30代半ばから40代半ばまでの「プレ更年期」は、
女性ホルモンのゆらぎの影響で体調の変化を感じやすい時期。
その影響は体を支える「骨」にも及んでいるって知っていますか?
いつまでも背筋がのびた健康美を保つためにも、
今からやっておきたい骨の健康対策をご紹介します。
更年期の前哨戦ともいえる「プレ更年期」。
この時期は女性ホルモンのゆらぎによって、さまざまな体調の変化を感じやすいといわれています。
ちょうどこの年代は、仕事と育児、介護などの両立で忙しい時期とも重なるため、
睡眠不足や運動不足から心や体に負担がかかっている人も多いでしょう。
プレ更年期世代はまだまだ体力があってがんばりが利くため、無理をしがちですが、
年齢による体の変化は待ってくれません。中でも目に見えない骨の健康は注意を怠りがちです。
そこで、まずは「骨の健康チェック」でご自身の骨の健康度を確認してみましょう。
チェックが多かった人は、今のうちから将来の骨の健康問題にしっかりと取り組みたいものです。
✓が3つ以上の場合
その世代の平均値より
骨量が少なめかもしれません。
✓が3つ以上の場合
プレ更年期にさしかかっている可能性があります。
AB両方に3つ以上チェックがついた人は、早めの骨対策を。
私たちの体を支える大事な骨は成長期にどんどん作られ、20代で骨量が最大になる「ピークボーンマス」を迎えます。この骨量は表のように更年期まで維持されますが、閉経を境に急激に減っていきます。
なぜ閉経後に骨量が減ってしまうかというと、骨を健康に保つのに一役買っている女性ホルモンの1つ「エストロゲン」が減っていくからです。
骨は、破骨細胞が古くなった骨を壊し、骨芽細胞が新しく骨を作るという新陳代謝を毎日繰り返し、3~4年で全身の骨が入れ替わっています。
ところが、エストロゲンが減るとこの新陳代謝のバランスが崩れ、破骨細胞の量が増えて、骨芽細胞が骨を作るペースを上回るようになります。
その結果、骨量の低下が生じてしまうのです。
資料/骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル
第2版(ライフサイエンス出版2014年)を引用
「そんなこと言っても、更年期以降の骨の健康なんてまだ私には関係ないわ」。
そう思う人もいるかもしれませんが、骨量の減少は知らず知らずのうちに始まっています。
鏡で顔を見たときに、「ちょっと老けてきたかな」「目の彫りが深くなってきたかも」。そんな変化があったら、まさにそれは骨量低下のサインかもしれません。
骨には体重や重力から体を支えている骨(大腿骨や背骨など)のほかに、体の大切な臓器や器官を守るために存在している骨があります。代表的なのが頭蓋骨(とうがいこつ)で、海綿骨といってほかの骨よりも薄く、骨量の低下が最初に現れる場所と考えられています。
プレ更年期になって気になり出した顔の変化は、加齢による皮膚の変化だけではなく、目の周りの骨が萎縮し、それによって骨にくっついている靱帯や筋肉がゆるむことで起こっている可能性もあるのです。
このように骨の健康問題は顔(頭蓋骨)の変化から始まりますが、実際は骨量が減っても自覚症状がないため、圧迫骨折(骨が潰れることで起こる骨折)などを起こして、初めて骨の状態がわかるケースがほとんどです。
だからといって、将来のためにも骨の健康問題を放置するわけにはいきません。
そこで勧めたいのは、「骨密度検査」で自分の骨の状態を客観的に知っておくことです。
骨密度検査は一般的には「DEXA法(わずかなX線をあてて正確な骨密度を測定する方法)」で行われますが、この検査法以外にも、かかとに超音波をあてて測る簡易的な方法などでも骨の状態をチェックすることができます。
簡易検査は薬局やドラッグストア、健康フェスなどで実施しているので、目にする機会があったらぜひ受けてください。また、自治体のなかには40代から骨密度を測る健診が行われているところもありますので、それらを活用するのも手です。
重要なのは「更年期前に一度測っておくこと」。そうすると更年期以降の骨量の減り方を、ある程度予測することができます。
※骨密度測定結果の一例です。
- 若年成人の80%以上:正常
- 71~80%:骨量減少
- 70%以下:骨粗しょう症
資料提供:ゆりクリニック
残念なことに、骨は筋肉のように丈夫にすることはできません。ですから、20代で迎えたピークボーンマスをいかに維持できるかが大事なポイントになります。
骨の健康の維持に役立つのは大きく3つ、「運動」「日に当たる」「栄養」です。
骨の代謝は骨に刺激を与えることで活性化されます。それには運動が欠かせません。軽い運動でも効果があり、「ウォーキング」や「かかと落とし」「階段下り」などが有効なことが分かっています。一方、重力がかからない水泳や、激しい運動は骨に関してはあまり効果がありません。
また、日に当たると皮膚でビタミンDが作られます。ビタミンDは骨の材料となるカルシウムが骨になるのを助けてくれるので、1日15分ほど、手のひらなど日焼けが気にならない場所を日に当てるようにしましょう。
食事は栄養バランスを考えてとるのが一番です。 骨の健康を維持するにはカルシウムだけでなく、たんぱく質や先に挙げたビタミンD、ビタミンK、マグネシウムなども必要です。 肉や魚、卵、大豆製品、野菜、海藻、くだものなどをバランス良く摂ることで、骨に必要なさまざまな栄養を体に取り入れることができるのです。
体調の変化が表れやすいプレ更年期。将来のためには自覚症状がない骨の健康問題にも気を止めておく必要があります。 まずは一度骨量をチェックし将来の骨折リスクを把握すること。そして運動、日に当たる、食事という3つの対策で骨の健康を維持していきましょう。
矢吹 有里
(やぶき・ゆり)先生
整形外科医として23年間治療にあたる中、閉経後の女性に多い骨粗しょう症による骨折を日々、目の当たりに。治療と予防を目的としたクリニックを開院し専門治療に取り組む。 強い骨づくりで健康寿命を延ばし、美しさをアップする「骨美容」を提唱。 2021年には「ゆりクリニックスタジオ」を立ち上げ、運動する機会のない女性たちに運動の場を提供している。