
大豆イソフラボンは体に良いけどとりすぎはNG? 摂取量の上限や注意点を解説
大豆イソフラボンは、日本人にとって健康的な食生活に欠かせない豆腐や納豆、味噌など多くの大豆食品から、日常的に長年摂取している栄養素です。
ここでは、大豆イソフラボンに期待できる効果や、安全に摂取するための量や注意点などを詳しく解説します。
1. 大豆イソフラボンとは?
大豆イソフラボンとは、大豆の胚芽部分に多く含まれる成分で、強い抗酸化作用のあるポリフェノールの一つです。大豆イソフラボンは、化学構造が女性ホルモンのエストロゲンと似ていることから、植物性エストロゲンと呼ばれます。そして、大豆イソフラボンはエストロゲンと似た働きをすることがわかっています。
● 更年期の症状
閉経の前後はエストロゲンの分泌がゆらぎながら低下していき、さまざまな症状が起こります。
前述のとおり、大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た作用を生じることが知られているため、更年期の症状に対して手助けをしてくれることがあります。
● 骨の健康維持
閉経以降に減少していくエストロゲンですが、骨の代謝をサポートし、骨の健康を維持するための役割を担っています。
エストロゲンと似た作用がある大豆イソフラボンは、骨の代謝をサポートする効果が期待できます。
2. 大豆イソフラボンの摂取量に上限はある?
大豆イソフラボンは、たくさん摂っても効果が増すわけではありません。摂り過ぎると健康被害の可能性があることから、目安となる摂取量の上限が設定されています。以下に、2つの上限を説明します。
● 安全に摂取できる1日の目安量の上限
大豆イソフラボンを、1日に安全に摂取できる目安量の上限は、70~75mg(アグリコン換算※)です。これは、長年大豆食品を食べてきた日本人の食経験に基づいた安全な量と、臨床研究の結果から設定されています。
● 日常の食生活にサプリメントで上乗せする場合の上限
日常的に大豆食品を摂っている方が、大豆イソフラボンをサプリメントで追加する場合には、臨床試験の結果から1日30mg(アグリコン換算※)が上限です。1日30mgまでであれば、日常の食生活にサプリメントで上乗せしても、安全に摂取できる目安量の上限の1日75mgを超えないと考えられています。
※アグリコン換算について
食品中の大豆イソフラボンは糖と結びついた形で存在していますが、腸内細菌によって分解され糖が切り離されると、アグリコンという形になり吸収されます。食品中の大豆イソフラボンの量や摂取量は、体内に吸収されたアグリコンの量に換算して表します。
3. 大豆イソフラボンの摂りすぎはNG?
前述の大豆イソフラボンの摂取目安量の上限の70~75mgは、長期間毎日摂取した場合の平均値としての上限のため、上限を超えた日があってもすぐに健康に影響が出るわけではありません。
ただ、例えば朝豆乳を飲んだうえに、3食とも納豆を食べ、毎晩豆腐を1パックずつ食べるという生活を何年も続けるのは、NGといえるでしょう。
豆乳:コップ1杯半(1杯200g)=24mg
納豆:3パック(1パック50g)=110.25mg
豆腐:豆腐350g約1パック=20.3mg
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154.55mgを1日で摂取することになるので、1日の目安量を超えてしまいます。
また、大豆イソフラボンをサプリメントで長期にわたって摂り過ぎるのもNGです。大豆イソフラボンには、エストロゲンと似た作用があるものの、摂り過ぎると女性ホルモンのバランスが崩れて健康に悪い影響が出る可能性があるからです。
例えば、閉経女性が大豆イソフラボン1日150mgを5年間摂ったところ子宮内膜増殖症が発症したという報告があります。一方、3年間では子宮内膜増殖症は報告されなかったことから、直ちに健康被害に結びつくわけではないようです。そのほか、閉経前女性の月経期間の延長や男性の乳房が膨らむ女性化乳房などが報告されています。
4. 大豆イソフラボンが含まれている食品例
