
汗をかくとかゆくなってなかなか治らないのは、なぜ?
若い頃はなかった、汗をかいた後の皮膚の赤みやかゆみ、チクチク感。それらが長引く場合は「あせも」ではなく、加齢に伴って生じる別の症状かもしれません。汗のトラブルに詳しい皮膚科医の山田貴博先生に、症状や原因を伺いました。
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あせもによく似た「汗かぶれ」による症状かもしれません。
あせもとは、汗をたくさんかいたときに汗の通り道である汗管(かんかん)が詰まること(汗詰まり)で皮膚に炎症が起こり、赤い発疹が生じる症状です。かゆいからと、かきむしってしまうと悪化しかねませんが、あせもの場合は肌を清潔にしていれば1~2日程度で改善します。もし症状が長く続く場合は、汗かぶれである可能性が高いでしょう。
汗かぶれとは、汗の中に含まれるアンモニアや塩分などの成分が、皮膚の中にしみ込むことで起きる炎症です。健康な皮膚であれば、アンモニアなどの成分が刺激になることはありません。しかし、乾燥などの肌トラブルや加齢によって皮膚のバリア機能が低下していると、汗に含まれる成分を異物であると認識してしまい、胸のまわりなどの汗蒸れしやすい部位に赤みやかゆみが生じてしまうのです。

山田先生にお聞きしました!
汗のトラブルに関するあれこれ
汗かぶれが生じやすい部位はどこですか?
蒸れやすく、こすれやすい部位は要注意。
ワキや、ひじやひざの裏側は、汗が溜まって蒸れやすいうえに皮膚同士がこすれやすいため、汗かぶれに注意しましょう。ブラジャーのワイヤーが当たる胸の下や、ズボンのベルトが当たる下腹部など、衣服によるしめ付けで肌がこすれてしまう部位も、汗かぶれが生じやすくなります。下着は、しめ付けや縫い目が少ないタイプにかえることをおすすめします。
また、肌の表面がザラザラとしている部位は、皮膚のバリア機能が低下している状態である可能性が高いため、汗かぶれが起こりやすいといえます。皮膚の摩擦を防ぐとともに、化粧液やクリームなどで積極的に保湿をすると良いでしょう。
汗かぶれは、どんな対策をしたら良いですか?
皮膚科の受診をおすすめします。
汗かぶれは、あせものように皮膚を清潔にしただけでは、症状は良くなりません。炎症範囲が広がったり、かきむしることで悪化する前に適切なケアを行うことが肝心です。
できれば、すぐに皮膚科を受診していただくのが良いのですが、受診の時間がとれない場合は、1日1~2回、肌が清潔なタイミングでドラッグストアでも手に入る汗かぶれ対策用の薬を塗りましょう。
塗り薬の分量の目安
汗のトラブルを防ぐためにはどんなケアをしたら良いですか?
汗をかいたら拭き取る習慣をつけましょう。
屋外から冷房の効いた屋内に入ると、涼しくなって汗が引くことも多いですが、皮膚の表面にアンモニアなどの成分が残ったままになっている可能性があります。これが汗かぶれの原因になりますので、汗をかいたらタオルなどですぐ拭き取り、帰宅後には濡れたタオルなどできちんと拭き取りましょう。
なお、赤みやかゆみが改善しても肌のバリア機能が整っていなければ再発しかねません。体を洗う際は肌にやさしいスポンジを使い、泡で洗うイメージで。入浴後は顔だけでなく体も保湿をしましょう。日頃のスキンケアが汗トラブルの予防につながります。
コラム
汗かぶれを起こしやすい汗の種類とは?
汗かぶれの原因であるアンモニアなどの成分を含む汗はベタベタしている傾向にあります。汗かぶれを防ぐにはサラサラとした気持ち良い汗をかけるようになることが大切です。普段から運動する習慣を身につけて汗腺機能を鍛えていきましょう。

イラスト:本田佳世