健康診断のミカタ ヘルスケア

たくさんの数値が並ぶ健康診断の結果表。
奥が深いその世界へ、この2人がご案内します。

ちょっと天然な女の子、せっちゃん

なんでも知ってる物知りの男の子、はっくん



腎臓ってどんな働きをしている?

ソラマメのような形をした腎臓は、背骨をはさんで左右にひとつずつある臓器。それぞれ握りこぶしくらいの小さな臓器ですが、実は1分間に約1000mlもの血液が流れ、老廃物を排出したり、各種ホルモンをつくるなど、重要な働きを担っています。

主な働きのひとつである老廃物などのろ過を、この小さな臓器でどう行っているのか? その秘密が毛細血管の丸いかたまりである「糸球体(しきゅうたい)」。わずか0.1mmほどの糸球体をとおる間に、老廃物や余分な塩分などはろ過されて尿細管へ排出。キレイになった血液だけが全身をめぐる血管へと送り出されるのです。



腎臓をめぐる5つの数値って?

私たちの腎臓が、健やかな状態にあるかどうかを診る指標となる数値には、血液検査でわかる2項目と、尿検査でわかる3項目があります。ひとつずつ見ていきましょう。

■クレアチニン
クレアチニンとは、筋肉を動かすためにエネルギーを使った後にできる老廃物のこと。健康なときは尿として排出されますが、腎臓に何らかのトラブルが生じると尿から排出されず、血中の数値が高くなります。

■eGFR
これは糸球体が1分間にどのくらいの血液をろ過し、尿をつくるかを推算したもの。数値が低いほど腎臓の機能が低下している疑いが強く、健康診断では特に毎年意識してチェックしたい重要な指標です。

■尿たんぱく
尿にたんぱく質が含まれているかどうかを診る検査。健康であれば尿には微量しか含まれませんが、一定量以上のたんぱく質が含まれる場合は、腎臓や尿管など泌尿器のトラブルが疑われます。

■尿潜血
尿に血液が混じっているかどうかを診る検査。血液が混じっている場合は、腎臓や膀胱など泌尿器に何らかの異常がある可能性が高くなります。

■尿糖
尿に糖が含まれているかどうかを診る検査。健康であれば尿に含まれることはほとんどありませんが、糖が含まれる場合は、腎臓のトラブルや高血糖が疑われます。

具体的な判定基準は次のとおり。

さらに健康診断を行う施設によっては血液検査でBUN(尿素窒素)を測るところも。尿素窒素は、たんぱく質が代謝されたときにできる老廃物のことで、腎臓の機能が低下すると血液中の量が増えます。そのためBUNは、クレアチニンとともに腎機能の状態を診る大切な指標とされています。健康診断の項目にBUNがあったら、数値が基準値8.0~20.0mg/dLの範囲内にあるかをチェックしておきましょう。



基準値外の数値がまねく健康リスクは?

腎臓はとても我慢強い臓器のひとつ。数値が少しくらい基準値外になっても自覚できるような不調は出てきません。その分、気づかないうちに進行しやすく、体内に老廃物が溜まる、水分量やイオンバランスが乱れるといった悪影響から深刻な病気に至る可能性もあります。健康診断の結果で再検査などの指示があれば、きちんと従いましょう。また、昨年などと比べて数値が高くなっているなど、気になったら早めの対策がおすすめです。



気になる腎臓数値の対策ガイド

腎臓は機能が低下するとなかなか回復が難しいといわれますが、軽度のうちはしっかり対策することで数値の改善が期待できます。ひとつでも多くの対策をとり入れてみてください。

1. 塩分・たんぱく質に特に注意!
腎臓は食生活の影響を受けやすい臓器です。特に塩分やたんぱく質の多い食生活は腎臓の負担が大きいため、摂りすぎに注意を。またカフェインやアルコールも適量を守りましょう。

2. 運動は適度に!
細かな血管が集まっている腎臓にとって、激しい運動は大きな負担に。一方で、適度な運動は血流を促す良い刺激になります。息切れ一歩手前くらいの運動を心がけ、続けていきましょう。

3. 水分補給をしっかり
水分不足は腎臓の機能を低下させる一因。こまめに水分を補給しましょう。


上手な水分補給のコツは?

こまめに水分を補給することが大事だといわれても、実際にどのくらい飲めば良いのかわかりませんよね。平均的な話ですが、私たちが1日に必要とする水分量は約2.5lとされています。そのうち食事で摂ったり、体内でつくられる分を差し引くと、飲み物で水分補給しなければならないのは1.2l。コップ1杯250mlとして約5杯分です。意外に実行しやすい量だと思いませんか? ただ、以下のポイントにも注意しましょう。

●水やお茶だけでなく、経口補水液もとり入れる。
●利尿作用のあるカフェインやアルコールを含む飲料は、水分としてカウントしない





4. トイレを我慢しない!
尿をつくる腎臓にとって排尿を我慢することは負担のひとつ。行きたくなったら、すぐにトイレへ向かいましょう。

腎臓の健康を守ることって、体に老廃物を溜めないためにも大事なんだね! まずは水分補給から、対策を始めていこう。

上手に健康診断を活用するコツ

■健康診断の判定の指示にしっかり従う

■健康診断の結果をベースに、生活習慣を見直す

■健康診断の結果は、その年だけでなく、2年前、1年前と比較して見る

■基準値とされる数値内でも2年前、1年前から悪化している数値があれば対策を検討する



次回【2024年1月2日(火)リリース】予告!
女性でも40代以降は要注意!?
次回は「尿酸値」を取り上げます。

監修近藤 慎太郎 先生 近藤しんたろうクリニック院長、日本人間ドック学会専門医。

診療現場での経験から、がんの予防と早期発見の重要性を痛感し、講演や各種メディアを通じて予防医学の啓蒙活動を行っている。特技はマンガで、解説マンガも自ら描いている。YouTube『医師兼マンガ家が教える カンタンけんこう教室』も好評。主な著書に『ほんとは怖い健康診断のC・D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』(日経BP)

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