大豆イソフラボンを多く含む食品と、75mgを摂るために必要な分量を紹介します。ただし、大豆イソフラボンの含有量は、原料の大豆の種類や加工方法などによって変わるため目安です。
大豆製品をあまり食べない方や、食が細く食品から十分な量の大豆イソフラボンが摂れない方は、サプリメントで補うのも良いでしょう。
75mgの大豆イソフラボンを摂るために必要な食品とその量(アグリコン換算量)
食品名 (調査に使用した検体数) |
含有量 (mg/100g ) |
平均含有量 (mg/100g ) |
75mg摂取に 必要な量(g) |
食品の分量目安 |
黄粉 (2検体) |
211.1~321.4 | 266.2 |
28.2 |
大さじ4杯 |
凍り豆腐 (1検体) |
88.5 | 88.5 | 84.7 | 5枚 (1枚17gのもの) |
納豆 (2検体) |
65.6~81.3 | 73.5 | 102.0 | 2パック (1パック50g) |
煮大豆 (3検体) |
69.0~74.7 | 72.1 | 104.0 | 大豆水煮2/3袋 (1袋150g) |
味噌 (8検体) |
12.8~81.4 | 49.7 | 150.9 | みそ汁約9杯 (1人前味噌17g) |
油揚げ類 (3検体) |
28.8~53.4 | 39.2 | 191.3 | 薄揚げ約3枚 (1枚60g) |
豆乳 (3検体) |
7.6~59.4 | 24 | 312.5 |
コップ1杯半 (1杯200g) |
豆腐 (4検体) |
17.1~24.3 | 20.3 | 369.5 |
豆腐350g 約1パック |
5. 大豆イソフラボンを摂取する際の注意点
大豆イソフラボンを上手に摂取する際には次の点に注意しましょう。
バランスよく食べること
大豆や大豆食品は、低脂肪で良質な植物性たんぱく質源であり、不足しがちな食物繊維、ミネラル、ビタミンなどが摂れる有用な食品です。しかし、大豆食品ばかり摂っていては、栄養が偏り健康的な食事とはいえません。大豆や大豆食品(例えば、豆腐や納豆、味噌など)をうまく取り入れながら、多くの食品を使ったバランスの良い食事を摂ることが、健康につながります。
また、大豆イソフラボンの摂り過ぎを心配して、大豆食品を避けようと考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、前述でも説明したように、すぐに健康に影響でるわけではなく、通常の食生活においては摂りすぎるといったことになる可能性は低いです。そのため、大豆食品から大豆イソフラボンを摂る場合には、健康への影響を心配する必要はありません。
妊娠中や乳児の過剰摂取量に気をつける
妊娠中の方(妊娠の可能性のある方を含む)や乳児・小児は、通常の食生活に上乗せして、大豆イソフラボンのサプリメントを摂ることはすすめられません。
妊娠中の方が大豆イソフラボンを摂ると胎盤を通じて、胎児に移行することが分かっていますが、胎児への影響は明らかになっていないからです。
また、乳児や小児も、安全性が明確でないため、通常の食生活に上乗せして大豆イソフラボンを摂ることはすすめられません。
6. まとめ
大豆イソフラボンは、大豆の胚芽に含まれる栄養成分で、強い抗酸化作用のあるポリフェノールの一つです。大豆や大豆食品を日常の食生活で摂る機会が多い日本人において、健康をサポートする栄養成分ともいえます。大豆イソフラボンは、エストロゲンの低下にともなう更年期におすすめです。
大豆イソフラボンを大豆食品などから摂ることは、長い経験から健康に影響がないことは知られていますが、摂り過ぎには注意が必要です。1日の摂取量の目安や、通常の食事にサプリメントとして上乗せして摂取できる上限をしっかりと把握し、サプリメントを利用する場合には、製品に記載してある大豆イソフラボンの量に注目しましょう。
大豆イソフラボンを摂る場合には、その量だけに注目するのではなく、大豆や大豆食品を上手に食生活に取り入れ、バランスよく食べることが健康につながります。ただ、食習慣から大豆や大豆食品をあまり摂らない方、食が細い方、更年期以降のエストロゲンの低下の影響が気になる方などは、大豆イソフラボンをサプリメントとして摂ることは、健康のサポートにつながることが期待できます。