寒さがこたえる季節がやってきました。
手や足が冷たくなる「末端の冷え」に悩まされている方も多いのでは?
冷え対策のためによかれと思ってやっていた温活が、末端の冷えに効くとは限りません。
冷えの原因を知って温活の正しい知識を身につけ、
食事や生活習慣を見直すことで末端の血流を改善し、温かさを保ちましょう。
冷えと一口に言っても、状態は人それぞれ。薬膳師の瀬戸佳子先生によると、からだ全体の温度が低い「全身冷えタイプ」と、手足だけが冷たい「末端冷えタイプ」に大きく分かれ、冷えの原因や解消法はその人の状態によって異なるそう。まずは自分がどのタイプに近いのか、チェックしてみましょう。
全身
冷え
末端
冷え
- からだのどこを触っても冷たい
- お風呂や暖房で温めても温まった感じがしない
- お腹が冷えやすく、調子を崩しやすい
- 体力がなく、疲れやすい
原因
エネルギー不足
からだを温める熱エネルギーが足りない状態
解消法
- 防寒
- 体力温存
- 温活食材をとる
- 皮膚や髪の乾燥が気になる
- 爪が薄い、割れやすい
- 貧血気味である
- お通じが滞りがちである
原因
血不足
からだに熱を運ぶ血液が足りない状態
解消法
- 肉や魚を食べる
- 保湿&温活を心がける
- 上半身や顔は寒くない
- 温めると気持ち悪くなることがある
- イライラ、ソワソワしやすい
- ゲップやオナラが出やすい
原因
めぐり不足
からだに熱がめぐらず滞っている状態
解消法
- 温活はほどほどに
- 運動やアロマでめぐりをよくする
- ストレス発散を心がける
冷えの原因は1つではなく、さまざまな要素の積み重ねです。お腹を冷やすものをよく食べていたり、運動不足による筋力の低下や血行不良も冷えにつながります。また、熱は血液によって全身に運ばれています。貧血気味の方は血液不足で手足まで熱が行き渡らず、末端が冷えやすい傾向に。さらにストレスもめぐりを悪くする要因の1つです。チェックリストで思い当たるものが1個以上ある方は食事や生活を見直しましょう。
- 冷たい飲み物、食べ物をよくとっている
- 甘いものをよく食べる
- 生野菜のサラダや刺身をよく食べる
- 肉をあまり食べない
- 寒い日でも薄着のことが多い
- 運動はほぼしない、仕事中は座りっぱなし
- ストレスが多い生活を送っている
「これは冷えに効く」と、なんとなくのイメージで温活をしても、人によってはかえって逆効果になってしまうことも…。
ここでは特に誤解されやすい冷え対策を紹介します。正しい情報を知り、自分に合った温活を選びましょう。
しょうがは温まるイメージが強いですが、大量に食べるのはNG。生のしょうがは発汗作用があるため、一瞬からだが温まったように感じますが、汗をかくことで熱を放散し、最終的には体温を下げてしまいます。しょうがを食べるときは、汗をかかない量(薬味程度)を心がけましょう。一方、漢方などに使われる乾燥しょうがはからだを芯から温める作用があるので全身冷えタイプにはおすすめ。ただし、こちらもとり過ぎに注意。血不足・めぐり不足タイプは、のぼせや肌荒れの原因になることもあります。
湯船に浸かってからだを温めるのはよいことですが、汗をかくほど入るのはNG。発汗により、逆に体温を下げてしまいます。お湯の温度は40度前後、時間は10分ほどを目安に、「温まったな」と感じたらすぐ出ましょう。特に全身冷えタイプの方は体力がないので、長風呂は疲れてしまいます。長時間浸かるよりも、保温効果のある入浴剤を使うのがおすすめ。湯冷めしないように脱衣所を温めておくのもよいでしょう。また、皮脂は熱を逃さないための膜なので、垢すりなど強い洗浄は避けること。肌が乾燥していると熱が逃げやすいため、お風呂上がりはしっかり保湿をすることも大切です。
