知りたい!美容と健康Tips ヘルスケア

 1. 鉄分の主な役割は? 1日にどれくらい必要? 

鉄分は、酸素を全身に届けるだけでなく、日々の活力や美容、健康を守るために欠かせない栄養素の一つです。この章では、鉄分の主な働きと、1日に必要な推奨量や不足しやすい背景について解説します。

鉄分の主な役割

鉄分は血液をつくるだけでなく、体を支える多くの働きに関わっています。その中でも特に重要な4つの役割についてご紹介します。

① 酸素を全身に届ける
血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの成分となり、肺で取り込んだ酸素を体中に運びます。酸素が臓器や筋肉に届くことで、体を動かす力につながります。

②エネルギーを作り出す
鉄分は、細胞の中でエネルギーをつくり出す働きに関わっています。体内での代謝サイクルをサポートし、毎日の活動をスムーズに進めるための力につながります。

③コラーゲン合成を助ける
肌や骨、血管の健康を保つコラーゲンの合成をサポートします。ハリのある肌や丈夫な体づくりを支えるため、美容や健康を気にする方にとっても重要です。

④ 免疫機能を維持する
免疫細胞の働きを支え、体をウイルスや細菌から守ります。風邪をひきにくい体づくりや体調管理にも役立ちます。

1日に必要な鉄分

1日に必要な鉄分(推奨量)は、成人男性で7.0〜7.5mg、成人女性(月経あり)では10.0〜10.5mgとされています。

厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20〜50代の男性の平均摂取量は7.4〜7.7mgで、推奨量をおおむね満たしています。

一方で女性は平均摂取量が6.5〜7.1mgと推奨量を下回っており、特に20〜40代では3割以上不足していることがわかります。そのため女性は、日頃から意識して鉄分を取り入れることが大切です。

※厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに作成


鉄分不足は女性に多い?

鉄分は誰にとっても大切な栄養素ですが、特に不足が目立つのは前述したとおり女性です。

その背景には月経による出血や、妊娠・出産・授乳といったライフイベントによって鉄を失いやすいという特徴があります。さらに、男性に比べて食事量が少ないことや、ダイエットによる偏食、肉や魚を控える食習慣も鉄分不足につながります。

女性にとって不足しやすい栄養素だからこそ、普段の食事で鉄分摂取を意識しつつ、不足しているときにはサプリメントも活用し、鉄分を十分に摂るようにすることが大切です。


 2. 鉄分の「非ヘム鉄」と「ヘム鉄」の違い  

鉄分には植物由来の「非ヘム鉄」と動物由来の「ヘム鉄」があり、体内に摂取した後の吸収率では非ヘム鉄が約15%、ヘム鉄は約50%と大きな違いがあります。

非ヘム鉄は通常は吸収率が低いとされますが、近年の研究では鉄分が不足している状態の時は、吸収率が大幅に高まることが示されています。

ヘム鉄はたんぱく質に包まれた状態になっており、ほかの食品と摂取しても吸収を妨げられにくい特徴があります。

鉄分を摂取する際には「どちらか一方」ではなく、野菜・豆類・海藻などに含まれる非ヘム鉄と、肉・魚などに含まれるヘム鉄をバランス良く組み合わせて摂ることが大切です。


 3. 非ヘム鉄が含まれる食材は緑黄色野菜や豆類 

非ヘム鉄は、日常的に食卓にのぼる副菜や常備菜など、身近な野菜や豆類に多く含まれています。肉や魚に比べると主役になりにくい食材ですが、毎日の食生活を通じて鉄分を補ううえで大切な存在です。

ここでは、非ヘム鉄を豊富に含む食材や、取り入れやすいおすすめのメニューについてご紹介します。

非ヘム鉄を含む食材

非ヘム鉄を含む代表的な食材には、次のような野菜や豆類があります。

食品名 100gあたりの含有量
大豆

7.7mg

納豆

3.3mg

小松菜(生)

2.8mg

ブロッコリー(焼き)

2.3mg

ほうれん草(生)

2.0mg

さつまいも(皮なし/生)

