
アミノ酸スコアとは? 豊富に含まれる食品、上手にとり入れる方法を紹介
「毎日バランス良く食事をとっているつもりなのに、なんだか調子が出ない」といった経験はありませんか?
毎回きちんと食事をとっていても、アミノ酸の配合バランスが悪いと、体づくりに必要なたんぱく質を十分つくることができず、筋肉が落ちたり、肌や髪の質が悪くなったりすることもあります。そこで注目したいのが、食事に含まれる「たんぱく質」の「質」を評価する基準である「アミノ酸スコア」。
今回の記事では、体に必要なアミノ酸の種類と、アミノ酸スコアの高い食品について解説します。また、日常生活でアミノ酸を上手にとり入れる方法など、健康的な体づくりのためのヒントも紹介していきます。アミノ酸スコアを知って、毎日の食生活を見直してみましょう。
1. アミノ酸とは?
アミノ酸は、私たちが活動するためにさまざまな役割をもつ成分で、たんぱく質をつくり出す原料となります。体のたんぱく質を構成しているアミノ酸は20種類あり、筋肉・臓器・皮膚・髪をつくるだけではなく、ホルモンや酵素などの生成にも深くかかわっており、生命を維持するのに欠かせない栄養素です。
アミノ酸が不足すると、体を構成するさまざまなたんぱく質が減ってしまい、代謝や神経の伝達などに必要な物質がつくられなくなり、以下のような不調の原因となる場合があります。
・筋肉量が低下する
・皮膚が乾燥したり、髪がぱさついたりする
・免疫機能が低下する
・知的能力が低下する
・傷やケガの治癒が遅れる
ここからは、アミノ酸の種類やアミノ酸スコアについて詳しく解説していきます。
2. アミノ酸の種類
体に必要な20種類のアミノ酸は、体内でつくることができない必須アミノ酸と、摂取した食品などから体内でつくり出せる非必須アミノ酸に分けられます。
それぞれの特徴について解説していきましょう。
必須アミノ酸
体に欠かせない必須アミノ酸は9種類あります。体内でつくることができないため、たんぱく質として食品から摂取する必要があります。それぞれの必須アミノ酸の特徴や働き、身近な食品は以下のとおりです。
(1)イソロイシン
イソロイシンは、構造の中に分岐鎖を持ち、似た性質を持つロイシン・バリンとともに分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれています。BCAAは、筋肉のたんぱく質が分解されるのを抑制したり、運動中のエネルギー源として使われます。
・主な働き:成長を促す、筋肉を強化する、肝機能を向上させる、神経の働きをサポートする、血管を拡張させる、疲労を回復させる
・多く含まれる食品:鶏肉、サケ、牛乳、大豆、プロセスチーズ、削り節
(2)ロイシン
ロイシンは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つです。多くの食品に含まれているため、通常の食生活において不足することはありません。
・主な働き:筋肉を維持・強化する、肝機能を向上させる
・多く含まれる食品:牛肉、レバー、アジ、いわし、さば、大豆、プロセスチーズ
(3)バリン
バリンは、イソロイシンやロイシンとともに分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つです。さまざまな食品に含まれているため、通常の食生活で不足することはありませんが、ほかのBCAAとの摂取バランスが悪くなると、体内に取り込まれる量に影響が出るため、バリンの働きが低下します。
・主な働き:筋肉を修復する、肝機能を向上させる、血液中の窒素のバランスを調整する
・多く含まれる食品:鶏肉、レバー、らっかせい、プロセスチーズ、牛乳
(4)リジン
リジンは、脂肪燃焼に必要なカルニチンの材料となります。動物性たんぱく質に多く含まれ、植物性たんぱく質の含有量は少ないため、穀物中心の食生活を送っていると、実際の摂取量が不足しやすいアミノ酸です。
・主な働き:ブドウ糖の代謝を促す、カルシウムの吸収を促す、肝機能を向上させる
・多く含まれる食品:鶏肉、牛乳、チーズ、大豆、サバ
(5)メチオニン
メチオニンは、構造の中に硫黄を含む含硫アミノ酸の1つです。不足すると、体内の余分な水分を排出する機能が低下するため、むくみが起こりやすくなることがあります。
・主な働き:アレルギー症状を引き起こすヒスタミンを抑える、肝機能を維持する、コレステロールを減らす
・多く含まれる食品:鶏肉、牛肉、羊肉、まぐろ、カツオ、チーズ、全卵
(6)フェニルアラニン
フェニルアラニンは、体内でチロシンに変換されて、脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン・ドーパミン)をつくる原料となります。人工甘味料のアスパルテームの原料としても知られています。
・主な働き:精神を安定させる、痛みを抑える可能性がある
・多く含まれる食品:肉類、魚介類、大豆製品
(7)スレオニン(トレオニン)
スレオニンは、9種類の中で最後に発見された必須アミノ酸で、動物性たんぱく質に多く含まれています。
