ヘルスケア特集 ヘルスケア
監修高尾 美穂 先生 医学博士 産婦人科専門医

婦人科診察を通し、女性の健康を幅広くサポート。働く女性のための産業医として企業を支える傍ら、内閣府男女共同参画局、人事局などで教育講演を担当。また、婦人科スポーツドクターとして日本スポーツ協会ではスポーツドクターの養成に携わる一方、骨盤底筋トレーニングヨガ、アスリートヨガをはじめ、ヨガ指導者を育成するセッションも積極的に行っている。


■ 女性ホルモンの減少で、体はどう変わる?

多くの女性が、まとめて「更年期」のせいと思っている不調には、実は「更年期の不調」「更年期以降の不調」「エイジングの不調」の3種類があります。

この3種類の中で、特に注意したいのが「更年期以降の不調」。女性ホルモン(特にエストロゲン)が減少することで、女性の体はそれまでとは変わり、さまざまな異常があらわれる可能性があるからです。

3種類の不調の詳しい説明はこちら

■ 意外と気づきにくい血圧の上昇

更年期以降に気をつけたい健康数値の中で、女性がつい油断しやすいのが血圧です。それまで問題がなかった方も、エストロゲンが減少すると血圧が上昇しやすくなります。そのしくみは、次のとおり。

<エストロゲンの減少が血管に及ぼす影響>
1:血管のしなやかさを保つコラーゲンが減少し、血管が硬くなる。
2:エストロゲンの材料であるコレステロールが余り、血管内に付着しやすくなる。

硬くなった血管内にコレステロールなどのプラークが溜まり、血流が悪化。血圧が上昇しやすい状態になる。

実際に女性の高血圧患者数を調べてみると、40代から増え始め、その後はどんどん増加。70代では男性とほぼ同数まで増えています。

エストロゲンという体の守りがなくなる更年期以降は、血圧が上がりやすいことを覚えておき、定期的にチェックすることが大切です。血圧の変化に気づかないまま放置すると、動脈硬化や高血圧が進行し、心臓にも負担がかかってしまいます。

血圧の変化に気づいたら生活習慣を見直し、必要に応じて専門医に相談するなど、早めの対策をおすすめします。


一般的な血圧についての詳しい情報はこちら



■ 始めるならココから! 女性の血圧対策

更年期で血圧が気になり始めた方も、これから更年期を迎える方も、早めに対策を始めましょう。血圧の上昇を防ぐために、まず見直したいのは毎日の生活習慣。4つの項目に分けて、日常生活でとり入れたい工夫をご紹介します。

食事の塩分を減らす

高血圧の予防で目標となる食塩摂取量は、1日6g未満(日本高血圧学会)。食事の塩分量を正確に把握するのは大変ですが、白いごはんに佃煮やふりかけを加えて食べる方や、ラーメンのスープを飲み干してしまう方は、日常的に塩分を摂りすぎている可能性が高いといえます。まずは毎日の食生活を見直し、ちょっとした工夫を積み重ねて無理なく減塩しましょう。

<手軽な減塩のコツ>
・食事の味つけは薄めを心がける
・みそ汁は具だけ食べて、なるべく汁を残す
・ラーメンのスープは飲み干さない
・ごはんにふりかけなどを加えるのは避ける
・ドレッシングはビネガー系やレモンに変え、野菜に直接かけずに別のお皿でつける
・フライドポテトやポテトチップスのように、塩がまぶしてあるものは控える


ストレスを減らす

更年期の間は、エストロゲンの乱高下による気分の変化やイライラにも要注意。メンタル面のゆらぎも血圧上昇の原因となってしまうからです。

心身ともに健やかな毎日を過ごせるよう、好きな音楽やハーブティーを楽しんだり、部屋のインテリアを居心地良くするなど、自分に合った方法で上手にストレス解消を心がけましょう。


しっかり眠る

仕事や家事に忙しい40代の女性は、どうしても睡眠時間が不足しがち。睡眠不足は、血圧上昇の大きな原因となります。忙しくても7時間半を目安に、毎日しっかり眠るようにしましょう。

例えば「夜11時30分に寝て朝7時に起きる」など、自分の生活に合った睡眠スケジュールを決めておき、その時間になったらサッとベッドで横になるのも良い方法です。


適正体重を保つ

エストロゲンの減少によって筋肉量や基礎代謝が低下すると、適正体重を維持するのが難しくなり、太りやすくなります。でも肥満は高血圧の危険因子。血圧の上昇を防ぐために、体重のコントロールを心がけましょう。

エストロゲンが減少しても、更年期以降の女性がみんな適正体重をオーバーしているわけではありません。更年期だけのせいにせず、生活習慣も見直すことが大切です。

特に意識したいのは、食生活の改善。毎日体重をチェックして、「少し増えたかな」と思った時点で食事の量や内容を見直し、それ以上増えないように気をつけましょう。



<高尾先生から40代女性へのエール>
体の変化と向き合い、これからの人生を楽しもう!

女性にとって、更年期はマラソンの給水所のようなもの。この先の人生を楽しめるかどうかは、ここで選択する行動によって変わってきます。

更年期まで自分の体を守っているエストロゲンの働きを知っている女性は、3割程度といわれています。更年期以降、その守りはなくなりますが、がっかりすることはありません。それまでがお得だっただけ。もともとエストロゲンの少ない男性と同じようなベースラインに戻るだけと考えれば、少し気楽に過ごせるのではないでしょうか? それに生理という重荷からも解放されるのです。

更年期は、むしろ自分の体としっかり向き合う良い機会。エストロゲン減少による体の変化を正しく知り、生活習慣を見直して、これからの人生を前向きに楽しんでほしいと思います。

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