子育てTips ママ・パパ

1. 産後のガルガル期とは? 起こる原因について

ガルガル期とは、産後のお母さんがホルモンバランスの乱れや慣れない育児によるストレスの影響で精神状態が不安定になることを指す俗称です。医学的な言葉ではなく、インターネット上で普及したいわゆるネットスラングですが、出産後に起こる一時的な気分の落ち込みや不安な気持ちになるマタニティブルーの一つとして認知されています。

ガルガル期が起こる原因を詳しく見ていきましょう。

母親としての本能が強くなるため

産後のお母さんは大切な我が子を育てるために、子どもを守る意識が自然と強まります。そのため、子どもにとって良くないものを排除したいという気持ちや考えが浮かんだり、実際の行動に表れてしまったりします。汚れや不衛生な物事に過敏になる、子どもの生活リズムを頑なに守る、といった本能的な気持ちが、ガルガル期を引き起こす一因といわれています。

ホルモンバランスが乱れるため

妊娠出産時は、ホルモンバランスがとても大きく変化します。これは、妊娠の継続や出産、母乳の分泌などに作用する、赤ちゃんを産み育てるために必要な変化です。しかし、このホルモンバランスの乱れが感情のコントロールにも影響を及ぼし、産後のガルガル期として表れてしまいます。

生活の変化によるストレスのため

赤ちゃんの世話で睡眠不足が続いていたり、妊娠・出産・育児によって心身の疲労が蓄積していたりすることも、ガルガル期の要因として考えられます。

環境の変化や慣れない生活リズムの影響などでストレスが溜まりやすく、発散もしにくい状態です。社会から孤立したような感覚や、慣れない育児に対するプレッシャー、不安感が精神的な負担となるケースもあります。


2. 産後のガルガル期はいつからいつまで?

ガルガル期は、始まる時期も終わるタイミングも人それぞれです。産後すぐから始まって数週間で終わる人もいれば、出産後しばらく経ってから始まり数年続く人もいます。

ホルモンバランスの関係で、授乳中はガルガル期が継続しやすいといわれています。また、ワンオペ育児や子育て以外のストレス要因が多いなど、環境面からの影響もあるようです。お母さん自身の性格や気質に左右される場合もあります。


3. 産後のガルガル期に見られる行動や考え

ガルガル期のお母さんは、普段なら気にならないような些細なことにもイライラしてしまうことがあります。身のまわりの人のちょっとした言動が引っかかり、きつい言葉や態度が出てしまったりします。良かれと思って教えてくれた育児のアドバイスや家事の手伝いをネガティブに受け取ってしまい、腹を立てたり極端に落ち込んだりすることは珍しくありません。理由もなく涙が出る場合もあります。

また、赤ちゃん以外の人やものを不潔に感じてしまい、抱っこはもちろん、指一本触れさせたくないと思ってしまうお母さんもいます。特に、感染症の流行時期や普段とは異なる環境に身をおく場合は過敏になりやすい傾向にあります。


4. ガルガル期になったときの乗り越え方

ガルガル期になったときの乗り越え方は、休息を取りストレスを溜めないように心がけることに尽きます。そのためにも、お母さん一人で育児や悩みを抱え込まず、周囲の人やもの、サービスを頼ることが大切です。

具体的な対処法を6つご紹介します。

パートナーと話し合う

まずはパートナーと話し合う機会を作り、ガルガル期について、また産後の身体と精神状態について知ってもらいましょう。なぜ産後はイライラしやすいのか、理由が分かればパートナーも適切な対応を取りやすくなるかもしれません。もちろん、パートナーが察してくれることが理想かもしれませんが、察してくれるのを待つよりも、具体的にどんなことが引っかかってしまうのか、意識してほしいことは何か、どのような対応を希望するのかをはっきりと伝えるほうがスムーズにいくこともあります。

イライラを抑えようと思っても、自分ではコントロールできないことも多々あるでしょう。申し訳ない気持ちや、理解してもらえないフラストレーションが溜まると余計につらくなってしまうので、あらかじめ大目に見てもらえるようお願いしておくのも良いかもしれません。

ただしパートナーも、新しい家族を迎えたことで、生活環境の変化や仕事のプレッシャーが増している可能性があります。一方的に意見を押しつけるだけにならないよう、下記の例文のように、相手を労う気持ちを込めて日頃の感謝を伝えられるとベストです。

例:さっきはイライラしちゃってごめんね。いつもの場所に食器がないから、ついイライラしちゃった。この食器はいつもここに置いているから、片付けるときは合わせてくれるとうれしいな。でも、洗った食器の片付けをやってくれてうれしかったよ。ありがとう。

お互いの性格や関係性によっては、口で伝えると喧嘩になってしまったり、素直に言えなかったりするケースもあるでしょう。そのようなときは、メッセージアプリや手紙で伝えるのも方法の一つです。

自分を責めることはしない

程度や期間には個人差がありますが、産後のガルガル期は誰にでも起こりうることです。母性本能やホルモンバランスの乱れは意識して改善できるものでもないので、自分を責めることはやめましょう。自責の念でストレスを溜めてしまうと、ガルガル期が長引いたり悪化したりする可能性もあります。

ガルガル期はあくまでも一時的な状態であり、いずれ必ず落ち着くものです。自分を責めるのではなく、どうすれば自分が生活しやすくなるか、どうすればまわりの人に負担をかけ過ぎずに済むか、前向きな思考にシフトできるよう心がけてみてください。

