知ってて良かった!健康への第一歩 ヘルスケア

加齢で聴力は低下します。まずは自身の聴力把握を。

一般的に、加齢による聞こえにくさを自覚するようになるのは、60代以降です。初めは高い音から聞こえにくくなるため、体温計の通知音やスマートフォンの着信音、インターホンなどの電子音に気づかなかったということが、年齢を重ねるにつれて増えていきます。
実は、聴力は子どもの頃がピークで、聞こえの変化は20代から始まるもの。これは耳の組織の老化によるもので、聴力低下を防ぐことは困難です。気をつけたいのは、聴力低下を放置して難聴になること。難聴は、認知機能低下の大きなリスク要因であることがわかっています。聞こえ方に変化を感じたら、早めに医療機関で検査を行い、適切な治療を受けましょう。万が一、難聴と診断されても補聴器を適切に使うことで、脳の機能低下を防ぐことは可能です。




耳の健康に関するあれこれ


加齢によって聴力が低下する原因を教えてください。
蝸牛(かぎゅう)という耳の組織と、脳の機能の"老化"によって起こります。

そもそも音は、外耳(がいじ)にある耳介(じかい)で集められて、鼓膜から中耳(ちゅうじ)を通り、内耳(ないじ)の蝸牛という組織で電気信号に変換されて脳に伝わることで聞こえます。「音が聞こえにくい」と感じるのは、この過程になにかしらの問題が生じているということ。加齢によって聴力が低下するのは、その中でも大きく分けて2つの原因が考えられます。


1. 加齢による「蝸牛」の変化

蝸牛には、音を電気信号に変換して脳に伝える機能があります。加齢で蝸牛が変化すれば、音を電気に変える力が弱くなり、音が聞こえにくくなります。

2. 加齢による脳の機能の変化

耳の機能が低下すると、脳に伝わる音の刺激が少なくなり、使われる脳の部分が減っていきます。それに伴い、脳の機能が低下し、聞きとりづらさが増していきます。

●正常な聞こえのイメージ

耳介から入った音が内耳まで問題なく届き、蝸牛で正常に電気信号に変換。脳は耳から伝わる電気信号で常に活性化されています。

●加齢による難聴の聞こえのイメージ

加齢によって耳の機能低下が少しずつ進行。自分では気づかないうちに脳に伝わる音の刺激の少ない状態に慣れてしまい、脳があまり活性化されない状態になります。

難聴を悪化させる原因「動脈硬化」にも要注意!


難聴を悪化させる要因のひとつに「動脈硬化」があります。難聴の悪化を防ぐためには、塩分を控える、野菜や果物を積極的にとるなどの食生活の改善や、有酸素運動を行うなどの工夫で生活習慣病を予防することが大切です。



難聴が認知症やうつにつながりかねないのはなぜですか?
音や言葉の情報が入らなくなると脳の認知機能が低下。人とのコミュニケーションも希薄になり、うつにつながることも。

正常な聞こえの状態であれば、脳は音の刺激によって活性化されます。しかし、聞こえに変化が起こると、脳に届く音や言葉の情報が極端に少なくなり、脳は考えたり、感じたりする機会が少なくなります。脳の活動量が減ることで、徐々に認知機能が低下していくのです。
また、難聴が進行すれば、相手の話が聞きとりにくくなって聞き返すことが増え、話を理解しにくくなるため、人とのコミュニケーションが難しくなります。会話が弾まず、やがて周囲から孤立して、うつにつながってしまう方もいます。
特に、次に挙げた項目に当てはまる方は、難聴から認知症やうつにつながるリスクが高いといえますので、注意が必要です。


難聴リスク度チェック


✓ 相手の声が聞きとれず、大事な話についていけないことがある


✓ 車や自転車が近づいているのに気づかず、びっくりしたことがある


✓ 「テレビの音量が大きい」と家族に言われたことがある


✓ 徐々に会話が減り、家族関係が希薄になったと感じる


✓ 「どうせ聞こえない」と諦めて、多くのことに無関心になっている


✓ 会話ができないので外出がおっくうになっている

難聴から認知症やうつにつながるリスクを避けるためには、少しでも聞こえに不安を感じたら、早めに耳鼻咽喉科で検査を受けることが大切です。また、もし難聴と診断されたら、補聴器を検討することをおすすめします。
補聴器を使用したことで「聞こえているふりをしなくてすむようになり、後ろめたい気持ちがなくなった」「みんなの会話に気後れせずに加われるようになった」というお声もあります。


コラム

あまり知られていない補聴器の話

補聴器の使用にはトレーニングが必要で、メガネのようにすぐなじむものではありません。初めは不快感があり、使いこなせずに断念する方もいますが、約3ヵ月、専門の医師と調整を繰り返せば、聞こえの良さを実感できるはずです。



家族の聴力に不安を感じたとき、できることはありますか?
正面から口元を見せながら話しかけることで、双方がストレスなくコミュニケーションをとることができます。

「テレビの音が大きい」「話しかけても見当違いの答えが返ってくる」「呼び掛けても返事をしない」などに思い当たることがあれば、聴力低下のサインです。耳鼻咽喉科での検査をすすめてみましょう。
聴力が低下していると思われる方と会話をするときは、正面からはっきりと話しかけるのがおすすめです。口元を見せると、何を話しているのかを視覚でも想像することができ、伝わりやすくなります。
また、話題について前振りをしてから話す工夫も有効です。例えば、待ち合わせの場所や時間を伝えるときはいきなり話すのではなく、ていねいに「〇日の待ち合わせの場所と時間についてなんだけど...」と話題の前振りをしてから話すことで、理解してもらいやすくなります。






今月の監修者新田 清一(しんでん せいいち)先生 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定専門医。済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科 主任診療科長・聴覚センター長/著書に『改訂版 難聴・耳鳴りの9割はよくなる 脳を鍛えて聞こえをよくする「補聴器リハビリ」』(世界文化社)などがある。

イラスト:本田佳世

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