靴下の重ね履きは、蒸れやすいのでおすすめしません。足は結構発汗しているので、汗がこもって体温を下げ、かえって冷えの原因に。靴下は1枚で、蒸れるたびに履き替えるのがよいでしょう。厚手のルームシューズも蒸れないように前があいているタイプを選ぶのが◎。さらに、末端冷えタイプや足がむくみやすい方は、靴下で締めつけると血管が圧迫されて血流が悪くなってしまうことも。足の冷えの改善には、足湯をしたり、ウォーキングや足首を回したりして、血流をよくすることが大切です。寝るときは靴下ではなくレッグウォーマーにして足先は出し、湯たんぽを活用しましょう。
冷えにくいからだをつくる、おすすめの温活を紹介します。防寒、食事、運動と手軽に続けられる3つのルール。
どれも特別なことではなく、健康的な生活を送る上で当たり前のことばかりなので、ぜひ習慣にしていきましょう。
おへそから下を温める
冷えはお腹(内臓)から全身に伝わります。使い捨てカイロをおへその上に貼る、腰に湯たんぽを当てる、膝掛けや腹巻きを使うなど、とにかく下半身は温めて。また、生理中は特に冷えやすくなっているため、しっかり防寒を。
肉、魚をよく食べる
筋力や血液が不足すると、からだに熱がめぐらず、冷えを招く原因に。肉や魚といったタンパク質は筋肉や血液などの素。タンパク質を摂取することで鉄の吸収率が高まり、血液の健康維持にもなり、冷えの解決につながります。
ウォーキングで適度な運動を
末端の冷えには運動で血行をよくすることも大切。ランニングやホットヨガなどの激しい運動ではなく、1駅分歩く、ウィンドウショッピングをするなど気軽なウォーキングで十分。寒い日は無理せず、ストレッチをするだけでもOK。
冷えにくいからだをつくるためには日頃の食事も大切です。薬膳の考え方では、冷たいもの、生もの、甘いもの、ビールなどのアルコールは、からだを冷やすので控えめに。冷えが気になる方は、薬膳的にからだを温めるといわれている食材を意識して取り入れましょう。ほうれん草や白菜、根菜類など冬の食材は、直接温める効果はないですが、余分な熱を取って潤いをもたらす役割などがあり、からだのバランスを整えてくれます。温め食材と冬が旬の食材はセットで食べるのがおすすめです。
ねぎ
昔から風邪対策に重宝されてきた食材。特にねぎの白い部分はからだを温める効果がある。味噌汁、鍋、炒め物などに。
鮭
胃腸を温め、血行をよくする食材。焼き鮭、煮込み、鍋やスープなどに。酒粕と組み合わせ、粕漬け、粕汁にすると温め効果がUP。
酒粕
酒は飲むよりも、酒蒸しや鍋に入れるなど、料理に使うと温め効果がある。肉や魚は粕漬けに、汁ものは粕汁にすると◎。
よもぎ
お灸の材料でもあり、めぐりをよくしてからだを温める効果が。よもぎ茶や、もち米と一緒にとれるよもぎもちがおすすめ。
もち米
胃を温めるといわれている食材。白米と一緒に炊いておこわにしたり、お雑煮などでおもちを積極的にどうぞ。
黒砂糖
ミネラル豊富で、薬膳的にはお腹を温める効果があるといわれている。ホットドリンクに入れるとコクがあり、おいしい。
ヒハツ
胡椒のような辛みを持つスパイスでめぐりをよくする効果が。角煮など味の濃い煮物や炒め物、チャイやホットミルクにひと振りして。
冷えには大きく分けて2タイプあり、状態は人それぞれ。頑張って温活をしても正しい知識が身についていないと、かえって逆効果になることも。誤解されやすいポイントを知り、自分に合った対策を。防寒やお風呂で外側から温めるだけではなく、適度な運動で血行をよくし、温め効果のある食材を積極的に食べて中から冷えにくいからだをつくりましょう。
瀬戸 佳子
(せと・よしこ)
先生
瀬戸 佳子(せと・よしこ)先生
国際中医薬膳師。登録販売者。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・青山にある「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で漢方相談や東洋医学に基づいた食養生のアドバイスを行う。雑誌やWEB、講演など幅広く活躍。著書に『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』、『季節の不調が必ずラク〜になる本』(ともに文化出版局)がある。
編集・ライティング:矢澤純子
イラスト:CHINATSU