・主な働き:成長を促す
・多く含まれる食品:卵、脱脂粉乳、ゼラチン
(8)トリプトファン
トリプトファンは、体内ではナイアシン、脳内では睡眠などに関係する神経伝達物質のセロトニンの原料となります。
・主な働き:入眠しやすくなる、精神を安定させる
・多く含まれる食品:乳製品、大豆製品、魚介類、肉類、卵白
(9)ヒスチジン
ヒスチジンは、大人になると体内でつくられるようになりますが、子どものときはつくることができないため、必須アミノ酸に含まれています。ヒスチジンは体内でヒスタミンに変換されます。
・主な働き:成長を促す、神経の働きをサポートする、脂肪の分解を促す可能性がある
・多く含まれる食品:ナチュラルチーズ、ハム、魚介類、肉類、卵白
非必須アミノ酸
体に必要な非必須アミノ酸は11種類あります。必須アミノ酸と異なり、非必須アミノ酸は体の中でつくることができますが、食事から補う量が少な過ぎると、体内での合成分だけでは足りずに不足することがあるため注意が必要です。それぞれの非必須アミノ酸の特徴や働き、多く含まれる食品についてみていきましょう。
(1)チロシン
チロシンは、体内のフェニルアラニンからつくられます。甲状腺ホルモンのチロキシン、神経伝達物質のアドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミン、メラニン色素の原料となります。
・主な働き:ストレスを軽減する、脳の働きを維持する
・多く含まれる食品:チーズ、たらこ、大豆、しらす、らっかせい、削り節
(2)システイン
システインは、構造の中に硫黄を含む含硫アミノ酸の一つで、毛や爪に多く含まれています。グルタチオンの原料になります。
・主な働き:活性酸素を除去する、皮膚のターンオーバーを正常化する、メラニン色素の生成を抑える
・多く含まれる食品:魚介類、肉類、小麦、海苔
(3)アスパラギン
アスパラギンは、アスパラガスから発見されたアミノ酸です。アスパラギンとアスパラギン酸は、名前が似ていますが異なる成分です。アスパラギンは全身の持久力を高めるのに役立ち、アスパラギン酸はエネルギー産生にかかわり疲労回復に役立ちます。
・主な働き:肝臓を保護する可能性がある
・多く含まれる食品:削り節、いわし、しらす、海苔、らっかせい、そらまめ
(4)アスパラギン酸
アスパラギン酸は、アスパラガスに多く含まれるアミノ酸で、脳の神経伝達物質の1つです。
・主な働き:疲労を回復させる、ミネラルの吸収を高める可能性がある
・多く含まれる食品:豆類、サトウキビ、アスパラガス、大豆もやし、肉類、まぐろ、うなぎ
(5)セリン
セリンは、細胞膜をつくる成分の原料となり、肌の角層に最も多くあるアミノ酸です。
・主な働き:脳の働きを維持する可能性がある、肌を保湿する
・多く含まれる食品:牛乳、大豆、小麦粉、イクラ、削り節、のり
(6)グルタミン酸
グルタミン酸は、脳の神経伝達物質の1つで、グルタチオンやGABAの原料となります。旨味成分としても知られ、調味料としても使われています。
・主な働き:脳の機能を維持する
・多く含まれる食品:海苔、大豆、らっかせい、イワシ、えだまめ、アーモンド
(7)グルタミン
グルタミンは、筋肉内に多く存在するアミノ酸で、激しい運動・強いストレス・風邪などによって消耗しやすい特徴があります。グルタミンとグルタミン酸は、名前が似ていますがそれぞれ異なる成分です。
グルタミンは、酵素の働きによってグルタミン酸とアンモニアからつくられます。グルタミンは腸の働きをサポートするのに対して、グルタミン酸は脳を活性化するのに役立ちます。
・主な働き:運動後の筋肉をサポートする、胃腸の粘膜を維持する、免疫力を維持する
・多く含まれる食品:小麦粉、海藻、大豆、肉、魚、卵、ほうれん草
(8)プロリン
プロリンは、グルタミン酸からつくられるアミノ酸で、コラーゲンをつくる原料となります。
・主な働き:健康的な肌をサポート、脂肪を燃焼させる
・多く含まれる食品:牛乳、ゼラチン、小麦粉、大豆
(9)グリシン
グリシンは、構造が最も単純なアミノ酸で、甘いアミノ酸として甘味料などにも使用されています。
・主な働き:睡眠の質を改善する、肝臓のエタノールの代謝を調節する、肌の健康を保つ
・多く含まれる食品:牛すじ、エビ、カニ、ほたて、いわし
(10)アラニン
アラニンは、さまざまなたんぱく質に含まれるアミノ酸で、細胞質に多く存在しています。
・主な働き:体の運動能力を高めるサポート、肝臓の機能を維持する、肌の保湿を維持する
・多く含まれる食品:シジミ、ホタテ、いか、海苔、かに、鶏肉
(11)アルギニン
アルギニンは体内で合成できますが、必要量をつくり出すことができないため、食事から補給する必要があるため「準必須アミノ酸」とも呼ばれています。
・主な働き:成長ホルモンの分泌を促す、運動時に筋力が高まる、血流調節機能を維持する、免疫力を維持する
・多く含まれる食品:鶏肉、大豆、エビ、ゴマ、ナッツ類、チョコレート
3. アミノ酸スコアとは?
