勤務を経て、2000年に北青山Dクリニックを開院。これまで、ハンドベインを含む約42,000件超の日帰り手術を担当し、「医療にイノベーションを」を理念に、再生医療や予防医療にも注力している。

イラスト:本田佳世

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