0.6mg

※参照:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

常備菜や副菜として食卓に並べやすいものが多く、自然に取り入れやすいのが特徴です。

非ヘム鉄を摂取するためのおすすめメニュー紹介

非ヘム鉄を含む野菜は、日々の副菜や常備菜として手軽に取り入れられます。ここでは、効率的に鉄分を摂取できる副菜メニューをご紹介します。

●ほうれん草のおひたし
サッとゆでたほうれん草をおひたしに。柑橘系のポン酢を合わせると、ビタミンCの働きで非ヘム鉄の吸収率が高まります。
ほうれん草は、長い時間ゆでたり長時間水に浸すと栄養素が損なわれてしまうため、ゆで過ぎには注意しましょう。

●納豆と小松菜の和えもの
非ヘム鉄を含む納豆に、小松菜をサッとゆでて合わせた一品。大豆のたんぱく質が鉄分の吸収を助け、日常的に取り入れやすい副菜です。
小松菜も長くゆですぎると栄養が損なわれてしまうため、軽くゆでる程度にしましょう。電子レンジで加熱する方法もおすすめです。

●さつまいものレモン煮
甘みのあるさつまいもを、レモン果汁を加えてさっぱりと煮る定番料理です。非ヘム鉄を含むさつまいもに、ビタミンC豊富なレモンを合わせることで鉄分の吸収率が高まります。お弁当の副菜や常備菜にも便利です。

このように、普段の副菜や常備菜を工夫するだけで、非ヘム鉄を自然に摂ることができます。副菜や常備菜にうまく取り入れて、日々の鉄分不足を補いましょう。


 4. ヘム鉄が含まれる食材は魚介類や肉類 

ヘム鉄は、肉や魚など主菜となる食材に多く含まれています。食卓の中心となる料理から自然に摂取できるため、鉄分補給に大きな役割を果たす存在です。

ここでは、代表的な食材とメインディッシュにピッタリのおすすめのメニューについてご紹介します。

ヘム鉄が豊富な魚や肉

ヘム鉄を多く含む代表的な食材には、次のような食材があります。

食品名 100gあたりの含有量
あさり(缶詰/水煮)

30.0mg

豚レバー(生)

13.0mg

鶏レバー(生)

9.0mg

牛ひき肉(焼き)

3.4mg

牛もも(赤肉/生)

2.8mg

かつお(生)

1.9mg

まぐろ(赤身/生)

1.8mg

豚ひき肉(焼き)

1.6mg

鶏ひき肉(焼き)

1.4mg

※参照:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

これらはメイン料理として取り入れやすく、効率的に鉄分を補うことができる食材です。さらに野菜や豆類など非ヘム鉄を含む食材と組み合わせることで、鉄分だけでなく、トータルで栄養バランスの良い食事につながります。

ヘム鉄を摂取するためのおすすめメニュー紹介

ここでは、ヘム鉄を多く含む肉や魚を使った、おすすめの主菜メニューをご紹介します。 

●牛肉とピーマンのオイスター炒め
赤身の牛肉に含まれるヘム鉄を、ビタミンCを多く含むピーマンと組み合わせることで、鉄分の吸収率が高まります。

●鶏レバーの甘辛煮+レモン添え
鉄分が豊富なレバーは、調理後にレモン汁を軽くかけることで、ビタミンCの働きで吸収を助けられます。

●かつおのたたき(ポン酢仕立て)
鉄分豊富なかつおを、ビタミンCを含む大根おろしや薬味野菜と一緒に食べると、効率良く鉄分を摂取できます。

このように、肉や魚を使った主菜を上手に活用すれば、効率良く鉄分を補給できます。主菜からしっかり鉄分を摂りつつ、副菜を組み合わせれば、健康的でバランスの取れた食事につながります。


 5. 鉄分を効率良く摂る方法やポイント 

鉄分を効率良く摂取するには、鉄分を多く含む食材を選び、吸収率を高める食材と組み合わせることが大切です。併せて生活習慣の見直しや、腸内環境の改善も考慮する必要があります。では、具体的な方法を5つ見ていきましょう。

