からだのこと
犬の腸で悪玉菌が増えるとどうなる?どういうときに増えやすい?
犬が下痢や便秘になりやすい場合は、腸の悪玉菌が増えている可能性が考えられます。この記事では悪玉菌が腸に及ぼす影響や、増えやすいケースをご紹介します。悪玉菌を増やさないよう気をつけ、愛犬の腸内環境を健康に保つ参考にしてください。
そもそも悪玉菌とは?腸にはほかにどんな菌がいる?
「悪玉菌」は、体に悪い影響をもたらすことを特徴とする腸内の菌の総称です。腸内のたんぱく質を腐敗させる、発がん性物質などの代謝物をつくるなどの作用があり、さまざまな不調を引き起こします。
犬の腸には、ほかにも「善玉菌」や「日和見(ひよりみ)菌」と呼ばれる菌がいます。善玉菌は消化吸収をサポートし、免疫機能を活性化するなど、体によい影響を与えます。日和見菌は、善玉菌と悪玉菌のうち優勢な方に加勢する菌です。
悪玉菌が増えるとどうなる?
腸内で悪玉菌が増えると、数が多い日和見菌が悪玉菌の味方になってしまい、腸内環境が悪化しがちに。それによって下痢や便秘になる、食欲が落ちる、毛づやが悪くなる、免疫のバランスが崩れアレルギーが起きやすくなるなどの悪影響が起こりやすくなります。放っておくと将来重大な疾患につながる可能性も。
悪玉菌が増えるとどうなる?
悪玉菌の数が増える原因には、食生活の変化や老化による消化吸収機能の低下、ストレスなどが挙げられます。
食生活においては、栄養バランスが偏ったフードや、その子の消化吸収能力や体質に合わないフードは腸内環境を乱す要因となります。体質は年齢によって変わることもあるので、愛犬に与えているフードが合っているか、適宜見直してみてください。
ストレスが多い生活環境では自律神経の働きが乱れやすく、悪玉菌が増殖しやすくなります。ストレスを解消するには、適度な運動をすることが効果的な犬も多いです。散歩に行ったり、室内で一緒に遊んだりしてストレスをしっかり発散させてあげましょう。また、老化や運動不足によりおなかや足腰の筋肉が衰えると、便を排せつしづらくなり、便秘になりやすくなります。便を送りだす腸の「ぜん動運動」を促すためにも、適度な運動でおなかまわりの筋力を保ちましょう。
さらに、歯周病が腸内バランスに影響を与えることもあるといわれています。歯周病などによる口腔環境は、老化に伴い特に悪化しがちです。歯周病菌が腸の中に入り込み、腸内に有害な細菌が増えることでさまざまな悪影響が出ることもあるようなので注意しましょう。
まとめ
愛犬が下痢や便秘をしがちなら、腸内環境を整えるため、フードを見直してみることも大切です。悪玉菌を増やさないためには、愛犬がストレス過多になっていないか愛犬の様子を注意深く観察してみましょう。散歩や遊びでストレスを解消し、愛犬の腸を健康に保ちましょう。
獣医師からのアドバイス
悪玉菌が大腸内で未消化のたんぱく質を腐敗させると、アンモニアや硫化水素、アミンといった有害な物質や発がん物質が産生されます。これらの物質は、腸内環境を悪化させるだけでなく、大腸から吸収されて、全身にも悪影響を及ぼします。近年、これらの有害物質が、免疫力を低下させたり、大腸がんや肥満をはじめとする生活習慣病の発症にも関与しているとの報告がなされています。高齢になってからの健康寿命を延ばすためにも、おなかの健康維持に努めましょう。
左向 敏紀 先生
日本獣医生命科学大学 名誉教授
一般社団法人 日本ペット栄養学会会長
・画像/Getty