アミノ酸スコアとは、食品に含まれるたんぱく質の質を評価する指標です。たんぱく質を構成している必須アミノ酸のバランスを数値化しており、アミノ酸スコアが100に近いほど、栄養価が優れていると評価できます。
すべての必須アミノ酸が適切な含有量であることが重要で、食品中に含有量が少ない必須アミノ酸があると、アミノ酸スコアは最も少ない必須アミノ酸に合わせて低くなるのです。アミノ酸スコアが低い食品は、摂取しても体内でたんぱく質を合成する効率が悪くなります。
アミノ酸スコアの計算式
アミノ酸スコアは、以下の計算式で求めることができます。
食品たんぱく質中の第1制限アミノ酸含量(mg/g)÷アミノ酸評定パターンの当該アミノ酸含量(mg/g)×100=アミノ酸スコア
上記の計算を用いて、食品に含まれている各必須アミノ酸のスコアを算出し、その中で最も数値が少ないものが食品のアミノ酸スコアとなります。
国際機関のFAO/WHO/UNUによって定義されているアミノ酸評定パターン(2007年18歳以上の数値)は、以下のとおりです。
必須アミノ酸 |
mg/g たんぱく質 |
イソロイシン | 30 |
ロイシン | 59 |
トリプトファン | 6 |
リシン(リジン) | 45 |
ヒスチジン | 15 |
バリン | 39 |
トレオニン(スレオニン) | 23 |
含硫アミノ酸(合計) | 22 |
芳香族アミノ酸(合計) | 38 |
出典:日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)アミノ酸成分表編
例えば、「キャベツ(生)」のアミノ酸スコアを知りたい場合の各アミノ酸のスコアは、以下表のとおりです。ロイシンが95と最も数値が低いため、キャベツ(生)のアミノ酸スコアは「95」となります。
必須アミノ酸 |
mg/g たんぱく質 |
アミノ酸 評定パターン |
アミノ酸 スコア |
イソロイシン | 36 | 30 | 120 |
ロイシン | 56 | 59 | 95 |
トリプトファン | 12 | 6 | 200 |
リシン (リジン) |
56 | 45 | 124 |
ヒスチジン | 31 | 15 | 207 |
バリン | 52 | 39 | 133 |
トレオニン (スレオニン) |
45 | 23 | 196 |
含硫アミノ酸 (メチオニン・シスチンの合計) |
30 | 22 | 136 |
芳香族アミノ酸 (フェニルアラニン・チロシンの合計) |
62 | 38 | 163 |
次に主な食品のアミノ酸スコアをみていきましょう。
アミノ酸スコアが高い主な食品(いずれも100)
牛肉(もも/脂身つき/生)、豚肉(ロース/脂身つき/生)、鶏肉(むね/皮つき/生)、鶏卵(全卵/生)、牛乳チーズ(プロセスチーズ)、アジ(まあじ/皮つき/生)、イワシ(まいわし/生)、サバ(まさば/生)、豆腐(絹ごし豆腐)、納豆(糸引き納豆)、にんじん(根/皮むき/生)、ピーマン(生)、じゃがいも(皮なし/生)
参照:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年アミノ酸成分表編」
4. アミノ酸を上手にとるには?
