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 1. なぜ花粉症になるの? 

花粉症は、体内に入ってきた異物(花粉)を取り除こうとすることで生じるアレルギー反応です。目や鼻から入ってきた花粉が体内の免疫システムによって「異物=敵」と見なされると、敵に対抗するための「IgE抗体」が作られます。

IgE抗体は花粉に接触するたびに作られるため、少しずつ体内に蓄積されていきます。しかし、蓄積量があるレベルに達すると、次に花粉が入ってきたときにアレルギー反応を起こすヒスタミンなどの化学物質が分泌されるようになり、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった花粉症の症状を引き起こします。


 2. 花粉症の種類や時期 

花粉症の原因となる植物の種類や時期はさまざまです。具体的に見ていきましょう。

花粉の種類

一般的に最も多い花粉症は、日本の人口森林のうち約7割を占めるスギ、ヒノキの花粉を原因とする花粉症で、いずれもヒノキ科の植物です。その他、樹木が原因となる花粉症では、シラカンバ、ハンノキ、オオバヤシャブシ、ケヤキ、コナラ、クヌギの花粉などがあります。

草本類ではカモガヤ、オオアワガエリなどのイネ科の植物のほか、ブタクサ、オオブタクサ、ヨモギなどのキク科の植物、アサ科のカナムグラなどがあります。

これらの植物も合わせて、花粉症を引き起こす植物は50種類以上あるといわれています。

花粉症の時期

スギやヒノキの花粉は2月から4月にかけて飛散するため、花粉症の時期といえば春が中心となります。また、カモガヤ、オオアワガエリなどイネ科の花粉は種類が多く、春から初秋までの長い期間飛散します。

またブタクサやヨモギなどキク科の花粉とカナムグラの花粉は、夏の終わりから秋にかけて飛散しています。

花粉症で出る症状は植物によって異なることや、地域によっても花粉の飛散量や時期が異なります。自分がどの植物に対してアレルギーが出るのかを調べておき、早めに対策をとることが重要です。

  花粉の種類 時期
ヒノキ科 スギ 2月〜4月
ヒノキ 3月〜4月
イネ科 イネ 5月〜6月
カモガヤ
キク科 ブタクサ 8月〜9月
ヨモギ

参照:花粉症環境保健マニュアル2022


 3. 花粉症の対策方法 

花粉症を予防するには、なるべく花粉を吸い込まないようにすることが大切です。ここでは、具体的な対策方法をご紹介します。

手洗いうがい・洗顔を行う

外出により喉や顔に付着した花粉は、すぐに落とすことが大切です。帰宅した時には、うがい・手洗い・洗顔をしましょう。

髪や衣服を払ってから家に入る

外出すると、花粉は髪の毛や衣服にも付着します。帰宅したら、玄関に入る前に洋服や髪の毛に付いた花粉をよく払い落としましょう。

マスクやメガネ、帽子を着用する

花粉の飛散シーズンに外出する場合はマスクやメガネを着用し、花粉が目や鼻などに付かないよう注意しましょう。帽子をかぶることも効果があります。

空気清浄機や加湿器を使用する

上記のような対策をとったとしても、家の中にまったく花粉を持ち込まないことは難しいでしょう。そこで効果的だと考えられるのが、空気清浄機や加湿器の使用です。

乾燥は花粉症の症状を悪化させると考えられています。加湿器で部屋の湿度をある程度保っておくことは、花粉症の症状を和らげる意味でも有効でしょう。

洗濯物は部屋干しにする

なるべく室内に花粉を入れないようにするためにも、花粉の飛散シーズン中は、屋内に洗濯物を干すのがおすすめです。

部屋の掃除や換気をこまめに行う

花粉が室内に持ち込まれた場合でも、掃除機をかけることである程度花粉を除去することができると考えられています。

換気も効果的ですが、場合によっては注意が必要です。屋外で花粉が大量に舞っているような風が強く晴れた日などは、かえって花粉を屋内に入れてしまう可能性があります。

花粉が多い日や時間はなるべく避けて外出する

花粉が多く舞っている日や時間は、よく晴れていて湿度が低く気温が高い日、雨の日の翌日、そして風の強い日と考えられています。そのような日はできるだけ外出を避けるようにしましょう。


 4. 花粉症で肌が荒れることも? 