家族や友人を頼る

赤ちゃんの世話は昼夜を問わず続くため、お母さん一人でこなすのは難しいものです。信頼できる家族や友人がいるなら、協力やサポートをお願いしてみるのも良いでしょう。

少しの時間だけでも赤ちゃんを預かってもらえるなら、外出や趣味に打ち込む時間を作るのがおすすめです。少しでも育児から離れる時間を作るだけでも大きなリフレッシュ効果が得られます。

家族や友人を頼る場合は、現状と自分の気持ちを伝えてから、何を・いつ・どのくらい頼みたいかを明示しておくと、不安な気持ちをもたずに自分の時間を楽しめるでしょう。

預けるのが難しい場合は、友人と電話やメッセージのやりとりをして気分転換するのもおすすめです。

家事代行サービスなどを利用する

頼れる家族や友人がいない、赤ちゃんを預けることに不安がある、といった場合は、資格を持つプロの力を借りるのが良いでしょう。赤ちゃんのお世話を依頼できるベビーシッター、お母さんの身のまわりのこともサポートしてくれる産後ドゥーラは、自宅でも利用が可能なサービスです。

また、病院や宿泊施設に母子で訪問し、日帰りまたは宿泊で産後ケアの様々なサービスを受けることができます。助産師や保健師の自宅訪問、ファミリーサポート、子育て支援センターなど、行政が提供している子育て支援サービスも活用していきましょう。

日々のお母さんの負担を減らすために、宅配サービスや家事代行サービス、時短家電を導入するのも一つの案です。

自分へのご褒美を用意する

日々の赤ちゃんのお世話は、仕事とは違って目に見える報酬や評価が得られにくいのもつらいものですよね。

だからこそ、いつも頑張っている自分に対して、ちょっとしたご褒美を用意してみるのはいかがでしょうか。手に入れることで自分の気持ちが楽になったり、ストレスが発散できたりするものを選ぶのがポイントです。

完璧を求めすぎない

周囲に対して、また自分に対して完璧を求めすぎないことも、ガルガル期の対策として有効です。特に初めての育児では、何をどれくらい頑張れば良いのかが分からず、頑張りすぎてしまうお母さんも珍しくありません。

理想と現実のギャップがあるのは当然のことです。赤ちゃんと一緒にお昼寝をする、毎日着るものは畳まずハンガーから取って着るなど、手抜きできるところを見つけて日々の負担を軽くしていきましょう。


5. 家族がガルガル期になったときはどうすればいい?

ガルガル期は本人の意思でどうにかできるものではありません。家族の立場で気持ちやつらさを完全に理解することも、当然難しいものです。しかし、日々のかかわり方や環境のストレスを少しでも緩和できれば、改善に向かうこともあります。そのためにできる家族視点での対処法を3つ見ていきましょう。

気持ちに寄り添って共感してあげることが大事

「イライラしているからそっとしておこう」「自分は仕事に専念して家族を支えよう」といった考えは、ガルガル期への対応としては逆効果です。まずはお母さんの気持ちを聞き、寄り添い、共感することが大切です。話を聞くうちに、何に不満を抱えているのか、どうすれば解消できるのかが見えてくることもあります。

「いつも頑張ってるね」「話してくれてありがとう」「今日もおつかれさま」「いつもありがとう」など、感謝や労いの気持ちを言葉にあらわすことも大切です。逆に、話の内容やお母さんの気持ちを否定したり、思い付きのアドバイスをしたり、解決を急かしたりすると、余計にお母さんのイライラを招くことになりかねません。否定したり急かしたりせずに、話をよく聞いてあげることが大切です。

お母さんがリフレッシュできる時間を作る

お母さんのストレスや疲労を解消できるよう、リフレッシュの時間を作ることもおすすめです。そのためには、家族が赤ちゃんのお世話を引き受けられるようになる必要があります。普段から育児に参加し、安心して任せられると思ってもらえるようにしておきましょう。

どうしても不安が残る場合や家族が協力できない場合は、ベビーシッターを利用するのも方法の一つです。

育児や家事で自分ができることを考える

産後のお母さんは体力を非常に消耗しており、赤ちゃんのお世話は想像以上に大変です。育児や家事は手伝いではなく、自分から積極的に参加していきましょう。

ただし、中には自分とは違ったやり方で介入されるのが苦手なお母さんもいます。勝手にやるのではなく、普段のやり方や基本的な方針を確認してから実行するように心がけてみてください。


6. まとめ

ガルガル期とは、出産後のお母さんが周囲に対してイライラしやすくなってしまう状態を指す言葉です。原因としては、母性本能やホルモンバランス、日々のストレスなどが挙げられます。リフレッシュ時間を設けたり、身近な人に助けを求めたりして、育児や家事の負担を軽くすることで対策が可能です。

環境や性格によってベストな選択は異なります。自分に合いそうな方法を選んで実践してみましょう。


執筆・監修小渕 マヤ(こぶち まや)

性教育とアロマの教室である助産院Coloré(ころれ)を運営し、性教育とアロマを通じた心と体のケアを提供。病院勤務の助産師として、分娩立ち会い300件以上、5,000組以上の母子とかかわる。また、医療ライターとして医療分野の執筆や監修を行ない、ライター向けのコンサルティングも実施している。

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