健康診断のミカタ ヘルスケア

たくさんの数値が並ぶ健康診断の結果表。
奥が深いその世界へ、この2人がご案内します。

ちょっと天然な女の子、せっちゃん

なんでも知ってる物知りの男の子、はっくん



肺の働きって?

肋骨に囲まれている肺は、左右に2つある臓器。心臓や胃などと違って自らを動かす筋肉はなく、横隔膜(おうかくまく)や肋間筋(ろっかんきん)といった肋骨内の筋肉が動くことで間接的に動かされています。
肺の働きは、私たちの生命維持に欠かせない酸素を体内に取り込み、不要な二酸化炭素を排出すること。この機会に、普段はあまり意識することのない肺と呼吸の働きを図解で見てみましょう。

呼吸によって口や鼻から取り込んだ空気は、気管を通って肺に送られます。肺の中では気管が枝分かれし、最終的には末端の細気管支につながった肺胞に至ります。この肺胞こそ、酸素と二酸化炭素の交換が行われる重要なスポット。
肺胞と、そのまわりを囲む毛細血管の間で、酸素と二酸化炭素が交換されるのです。肺胞ひとつの大きさはわずか0.1mmほど。それが約3億個も集まって、スムーズな酸素と二酸化炭素の交換が行われています。



肺をめぐる3つの数値って?

極小の肺胞が集まる肺は、ダイレクトに外の空気に触れている場所でもあります。このため、空気中のさまざまな菌や有害物質の危険にさらされがち。また肺機能は年齢とともに低下します。通常の健康診断では検査項目に含まれていることが少ないので、人間ドックなどで検査の機会があればぜひチェックしてみてください。
肺の健康度を示す3つの数値を見ていきましょう。

■1秒率

空気を胸いっぱいに吸い込み、勢い良く吐き出した空気量(努力肺活量)に対し、最初の1秒間に吐き出した量の割合。

■%1秒量

空気を胸いっぱいに吸い込み、勢い良く吐き出した空気量(努力肺活量)のうち、最初の1秒間に吐き出した空気量を計測。この量が、年齢や性別、身長から算出された基準値に対してどのくらいの割合かを示す数値です。1秒率、%1秒量のいずれも基準値より低い場合は、喘息など肺疾患の可能性があります。

■%肺活量

胸いっぱいに吸い込んだ空気を、ゆっくりすべて吐ききったときに、どれだけ多くの空気を吐き出したか(肺活量)を計測。その量が、年齢や性別、身長から求めた基準値に対してどのくらいの割合かを示す数値です。80%未満の場合は、肺のトラブルの可能性があります。

実際の判定基準は以下となります。



基準値外の数値がまねく健康リスクは?

肺の数値のいずれかが基準値より低い場合は、何らかの原因で肺機能が低下し、体内が酸欠に陥っている可能性が高いことを示しています。酸欠の状態が続けば息切れや息苦しさを感じたり、さらには心臓や血管への負担が大きくなるなど、全身に大きな影響を与えることにもなりかねません。数値が気になったら、健康診断の結果に従うと同時に、できる対策を取り入れていきましょう。



気になる肺の数値の対策ガイド

肺を健やかに整えるために、次のような対策を毎日に取り入れていきましょう。

■禁煙する

タバコの悪影響を受けやすいのが、直接タバコの煙にさらされる肺などの呼吸器系です。もし喫煙習慣があるなら、禁煙外来などを活用してぜひ禁煙を。身近に喫煙者がいる場合も気をつけていきましょう。

■姿勢を正す

猫背や、スマホを見るために前傾姿勢が続いたりすると、肺が圧迫されて酸欠状態に。さらには肺のトラブルを招いてしまうことにも。意識して正しい姿勢を保ちましょう。

■肺まわりの呼吸筋を鍛える

肺は、横隔膜など周囲の筋肉(呼吸筋)によって膨らんだり縮んだりする臓器。この呼吸筋をよく動かし、鍛えることで、肺機能の改善が期待できます。

呼吸を意識して行うヨガや上半身を大きく使うストレッチなどを日常的に行なっていきましょう。

■深く吸い込む腹式呼吸を心がける

現代人は、ストレスなどの影響で呼吸が浅くなりやすく、慢性的な酸素不足に陥りがちだといわれています。毎日に、腹式呼吸を取り入れましょう。胸を大きく広げる腹式呼吸は、普段はあまり使われていない肺の下部にまで空気を行きわたらせることができ、肺の活性化につながります。



腹式呼吸は、おなかを使って。


呼吸の仕方には大きく分けて、胸式呼吸と腹式呼吸の2つがあります。この違いは、使われる筋肉の違い。胸式呼吸は肋間筋(きょうかく)を動かして胸郭を広げることで空気を肺に取り込み、腹式呼吸は横隔膜を上下させることで空気を取り込みます。
呼吸が浅いかなと感じるなら、胸式呼吸に偏っているのかもしれません。意識して腹式呼吸を行いましょう。やり方はとても簡単。目安は、最初は1日5回ほど。慣れてきたら回数を増やしていってください。


①背すじを伸ばし、鼻からゆっくり空気を吸い込み、おへその下に空気を溜めるイメージでおなかを膨らませます。
②口からゆっくり息を吐きながら、おなかを凹ませていきましょう。ポイントは、空気を吸い込んだときの2倍くらいの時間をかけるつもりで息を吐くことです。


自分の呼吸が浅いか深いかって、あまり意識したことがないよね!? この機会にチェックして、たっぷり空気が取り込める肺に整えよう!

上手に健康診断を活用するコツ

■健康診断の判定の指示にしっかり従う

■健康診断の結果をベースに、生活習慣を見直す

■健康診断の結果は、その年だけでなく、2年前、1年前と比較して見る

■基準値とされる数値内でも2年前、1年前から悪化している数値があれば対策を検討する



ご愛読ありがとうございました。
「健康診断のミカタ」はこれが最終回です。
いろいろな数値が並ぶ健康診断の結果は健康のバロメーター。気になる数値がある人はもちろん、ない人も毎年の数値の変化に気をつけて健康を守っていってください。

監修近藤 慎太郎 先生 近藤しんたろうクリニック院長、日本人間ドック学会専門医。

診療現場での経験から、がんの予防と早期発見の重要性を痛感し、講演や各種メディアを通じて予防医学の啓蒙活動を行っている。特技はマンガで、解説マンガも自ら描いている。YouTube『医師兼マンガ家が教える カンタンけんこう教室』も好評。主な著書に『ほんとは怖い健康診断のC・D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』(日経BP)

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