鉄分が豊富な食材を取り入れる

鉄分は体内で作り出すことができないため、日々の食事で積極的に補うことが大切です。赤身の肉や魚介類に含まれるヘム鉄は吸収率が高く、体内に取り入れやすい特徴があり、主菜として1回当たりの摂取量も多くなります。

一方、小松菜や大豆製品、海藻などに含まれる非ヘム鉄は、毎日の食卓に取り入れやすく継続的に摂取しやすい点が魅力です。

単に鉄分を含む食材を取るだけでなく、それぞれの特徴を理解したうえで、動物性食品と植物性食品をバランス良く組み合わせることが、鉄分不足を防ぐ効果的な方法です。

吸収率を高めてくれる食材を合わせて摂る

鉄分の吸収率は、ヘム鉄が50%、非ヘム鉄は15%と低くなっているため、吸収率を高めてくれる栄養素と一緒に取り入れると良いでしょう。一緒に摂ると鉄分の吸収率を高めてくれる栄養素と代表的な食品は、下表のとおりです。

栄養素 代表的な食品
ビタミンC


・ピーマン(パプリカ)
・ブロッコリー
・ゴーヤ
・キウイフルーツ
・イチゴ
・柿 など

クエン酸


・柑橘類(レモン・オレンジなど)
・梅干し
・トマト
・キウイフルーツ
・パイナップル など

たんぱく質


・肉類
・魚介類
・大豆製品
・乳製品 など

ビタミンCやクエン酸は鉄分を吸収しやすい状態に変える働きがあることから、鉄分を含む食材と積極的に組み合わせましょう。

例えばピーマンの肉詰めは、ひき肉の鉄分とピーマンのビタミンCを同時に摂取できるため、吸収率アップが期待できます。そのほか、まぐろのカルパッチョにトマトを添えるとクエン酸の効果で鉄分が吸収されやすくなるなど、ちょっとした工夫で鉄分が摂りやすくなります。

また、たんぱく質は非ヘム鉄の吸収を助ける働きがあるため、ぜひ組み合わせてみましょう。前述メニューを参考にしながら、作りやすく家族が食べやすい組み合わせを見つけてみてください。

もし、吸収率を高める食品を同時に摂取できなくても大丈夫。食後のデザートに季節のカットフルーツを食べるだけでも、吸収率がアップします。缶詰のフルーツもビタミンCを含むため、必ずしも生のフルーツにこだわる必要はありません。

全体の栄養バランスも考える

鉄分を効率良く摂るには、鉄分だけに注目するのではなく、食事全体のバランスを整えることが大切です。炭水化物・たんぱく質・脂質の三大栄養素をはじめ、ビタミンやミネラルも合わせて摂取することで、体内での鉄分の働きがよりスムーズになります。

具体的には「主食(ごはんなど)・主菜(肉や魚中心のおかず)・副菜(野菜のおかず)・汁物」がそろった定食スタイルが望ましいとされています。

栄養素一つひとつを意識して組み合わせることで、鉄分をはじめとする栄養素を健康的に補うことができ、さらに相乗効果によって体の調子をより良く整えることが期待できます。

生活習慣の見直しや腸内環境を整える

鉄分の吸収効率を高めるためには、生活習慣の見直しと腸内環境の改善が不可欠です。生活リズムを整え、十分な睡眠を確保することは、ストレスの緩和になります。ストレスがたまっていると胃腸の機能低下につながり、鉄分の吸収が悪くなるのです。

また、適度な運動を取り入れることでストレス解消になるだけでなく、新陳代謝を促し赤血球の生成が促進されます。

さらに、腸内環境を整えることで消化と吸収の機能が向上し、鉄分だけでなくほかの栄養素も効率良く利用できます。そのためには野菜や果物、発酵食品を摂取することが重要です。善玉菌が豊富な腸内環境を保つことで、健康的な体作りにつながります。

サプリメントを活用する

鉄分は身近な食材から摂れる栄養素ですが、日常の食事だけで必要量を満たすのは簡単ではありません。特に女性は月経や妊娠・授乳などによって必要量が大きく変化し、不足しやすい傾向があるため、日頃から積極的に鉄分を補給していくことが大切です。