アミノ酸は、体の機能を正常に保つために欠かせない成分で、中でも必須アミノ酸は食事から補う必要があります。効率的にアミノ酸を摂取する方法について3つ解説しましょう。
毎日の食事で複数の食品をとり入れる
食品によってアミノ酸の種類や含有量が異なるため、さまざまな食品を組み合わせて食べることが重要です。
また、アミノ酸スコアが低い食品でも、複数の食品をとることで、必須アミノ酸を不足なく補えます。例えば、アミノ酸スコアの低いパンと一緒に卵や乳製品をとると、不足しているリジンを補うことが可能です。
さらに複数の食品をとることで、アミノ酸以外の栄養バランスも優れたものになります。
和食をとり入れる
和食は、アミノ酸のバランスが整っていることで知られています。主食の白米はリジンが不足していますが、納豆などの大豆製品には多く含まれているため、一緒にとることで不足したリジンを補えます。
魚・卵・大豆・玄米はアミノ酸スコアが高く、和食にとり入れやすい食材です。それぞれ異なるアミノ酸を含んでいるため、毎日の食事にとり入れると、体に必要なアミノ酸を幅広く補うことができます。
サプリメントを活用する
日常生活が忙しく食事に気を配ることができないときは、アミノ酸をとれるサプリメントやプロテインを活用すると、不足しやすい栄養成分のとりこぼしを防いで、効率的にアミノ酸のバランスを整えることができます。また、運動やトレーニング後の回復や美肌づくり、睡眠をサポートしたいなどの目的がある場合、特定のアミノ酸が配合されたサプリメントがおすすめです。
アミノ酸をサプリメントでとる際は、食事で摂取するときと比べて、消化吸収が早く、すぐに体内にとりこまれるメリットがあります。
5. アミノ酸を効率良くとれる献立例
アミノ酸スコアに気を配り、複数の食品をとり入れた1日の献立例を紹介しましょう。
たんぱく質は特定の食品にかたよらないように、魚・肉・卵・大豆製品などさまざまな食品をとると、アミノ酸のバランスが良好になります。
【朝食】
卵焼き
ほうれん草のおひたし
豆腐とわかめのみそ汁
ごはん
朝食は、卵や豆腐など調理が簡単で、アミノ酸スコアの高い食品をとり入れて、良質なたんぱく質をとりましょう。ほうれん草の代わりに、アミノ酸スコアが同等の小松菜にしたり、豆腐がないときは、納豆にしたりするのもおすすめです。
【昼食】
ミートソースパスタ
ツナ野菜サラダ
外食でパスタなど炭水化物中心の献立においても、アミノ酸スコアの高い肉類を使ったものを選んで、良質なたんぱく質をとりましょう。たんぱく質が足りない場合は、プラスしてツナや卵をトッピングしたサラダがおすすめです。
【間食】
ヨーグルト
朝食や昼食で良質なたんぱく質をとれていないときは、アミノ酸スコア100のヨーグルトがおすすめです。ほかに、バナナやキウイフルーツもアミノ酸スコアが100と高く、間食におすすめです。
【夕食】
まぐろのお刺身
きゅうりとわかめの酢の物
大根と厚揚げの煮もの
ごはん
夕食は、魚類や大豆製品のように、主菜や副菜に良質なたんぱく質を含む食材を複数とり入れると、アミノ酸バランスが効率良く整えられます。酢の物にはわかめの代わりに、アミノ酸スコアが同等のもずくを使っても良いでしょう。煮ものには大根のほかに、アミノ酸スコアの高いさといも・かぼちゃ・にんじんもおすすめです。
6. まとめ
アミノ酸スコアは食品中の必須アミノ酸バランスを数値化した指標で、100に近いほど体内でのたんぱく質をつくる効率が高くなります。含有量が最も少ない必須アミノ酸に合わせて値が決まるため、一部のアミノ酸が不足しているとアミノ酸スコアは低くなります。
肉類、魚類、卵、乳製品、豆腐などはスコアが高く、パンやうどんなどの穀類はスコアが低い傾向があります。効率良くアミノ酸を摂取するには、複数の食品をとり入れる、和食を活用する、必要に応じてサプリメントを利用するなどの方法があります。
アミノ酸が不足すると体内でつくられるたんぱく質の量が減るため、筋肉量の低下や肌・髪の質の低下、免疫機能の低下などの不調につながります。今日からアミノ酸スコアを意識しながら食事をとり、すこやかな体づくりを始めましょう。