花粉症では、くしゃみや鼻水、涙、咳、目のかゆみなどの症状のほか、花粉によって肌が荒れることもあります。その場合はどのように対処すべきなのでしょうか。

花粉症による皮膚炎とは? 対策はあるの?

花粉による皮膚炎とは、肌のバリア機能が低下したところに花粉による刺激が加わることで、アレルギー症状を起こした状態の肌を指します。

皮膚が乾燥すると肌のバリア機能が落ちてしまい、花粉の中の抗原が皮膚内に入ってしまいます。それを予防する基本的な対策として保湿などのスキンケアが有効で、角層のバリア機能を保つことが重要です。

スキンケアのポイント1 保湿

スキンケアでは、表皮の一番外側にある角層をみずみずしい状態に保つことが大切です。まずは洗顔料をたっぷり泡立ててやさしく洗い、花粉など肌に付着した汚れをきちんと落としてから、すみやかに化粧水や乳液で保湿しましょう。

スキンケアのポイント2 肌に刺激を与えない

肌荒れがひどいときは、肌に刺激を与えない工夫も必要です。洗顔後のタオルドライや化粧品をコットンでつけるときは、肌を摩擦しないように注意します。毎日使う基礎化粧品は、低刺激処方のものを選ぶと良いでしょう。


 5. 花粉症を悪化させる要因 

花粉症の要因は、日々の生活の中に潜んでいます。ここでは、花粉症を悪化させる要因について具体的に解説します。

喫煙

タバコの煙は、鼻の粘膜を直接刺激します。鼻づまりを悪化させる原因となり、花粉症による症状をさらに悪化させてしまう可能性があります。

ストレス

ストレスは、自律神経を狂わせたり、免疫のバランスを崩したりするといわれています。免疫のバランスが崩れると、少しの花粉に対しても過剰に反応してしまう場合があります。

食生活・生活習慣の乱れ

食生活が乱れると、バランスよく栄養を摂ることが難しくなってしまいます。また、睡眠が足りてないと免疫やホルモンのバランスを崩しやすくなり、花粉症の症状を悪化させる原因になってしまうことがあります。

そのため、バランスのとれた食事や規則正しい生活が花粉症対策には大切です。

室内環境が悪い

掃除や換気を怠ると、室内の床に落ちた花粉が何回も空中に舞い上がり、花粉症の症状を引き起こす原因になる場合があります。

腸内環境の悪化

過度な衛生的生活環境により、微生物と接触する機会が著しく減少したことや、食生活の変化などによって腸内細菌が乱れてしまい、免疫のバランスが崩れることも、花粉症の原因の一つとなると考えられています。

以下の記事では、腸内環境を良くするための方法などを解説しています。ぜひ併せてご確認ください。

 6. 症状が酷くなった場合は病院へ 

いくら花粉症を防ぐためのケアをしていても、花粉症になってしまうことはあります。もし症状がひどくなってしまったら、早めに病院で受診することをおすすめします。

花粉症の治療は大きく分けて、症状を抑えるための「対症療法」と、完全に治すための「根治療法」があります。それぞれご紹介します。

対症療法

対症療法には、内服薬、点鼻薬、点眼薬を使った薬物療法があります。

内服薬では第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられていますが、鼻づまりが強い場合には抗ロイコトリエン薬も使われます。点鼻薬は噴霧用の各種ステロイド薬、点眼薬は結膜炎の治療に用いられる抗ヒスタミン点眼薬やステロイド点眼薬が使われます。

しかし、ステロイド点眼薬は眼圧上昇などの副作用があり、放置すると緑内障にいたる危険性もあるため、使用中には定期的な眼科受診が必要となります。

根治療法

根治療法としては、アレルゲン免疫療法(減感作療法)が代表的なものとして挙げられます。近年では、重篤な副作用が少なく頻繁に医療機関を受診する必要のない舌下免疫療法が実用化され、良い治療成績を挙げています。


 7. まとめ 

今回は、花粉症の原因や対策、治療法について解説しました。

花粉症の対策においては、治療だけでなく、花粉を体内や室内に取り込まないようにすることや保湿などのセルフケアも大切です。この記事を参考に、花粉症の季節をうまく乗り越えていきましょう。

執筆・監修木村 香菜 行政機関である保健センターで感染症対策等主査として勤務した経験があり、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医としてがん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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