「鉄分が足りているか不安」と感じる場面でも、サプリメントなら必要量を無理なく手軽に補うことができます。鉄分不足の不安をやわらげ、忙しい毎日を支えてくれる心強い存在です。

バランスの良い食事を基本にしながら、日々の健康維持のサポートとして、また体調やライフステージに合わせた補助として、サプリメントを活用してみることもおすすめです。


 6. 鉄分を摂る際に気をつけるべきこと 

鉄分を効率良く摂るポイントと合わせて覚えておいてほしいのが、鉄分の吸収を阻害するといわれている食品があること。「タンニン」「リン」「フィチン酸」「食物繊維」は鉄分の吸収を阻害するため、これらを含む食品を過剰摂取しないよう注意が必要です。

栄養素 代表的な食品
タンニン


・コーヒー
・緑茶
・ワイン など

リン


・インスタント食品
・加工食品 など

フィチン酸


・玄米
・とうもろこし
・ごま など

食物繊維


・野菜類
・果物類
・豆類
・穀類

■タンニン
タンニンはコーヒーや緑茶、ワインなどに含まれる成分です。ポリフェノールの一種で、抗酸化作用を持つことから、生活習慣病の予防や老化予防に役立つといわれています。ただし、鉄分の吸収を阻害する働きがあるため、これらの飲み物は食事中ではなく、食後に楽しむようにしましょう。食事中は水や麦茶などがおすすめです。

■フィチン酸
フィチン酸とはビタミンBの一種で、抗酸化作用があります。玄米やとうもろこし、ごまなどの穀類に多く含まれているのですが、鉄分の排出を促す働きがあるため、注意が必要です。鉄分を効率良く摂取したい場合は、主食を玄米から白米に変えるか、玄米を食べる頻度を少なくするとよいでしょう。

■リン
リンは歯や骨の維持に必要な栄養素ですが、摂取量が多くなりすぎると鉄分の吸収を阻害することが分かっています。リン酸ナトリウムや、リン酸塩などの食品添加物はインスタント食品や加工食品に使用されているため、これらを食べる機会が多い方は注意が必要です。

■食物繊維
食物繊維は野菜や果物、穀類、豆類など、多くの植物性食品に含まれており、不溶性食物繊維(ごぼうやきのこに多く含まれる)と水溶性食物繊維(海藻や果物などに多く含まれる)にわけられます。そのうち、不溶性食物繊維は非ヘム鉄の吸収率を下げてしまいます。ただし、一般的な食事の範囲であれば、心配する必要はありません。むしろ、食物繊維不足による腸内環境の乱れの方が問題となるため、控えすぎないようにしましょう


 7. まとめ 

鉄分は、酸素を全身に届けて体を動かす力を生み出すだけでなく、エネルギーづくりや肌のコラーゲン合成、免疫機能の維持など、健康と美容を支える多彩な役割を持つ栄養素です。特に月経のある女性や妊娠・授乳期の女性は不足しやすく、意識的な摂取が欠かせません。

鉄分をしっかり摂るためには、動物性食品に含まれるヘム鉄と、野菜や豆類に含まれる非ヘム鉄の両方を取り入れることが大切です。さらに、ビタミンCを含む食材やたんぱく質と組み合わせることで吸収が高まり、主食・主菜・副菜をそろえた食事スタイルが不足予防につながります。

それでも「鉄分が足りているか不安」と感じるときには、サプリメントを補助的に活用するのもおすすめです。疲れやすい時期や、食欲が落ちるときにも無理なく続けやすく、効率的に鉄分を補給できます。

バランスの良い食事を基本にしつつ、ライフスタイルに合わせてサプリメントを上手に取り入れることで、鉄分不足を防ぎ、元気と美しさを支えるすこやかな毎日につなげていきましょう。


監修・執筆松下 彩香(まつした あやか) 看護師、医療ライター

急性期病院で10年間、新生児から老年期まで幅広い世代の看護と診療科を経験。現在は医療ライターとして、予防医学や栄養を中心に医療・健康分野の記事を執筆。専門知識と当事者視点をかけ合わせ、生活者に寄り添った、わかりやすく信頼性の高い情報発信に努めている。

バックナンバー BACK NUMBER

バックナンバー一覧