口の渇きを感じたり、口の中がネバネバするのは、なぜ?
生理現象だと思っていた口の渇き。頻度が高く、つらいと感じる場合は「ドライマウス」という症状かもしれません。ドライマウス外来で診療を行う阪井先生にその原因や対策を伺いました。
INDEX
ストレスや血流の低下などで唾液が減少するから。
寝起きや、緊張したときなどに一時的に生じる口の渇きではなく、食事や会話中などときを選ばず、口の中の乾燥が気になる状態が長く続く症状を「ドライマウス」といいます。加齢による血流や口のまわりの筋力の低下、ストレスや薬の副作用などの影響で、唾液の分泌量が減少することが原因で起こる症状です。一般的には、口の中で1日に1~1.5ℓの唾液が分泌されますが、ドライマウスになると分泌量がその半分以下になります。
ドライマウスは仕事や人間関係などでストレスを抱え、運動不足による血流低下が起こりやすい30代以降の女性に多く見られます。特に60代以降は普段飲んでいる薬の副作用や咀嚼(そしゃく)力の低下の影響も受けるため、口の渇きに悩む女性が増えます。
コラム
唾液の6つの働きとは?
食べる・飲む・話すなどに不可欠な唾液には、以下の役割があります。
❶ 細菌の増殖を抑える抗菌作用
❷ でんぷんを糖に変える消化作用
❸ 口の中の傷を防ぐ粘膜保護作用
❹ 口の中の傷の修復作用
❺ 食べ物をまとめる食塊※形成作用
❻ 胃酸の中和作用
※食塊(しょっかい)=食べ物が口の中で唾液と混ざり、飲み込みやすい状態になったもの
阪井先生にお聞きしました!
ドライマウスに関するあれこれ
ドライマウスになるとどんな症状が起こりますか?
口の不快感だけでなく、口臭や口角炎などが生じることも。
口の渇きが気になって会話や食事を楽しめなくなってきたら、ドライマウスになっている可能性があります。下のチェックリストに該当する症状がないか確認してみましょう。
口の乾燥は不快感があるだけでなく、体にさまざまな影響を及ぼします。唾液の働きの1つである「抗菌作用」がうまく機能せず、口の中の雑菌が増えやすくなり、口臭が生じやすくなります。また、唾液量が減ると「粘膜保護作用」や「傷の修復作用」にも影響が生じ、口角炎も起こりやすくなります。
ドライマウスのセルフチェック
当てはまるものが1つでもあれば、ドライマウスの可能性があります。
✓ 人との会話中に、口が渇いて話しにくいと感じることがある
✓ 食べ物が飲み込みにくく、食事のときは飲み物が欠かせない
✓ 口臭を指摘されたことがある
✓ 夜間、水を飲むために起きることがある
✓ 舌や口の粘膜がひび割れやすい
✓ 口角炎を起こしやすい
ドライマウスの症状を放置するとどんなリスクがありますか?
虫歯や歯周病が生じ、免疫機能が低下する恐れがあります。
ドライマウスになると、抗菌作用が下がって口の中の雑菌が増えやすくなり、虫歯や歯周病になりやすくなります。そのまま放置せず、歯科医院で適切な治療を受けましょう。
また、唾液の分泌量が減って抗菌作用が低下すると、風邪などの感染症にかかりやすくなることもあります。加齢に伴い、抵抗力が下がっている場合は、さまざまな健康上のリスクもあるので注意が必要です。ドライマウスが疑われる症状が長く続く場合は、ドライマウス外来がある医療機関を受診しましょう。

ドライマウスの予防法やなったときの対策を教えてください。
口腔内の保湿や唾液腺マッサージが有効です。
予防するには、唾液の分泌を促すことが大切です。口やあごのまわりにある唾液腺を刺激するマッサージや舌のトレーニングがおすすめ。口の乾燥をすぐケアしたいなら、口腔用スプレーやジェルタイプの保湿剤を使用するのも良いでしょう。また、ドライマウスの原因が薬の副作用にある場合は、症状を改善するために主治医と相談してみてください。
唾液腺マッサージ・トレーニングの例
● 耳下腺(じかせん)マッサージ
左右の耳の前にある「耳下腺」を刺激するマッサージです。左右の手を耳たぶの前あたりに当てて、5~10回、後ろから前に向かって円を描くように動かしましょう。

● 舌ホッピング
舌の筋力を鍛えるトレーニングです。舌を上あごにのせた後、「ぽんっ!」と音が鳴るように舌をはじいて動かします。1日5~10回を目安に行いましょう。
イラスト:本田佳世



