健康や美容、筋トレ、ダイエットに、「たんぱく質」が注目されています。
特に40代からは、今までどおりの食べ方では十分に補えていないかもしれません。
夏の暑さによるダメージからのリカバリーが重要になる秋に向け、
たんぱく質との上手な付き合い方を、管理栄養士の牧野直子さんに教わります。
肌や髪、骨、筋肉、内臓、血液、脳、ホルモンに至るまで、人体のほぼすべてはたんぱく質を材料にしています。生きるうえで最も重要な栄養素のひとつといえるたんぱく質を、私たちは体内で作り出すことができず、毎日の食事から摂るしかありません。
摂取したたんぱく質は体内で分解され、私たちの体の一部として再合成されます。一度再合成されたら終わりではなく、その後も分解と合成を繰り返しています。
1日に合成される量と分解される量は同じです。例えば体重60kgの人なら、1日に180g程度が分解され、そのうち120gは体を作るのに再利用され、残りの60gは尿などとともに排出されます。この排出量分を食事から摂ることで、体と健康は保たれています。つまり60kgの人なら、1日およそ60gを食べる必要があるのです。
必要量は、年齢や性別、運動の習慣などで変わります。
まずはあなたが1日に必要な量の目安を計算してみましょう。
体重(kg)×0.8~1.0= g
例)60㎏×0.8~1.0=48~60g
体重(kg)×1.2~2.0= g
例)60㎏×1.2~2.0=72~120g
体重(kg)×1.0~1.2= g
例)60㎏×1.0~1.2=60~72g
出典:『1食20gが簡単にとれる! たんぱく質しっかりおかず』池田書店
「60gなんて軽く食べてる!」と思っているあなた、本当にそうでしょうか?
仮に100ℊの肉を食べたとして、その100ℊがすべてたんぱく質でできているわけではありません。
例えば、皮付きの鶏むね肉なら100ℊ中たんぱく質は21.3g、豚ロースなら19.3g、あじなら19.7g程度です。
たんぱく質が不足すると、筋肉量や骨量が減少したりと、その影響は全身に及ぶことに。
まずは、たんぱく質不足に陥っていないかどうか、チェックしてみましょう。
- 朝食を抜きがち、朝食を食べる習慣がない
- スナック菓子をよく食べる
- ダイエットをしている
- 小食、食が細い
- ごはんやパン、麺などが主でおかずのない食事が多い
- 野菜中心の食生活をしている
- 肉は太りそうなので、少ししか食べない(または、ほとんど食べない)
- 魚が苦手、あまり食べない(または、ほとんど食べない)
- 大豆製品が嫌い、あまり食べない(または、ほとんど食べない)
- 乳製品が苦手、あまり食べない(または、ほとんど食べない)
予備軍です
疑いあり
不足しています
歳をとると体型が変わってくるのは、筋肉が減っていくことも原因の一つです。筋肉量が減れば、基礎代謝は落ちます。それなのに若い頃と同じ食事を続けていれば、太るのは当然です。
しかし、たんぱく質は減らすどころか、年齢を重ねるほど意識して、筋肉量維持のためにしっかり摂りたい栄養素です。大人がたんぱく質を必要とするのは成⾧するためではなく、体の機能や働きを維持するためと心得ましょう。
40歳以降の方で、若い頃ほど量を食べられなくなった、あるいは太るのを気にして肉や乳製品をあまり食べないなど、上のチェックリストに✓がたくさん付いた方は要注意です。
実はたんぱく質は、一度にまとめてドカ食いすればいいという訳ではありません。
せっかく食べるのですから、しっかり身につくよう賢く食べたいものです。
1日3食に分けて食べる
一度の食事で吸収できるたんぱく質の量は20g程度といわれています。それ以上摂っても排出されてしまううえ、エネルギーの摂り過ぎになると中性脂肪として蓄えられてしまうことに。
特に朝食でしっかり摂る
夕食から朝食までは、⾧い時間を食べずに過ごします。寝ている間にも細胞の生まれ変わりは続いており、寝起きの体はたんぱく質が不足している状態です。
主食もしっかり食べる
ごはんやパン、パスタなどの主食は、1食あたり3~5gのたんぱく質を含みます。これを3食しっかり食べれば、1日の必要量の2割程度は摂れることに。
多品目でバランスよく!
肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、できるだけさまざまなたんぱく質源を摂ることで、さまざまな種類のアミノ酸が摂れるうえ、たんぱく質以外の栄養素もバランス良く摂取できます。
3度の食事で足りないときは、
おやつで
朝を抜いた、昼はおにぎり一個だったなど、1食で十分にたんぱく質を摂れないときもありますよね。そんなときは、チーズやヨーグルト、豆乳など手軽にたんぱく質を摂れるスナックをおやつに。
毎日食べる料理で、実際にどのくらいのたんぱく質が摂れているのでしょうか?
身近な定番メニューの目安を紹介しますので、1食分の参考にしてみてください。
たんぱく質20g以上
鯖の味噌煮
約24g
味噌大さじ1/2として
麻婆豆腐
約25g
豚ひき肉50gとして
鶏肉の照り焼き
約24g
豚肉の生姜焼き
約24g
たんぱく質20g未満
チーズ入りスクランブル
エッグ
約16g
湯豆腐
約18g
チーズトースト
約10g
納豆たまごごはん
約17g
たんぱく質を含むスナック
ヨーグルト
約4g
豆乳
約6g
ミックスナッツ
約4g
ゆで卵
約6g
からだの土台となるたんぱく質。肉や魚、卵、大豆製品などから、
まんべんなく摂れるように心がけましょう。
1回の食事で“手のひらにのる程度”を目安にすると分かりやすいと思います。
牧野 直子
(まきの なおこ)
先生
牧野 直子(まきの なおこ)先生
管理栄養士、料理研究家、スタジオ食(くう)代表。健康、美容の幅広いテーマでレシピ開発や栄養指導、講師活動を行う。家庭でムリなく作れるシンプルなレシピ、分かりやすい解説に定評がある。著書は『1食20gが簡単にとれる! たんぱく質しっかりおかず』(池田書店)など多数。
イラスト:川添むつみ
イラスト:川添むつみ